87.優勝→逃走!
久しぶりです。
最近は忙しくて、書く時間があまり取れず、すいませんでした。
では、続きをどうぞ!
トドメは他の人にされたが、結果的には大会の優勝は俺になるよな?
デリアードは死んで、俺は生き残ったし。
「実況の人~、大会の優勝は俺だよな?」
「え、えっと……、確かにさっきまではホタル選手だけ戦って、勝っていましたね。守護四天陣が倒したとしても、ホタル選手が優勝となります」
「よし、賞品を貰えれば、不戦勝でもええぞ。くれよ」
ホタルは名誉よりも賞品を望む。実況席の隣にいた大会の主催者はハッと気付いたように慌ただしく動く。実況にあった声のボリュームを上げる魔道具を手に取って、次の予定を話す。
「え、えっと、大会にハプニングがありましたが、優勝者が決まりましたので、これから賞品を渡したいと思います。しばらく準備をしますので、お待ち下ーーーー「それは少し待って貰いたい」え?」
主催者の言葉を遮ったのは、守護四天陣のリーダーだと思われるエルフの男性だった。守護四天陣とは、女王様を護る部隊であり、二つはある最強部隊の一つである。その一人が、主催者の言葉を遮ったのか?
「私は女王様の盾を務めている守護四天陣の1人、エスラドと申します。貴方がホタル選手ですね?」
「ああ、そうだが、それが?」
ホタルはわかっていた。何を言われるか、予測出来ていた。
「単刀直入に聞きますがーーーーーーーー貴方は人間ですか?」
その言葉にざわつく周りの人々。
ホタルはやっぱりなぁと思いつつ、どう誤魔化すか考えていた。
ホタルは別にエルフの国にいる人と敵対するために来ているわけでもないし、目の前の様な強者の貫禄がある相手とは今は戦いたいとは思わない。
「む? この俺が人間には見えないと? 何処から見ても何処でもいるような子供じゃないか」
周りから「そんな子供がごろごろと居てたまるか!?」とツッコミがあったが、ホタルは無視をする。
「周りもそう言っているが? 確かに見た目は子供の様だが…………使うスキルが異様過ぎる。【病苦】にするスキルを人間が使うのは今までは聞いた事がない。それに、戦いを見せて貰ったが、貴方自身の病苦耐性が高いように思える。それでも、異様ではないと言えるか?」
「異様ではないな。生まれつき、【病苦】を操ることに優れていた。昔からそんな人間はいなかったとしても、たまたま俺が1人目だっただけだろうな」
エスラドが言うように、ホタルが使う『黒死点』は人間が扱えるようなスキルではない。何せ、発動すると自分までも『黒死点』の効果を僅かながらも受けてしまうからだ。ホタルのように状態異常無効か高い病苦耐性がなければ、使うことが出来ないだろう。
エスラド達はホタルの言葉を信じてはいなかった。その証拠にエスラド以外の3人が少しずつとホタルを囲むように動いていた。
ホタルはそのことに気付いていたが、敢えて無視をした。
時間を稼ぐように、エスラドが質問を続ける。
「では、子供とは思えない身体能力はどうですか? 身体強化のスキルを使っているとしても、高過ぎると思いませんか? それに、先程の魔人から受けた攻撃を瞬時に回復させ、光魔法の迎撃がありました。そんな光魔法は見たこともないのですが?」
「鍛えたからだ。光魔法もオリジナルだからな」
ホタルも簡潔に答え、話している間に自分のMPとSPを偽造永久機関で回復させておく。そして、3人が定位置に着いたようで、脚を止めて合図を待っていた。
「……やっぱり、本当のことは口からは応えてくれませんね。最後に、私が鑑定をしますので、『隠蔽』を切って、ステータスを見せてください。今は名称のホタルしか見えませんが、隠蔽を切って頂ければ、魔人ではないとわかりますので」
魔人や魔物は人間、エルフ、獣人などの人族とは違い、ステータスに種族名が出ている。エスラドはそれでホタルの正体を見極めようとしているのだ。
