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89.帝国では

皇女様が出ます。あと、あの人もーー!!

 


「お前達、聞いたな?」

「はっ、イングランドラゴンがこっちへ向かっているのことを」


 メルアから連絡を受け、ティリア皇女様に親衛隊、更に選ばれし者が集まっていた。

 このメンバーは、帝国の中でも最強であり、軍事の権力を持っているのがティリア皇女様なのだ。

 まだ12歳の少女を前に、皆が跪いて話を聞いていた。ただ1人だけは壁に寄り掛かっていたが。


「メルアからの連絡では、1日もしない内に帝国へ着くと。私達ならSSランクの魔物程度に遅れを取られることはないが、街の中で暴れるのは頂けないな」

「では、街の外で相手をすればよろしいでしょうか?」


 アークがそう応え、ティリア皇女様はそれに頷く。イングランドラゴンが着くのは半日後だと推測し、帝国の外で戦うことに決めた。問題は誰がやるかだ。


「親衛隊にはまだキツイだろうし、貴方達の誰かが行ってくれない?」

「私は研究途中なので、遠慮させて貰いますわ」

「俺は飛べる相手には勝てなくもないが、時間がかかるな」

「そうですね、この中なら…………」


 選ばれし者達が議論を始め、この中で歳を取った老人と言える人物がイングランドラゴンと戦うのに最適な人へ眼を移す。




「勇者のアルドさんが最適かと」




 アルドと呼ばれた者は、まだ14歳の少年だが、壁に寄り掛かけて強者の雰囲気を醸し出していた。10歳の頃よりも身体が出来上がって、腰には二本の名刀をぶら下げていた。


「ほぅ、アルドが最適か。行ってくれるか?」

「……はぁ、あいつに連絡しておかないのは面倒だが、行ってやるよ。くれる物をちゃんとくれるならな」

「くくっ、勇者らしくもないな。まぁいい、その我儘を押し通す程の実力を持っているお前だから許そう。だが、負けることだけは許さんぞ?」

「わかってんよ。俺は負けるつもりは全くねぇからな」


 アルドはそう言って、会議室のような場所から出て行く。これからイングランドラゴンの元に向かい、確実にやってくれるだろう。

 アルドの態度が気に入らないのか、アークは苦い顔をしていた。


「アーク、苦い顔をしているな。やはり、気が合わんか?」

「はい。ティリア様が認めているといえ、皆がいる前でその態度は頂けません。跪くぐらいはして欲しいものです」

「そうですな。全く、親の顔が見たいものだ」


 アークだけではなく、選ばれし者の中にもアルドのことが気に入らない者もいるようだ。

 ただ、ティリア皇女様だけは笑っていたが。


「気に入らないなら、あいつより実力を付けて見せつけてやればいい。私は強き者を望んでいるからな。ただ、あいつは勇者の力だけではなく、継承者としての実力も高いから今はやめた方が賢明だ」

「…………そうですね。でも、いつかは小僧を越えてやります」


 帝国は実力が高い者がのし上がることが出来る場所だ。偉くなりたいなら、強くなればいいだけ。

 もし、ティリアよりも強い者が現れたら、帝国の王へもなれるぐらいに、強者という者を尊重されているのだ。ただ、ティリア皇女様を超えるような者が今まで現れてはいないから、ティリアが座っている権力の椅子は難攻不落である。

 ティリア皇女様はずっと自分より強い者が現れるのを待っている。寿命が来ても、転生を繰り返すぐらいに強者という者を待っているのだ。


「くくっ、面白い。この世代は面白いぞ…………」


 窓からアルドが出てくる様子を見て、狂気なる笑みを浮かべるのだった…………






 ーーーーーーーーーーーーーーーー







 竜の退治を頼まれたアルドは、ある人に連絡を送っていた。マーキング代わりになっている物を贈っているので、いつでもある人に念話を送ることを可能にしていた。

 アルドが連絡をしようとしていたある人とはーーーー


 リムに連絡をしないと五月蝿いしな…………。

 えっと、あいつの念波は二番だったな。魔物を殺してくるから、帰りは遅くなるだけと言えばいいかーーーー


 連絡の相手はリムだった。今の2人は一緒に住んでいるのだ。

 いや、夫や妻としてではなく、後腐れもない2人が別々の部屋で暮らしてはお金の無駄だと思ったので、同棲しているだけだ。

 アルドとリムは共にお城で働いており、まだ卒業する歳になってないが、実力的には学園にいても時間の無駄だと言うことで、2人は同時に早期卒業してお城へ勤めることになった。入隊する時に、少しだけ相手方と揉めたが…………今は順調に働いているわけだ。


 話す内容を決めていたら、後ろから背筋が凍るような感覚を感じて、アルドは咄嗟に右手を伸ばしていた。




「むぎゅっ! あ、るちゃーん」


 アイアンクローで顔を掴んだと思ったら、相手はさっき考えていた本人ことのリムだった。10歳の頃よりも身長が伸びて、美人に育っているが…………胸だけは10歳の頃のと変わらなかった。


「なんだよ、リムか。いつも言っているだろ? 気配を消して、後ろから近付くなと……」

「むー、むーぷぱぁっ、どうしてわかるの……。気配も魔力も消したのに~」


 アイアンクローから抜け出したリムは頬を膨らませていた。アルドは丁度いいと思い、これからのことを話したら…………




「なら、私も行くー。仕事はさっき終わったばかりだし」

「…………脚を引っ張るなと言いたいが、リムなら無いか。いいや、さっさと準備を終わらせてこい」

「うん!!」


 リムは嬉しそうに返事を返して、部屋に一度帰ることに。その姿を見て、変わったなぁとじみじみと思うアルドであった。

 前は、会うなりに「けっこんをして!」とか言っていたが、今は一緒に住むようになってから、言わなくなったのだ。

 それが、ちょっぴりと寂しいアルドであったり、なかったり…………












成長したアルドとリムが出てきましたね!!


いつでも感想や評価を待っています!!

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