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93.異常者

はい、どうぞー!

 


 アルエルは困っていた。ホタルに頼ろうと思っても出来ない。何故なら、今は被害を受けているのは、アルエルではなく、ホタル本人なのだから…………


「……………………」

「きゃははっ!! おにいちゃん~」

「えっとぉ……」


 ホタルの肩に乗っかかるエルメス、子供と遊んだ経験がないアルエルはどうしようとオロオロとするしか出来ない。

 今まで我慢していたホタルだったが…………ついに切れた。




「ダァァァァァーー!!」

「ウキャァッ!?」


 エルメスはホタルの肩から振り落とされようとしていたが、空中でクルリッと態勢を整えて着地したのだった。ホタルは強く振り落としたつもりだったが、アッサリと着地されて舌打ちを打ちたくなった。


「きゃあきゃあ、面白いー! もう一回!!」

「なんだよ!? 餌を一回与えただけで、懐くとかチョロすぎるだろ!! しかも、ウザすぎる!!」


 さっきのを遊びだと認識しているエルメスに愚痴を言いたくなるホタルだった。


 エルメスは目を覚ました直前は、知らない人がいることに戸惑いがあったが、すぐに動けなかった。ホタルはそんな戸惑いを無視して、口へ食べ物を突っ込ませていた。

 エルメスはいきなり口に食べ物を突っ込まれて驚いたが、美味しそうな匂いによく焼けた肉から流れ出る肉汁に空腹を抑えきれなかったのだ。

 まだ身体を上手く動かせないエルメスはホタルに口へ食べ物を運んで貰っていた。

 ホタルにしたら、口へ肉を突っ込むだけの仕事をこなしていただけで、優しくしてやった覚えはない。

 そして、夜を越したら…………




 エルメスはホタルに懐いており、既に自分の身体を操れるぐらいに回復していたのだ。

 そして、今に至るわけだ。

 1晩だけで、おにいちゃんと慕うぐらいになるのは、ホタルが言う通りにチョロすぎるだろう。


「ま、まぁまぁ。ホタル様、落ち着いて下さい。相手はまだ子供ですから…………」

「いや、あいつは間違いなく、アルエルよりも歳を喰っているはずだ。なのに、あの様子はなんだよ?」

「あ、それですが、夜中に気になることがあって、封印されていた樹木を調べてみたのです。そしたら…………、とんでもない発見をしたんです」

「む?」


 アルエルが発見したことに気になり、話を聞くことにした。迫ってくるエルメスを軽くあしらいながらだが。

 アルエルの話によると、あの樹木には封印とは別の術式が隠されていたのがわかったという。

 詳細に調べるのは無理だったが、一つだけわかるのは…………回帰という禁術が使われていたという。

 回帰とは、元に戻るや若返るなどの類似があり、それも仕組まれていたということは…………


 そこまで聞けば、ホタルにもわかる。




「成る程。封印と同時に回帰させて、不老不死のスキルを持つエルメスを殺そうとしたわけか…………いや、元からいなかったことにするが正しいな」


 回帰は元に戻すと言う意味があり、樹木に仕込まれていた術式は、エルメスの歳を若返らせて、最終的にはいなかったことにすることが出来ていたのだ。回帰は不老不死の能力を無意味にする効果的な一つでもある。

 もし、ホタルが封印を解かなかったら、いつかはエルメスは死んでいたのだろう。

 アルエルの話により、エルメスが8歳程度まで幼児退行されている理由がわかった。だが、わからないことがまだある。

 それは、ステータスに載っている強力なスキルや称号がまるまると残っている理由だ。ステータスの数字は下がっていると思われるのに、スキルは中級が多く、上級は2つも残っているのだから。


「それはわかりませんが、歳を若返らせるための回帰だからだと思います。身体が弱くなれば、ステータスも下がりますので」

「そうだよな。しかし、なんでエルメスがこんな称号を持っていたのか、わからんな。本人は忘れているというか、記憶が消滅しているしな」


 ホタルは既にエルメスに自分のことを話せるかと聞いてみたが、全く何もわかってなかった。自分の名前さえもだ。


「…………ふむ」

「おにーちゃん! 遊んでよー!」

「…………よし、試してみるか。わかった、遊んでやるよ」

「本当に! わーい!!」

「まぁ、俺達がいつもやっていることだがな」

「いつものことー?」


 アルエルはホタルが何をやらせようとしているのか理解したが、顔色を変えない。これからやることは、避けて通ることは出来ないのだから。




「あぁ、魔物を殺しに行くぞ」















 ホタルはすぐに相手にする魔物を見つけ、元気になったばかりのエルメスに戦わせようとする。


「2体いるから、1体は俺が見本として教えてやるよ」


 いつもより黒死点の発動を遅らせて、手に魔力を込めている様子を見せてやる。そして、魔力と煉気が合わさって、黒死点となっていき…………


「敵には容赦するな」


 黒死点が放たれて、猪の魔物であるボアドムを一瞬で包み込んで殺した。


「わかったな?」

「うん!」

「お前は解析を持っているから、自分のスキルは見えているはずだ。そのスキルのどれかを使って、こっちに向かってくる猪の魔物を殺してみろ」

「はーい」


 エルメスはボアドムが凶悪な顔で向かってくるのに、緊張した様子もなかった。エルメスは何もせずに、ボアドムがこっちへ触れる距離になるまで待っていた。

 そして、エルメスは何回も使ったことがあるというように、一瞬で『煉闘気』を発動していた。


「えい!」

「ブギィィィッ!?」


 ボアドムはあっさりと止められたことに驚いて、一瞬だけ止まっていた。その隙を見逃すこともなく、零距離から旋風魔法のレベル1である『大鎌鼬』でボアドムを真っ二つにして、殺したのだった。


「やったー!」


 エルメスはボアドムの血をモロに被っていたが、嬉しそうにホタルのとこまで駆け寄る姿があった。

 アルエルはその姿にゾクッとしたが、ホタルは口を歪めて、嬉しそうに笑っていた。

 初めは助けが必要かと思ったが、あっさりとスキルを扱って、ボアドムを圧倒して見せた。


「あはっ、回帰されても魂が闘いの経験を覚えていたか。それに、称号の通りに『異常者』だな。いいぞ、いいいぞ! 面白くなって来たじゃないか!!」


 あっさりと命を奪えることに、エルメスが罪悪感を全く持たなかったことから、異常者と呼ばれるのもわかる。前のエルメスがどれだけ異常者だったのか気になるが、無い物をねだっても仕方がない。

 ホタルは一緒に行動することを認め、血だらけになっているエルメスへ聞いてみた。




「ねぇ、エルメスはもっと強くなりたいか?」

「うん、強い敵を殺せたら楽しいんだよね? なら、強くなりたいよ!!」


 予想通りの答え。ホタルは確実にエルメスを仲間へ引き入れるために、取引を持ち出す。

 そう、あのスキルを使うのだーーーー




「だったら、契約を交わすか?」





 アルエルにも持ちかけたと同じような悪魔の契約をエルメスにも持ち出すのだった…………








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