その問いにホタルは…………
「は? ヤダよ」
「……はい?」
アッサリとした答えにエスラドは呆気に取られてしまった。エスラドはホタルが取ると予想していた通りだったが、魔物や魔人だから見せたくないという雰囲気ではない。なんといえば、友達に見せてと言われたがヤダよと断ったような感じ…………
「ステータスは自分らの情報。言い換えれば、命のような物と言っても間違いはない。なのに、それをアッサリと見せる馬鹿はいねぇだろ」
「え、いや。貴方は疑われているのですよ? だったら、自分のステータスを見せて疑いを解消させた方が良いのでは……?」
「馬鹿か。種族名がないのを証明出来ればいいが、隠蔽を解除したらスキルや称号も見えるんだろう? それを見せるのはナイと言ってんだよ。他の方法を考えやがれや」
「そんな無茶苦茶な……」
周りの人もそれに頷く。確かに、ステータスを開示をすることは余りないが、エスラドみたいな偉い人にこれだけ疑われては、ステータスを開示して疑いを解消させた方がいいだろう。しかし、周りから見れば、疑われている当のホタルは子供のように駄々っ子に断っているようにしか見えなかった。外見は子供だが…………
そして、痺れを切らした者が現れた。待機していた守護四天陣の1人が声を上げていた。小さな少女にしか見えないエルフだ。
「何をしているのよ! さっさと捕まえてから調べればいいでしょ!?」
「おぉう、堂々と誘拐の宣言をしている人がいるー!! 皆さんはどう思いますか!?」
「お前は黙ってろ! 誘拐じゃなくて、連行だ。守護四天陣の評判を落とすような事を言うんじゃねぇよ!?」
ホタルはふざけるように、周りによく聞こえる声で周りに守護四天陣が何をしようとしているか、教えてやった。これで、またざわつく人々。
「…………はぁ、仕方がありませんね。疑わしい者を逃がすには行かないので、さっさと捕まって下さい。後で、皆さんに誤解を説かなければならないのは頭が痛いですが……」
疑わしいだけで、無理矢理に捕まえるのは守護四天陣の評判を落としかねないが、まだ正体がわからないまま逃すのは今後に何があっては遅いので、無理矢理に捕まえることに決めた。
準備を終わらせた3人が構え、エスラドも右手をホタルに向けて、唱えた。
「「「「『緑鎖封陣』!!」」」」
緑色をした鎖がホタルへ絡みつき、守護四天陣がいる位置をなぞる形で囲むようにクリスタルの様な輝きを発する結界が現れる。
「ふむ、鎖で動きを封じた後に結界で完全に中へ閉じ込めるわけか」
「そうよ! さっさと連行させて貰うわーー「そう上手く行くかな?」何を…………なっ!?」
ホタルは特に何もしてないが、勝手に鎖が壊れて結界までも破壊された。守護四天陣の人達はホタルは何もしてなかったのに、『緑鎖封印』が壊れたことに驚きを隠せてなかった。
まさか、ホタルの仲間が外から何かしたのかと思ったが、守護四天陣以外に魔法やスキルを使った様子はなかった。なら、何故ーーーーと考えていたら、上空から三倍も大きくなった”火球”がいくつか降ってきた。
すぐに自分を守る結界を発動していたので、怪我を負った者はいない。
「一体……!?」
「よし、アルエル。逃げるぞ!」
「イエッサー!」
火球を降らしたのはアルエルで、そのアルエルは実況席がある場所で賞品を手にしていた。近くではイリーナがあわわと慌てる様子だったが、怪我一つもなかった。
アルエルは『太陽の首飾り』と『能力覚醒リング』を懐にいれ、出口へ向かう。
用が終わったホタルは守護四天陣を相手にせず、アルエルと合流して逃げ出した。
「な、追うぞ!!」
「に、逃がさないわよ!!」
守護四天陣はホタル達を追っていき、会場には観客だけが残されるのだった…………
逃げ出したホタル。
追う守護四天陣の人達。
どうなるのか?
続きをお楽しみに!




