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85.魔闘技会⑨

本日二話目!

 


「”ショックウェーブ”」



 デリアードが腕を振るだけで、音の衝撃が地面を割りながらホタルへ向かっていく。

 速いが、さっきの貫手程に早くはない。何故、この技を使うかわからなかったが、避けようと動くがーーーー


「グッ!?」


 脳を揺らされたような衝撃を受け、脚が止まってしまう。再度に動こうとしても、先にショックウェーブに当たってしまう。

 MPが勿体無いが、HPが減るよりは少ないと素早く判断して、『拒無』を使って消す。

 右手に触れた瞬間にショックウェーブ自体は消えたが、衝撃で飛び散る石畳の破片が当たる。3ダメージを受けたが、純回路での自己回復があるから問題はない。

 それよりも、脳を揺らされたような衝撃の正体がわからない。


「続けて行きますよ!」


 デリアードは『拒無』によって消されても動じない。ダート戦で一度は見たことがあるから知っているといえ、また同じ技を続けて使ってくるとは思わなかった。また消されて、無駄弾になるとは思わないのか?


 こいつ、MP消費が高いの知っているのか?

 いや、同じ能力を持っていなかったら、知りようが無いはず!!


 ホタルはショックウェーブを発動した後に、また脳を揺らされた感触を感じるが、我慢して横へ逃げる。

 デリアードは薄く笑みを浮かべながら、またショックウェーブを発動した。しかも、五回も腕を振り回して五発のショックウェーブが迫ってきた。それと同時に脳の揺れも強まった。




「クッ、面倒だな!!」




 黒死点を自分の周りに展開して、五発のショックウェーブを防いだ。頭の揺れも消えたが、耳鳴りのような感覚は残っていた。


「少しわかってきたぞ。見えるショックウェーブを囮に見えない音波が相手を苦しませるんだな!?」

「くくっ、わかったとしても防げないでしょう?」


 見えるショックウェーブは兎も角、見えない音波はショックウェーブを消さなければ、脳への攻撃が続くことになる。

 デリアードは音による攻撃を得意にしているのはわかるが、デリアードは自分の出す音にダメージを受けないのか?

 見るにはダメージを受けている様子はなかった。なら、音に対する耐性があるかと思い、すぐスキルポイントで取れないか試すが…………


 ち、ないか。なら、別の方法で防いでいるわけか?


 わからないことを考えても仕方がないので、またショックウェーブを出される前に黒死点で倒せばいい。

 黒死点をデリアードの逃げ道を塞ぐように包囲していく。


「私でも、流石に【病苦】になってしまったら回復する方法がありませんが…………」




 デリアードは地面に脚を叩きつけると、全方位へ音の衝撃を広がって黒死点を散らした。




「当たらなければ、問題はありませんよーーーーおや、包囲は囮でしたか」

「今度は硬いぜッ!」


 包囲は囮で、本命は上空にある大量の黒死点ナイフだ。さっきみたいな技では、壊れないぐらいに固めていたから傷一つぐらいは出来るだろうと期待していたが…………




「”破局竪琴”」




 デリアードの手に竪琴が現れ、弦を撫でるだけでーーーー全てのナイフが爆発した。一本も残らずに爆発してしまったのだ。これには驚かずにいられないホタルであった。


「音は見えない、速いがウリでしてね。さぁ、奏でてあげましょう」

「ッ!?」


 ホタルはデリアードの手が弦に触れる前から自分がいた場所から逃げ出していた。『真・空間認識』が働いて、ホタルがいた場所から赤く噴き出すような煙が見えたのだ。

 そして、さっきホタルがいた場所を爆発で埋め尽くされていた。


「おや、避けた?」


 さ、さっきの赤い煙はなんだ?

 今まで見たことがなかったんだが…………。


 何故、赤い煙が見えたのか、ホタルにはわからなかった。デリアードは不思議そうにホタルを見ていたが、一度だけの攻撃じゃわからないと思い、続けて弦に触れて奏でようとした。


「また!?」


 また赤い煙がホタルを包んでおり、そこから抜け出すとーーーー




「もしかして、貴方は音が見えている? …………いえ、さっきは音波が見えてなかった筈。偶然か、必然か……?」


 また見えない爆発から逃れて、流石にデリアードもおかしいと感じたようだ。さっきの音波は見えてなかったのに、今は見えているように音の爆発を避けていた。

 ホタルも何回か避けているうちに、少しずつわかってきた。


 今のは、見えない攻撃だったから、赤い煙が眼に映ったように感じるな?

 さっきの音波はHPにダメージを与えてなかったから、見えないままだったとか?

 わからんが、ダメージを受ける見えない攻撃が見えるようになるのは助かる!!


 相手ばかりに攻撃させては、勝ち筋が見えない。何かをして、勝ちに繋がる道を探さなければならない。

 再び、『万象』を使わない黒死点で攻めていく。これだけ散らばってしまえば、さっきみたいに全てを消されることは無いはず。そう信じて、細かく動かしていく。




「無駄ですよ」




 竪琴をひと撫ですると、黒死点の全てが爆発によって散らされてしまう。


「同じ技を出しても私にはーーーーッ!?」

「同じじゃねえぞ!!」


 デリアードからは見えない、ホタルの後ろに地面の穴が開いており、デリアードの足場から襲っていた。地面を『万象』で固めた黒死点で掘り進め、デリアードの意識外を攻めたのだ。

 それでも、危機を察知して跳んだため、当たったのは竪琴だけだった。

 朽ちてゆく竪琴を捨て、余裕の笑みを消すデリアード。




「…………ウザいですね。もういい、本気を出したらバレてしまうが、今になってはどうでもいいですねッ!?」




 バレるということは、デリアードが魔人であることを止めることだ。すぐに終わらせることが出来れば良かったが、思ったよりホタルがなかなかやられてくれないので、本気を出してさっさと賞品を奪って逃げた方が良いと考えたのだ。

 人間の姿だった道化師は、人間の姿を止めて、身体が浅黒くなり、コウモリのような羽を生やして顔もヤギみたいな形に変わっていった。

 その変形に、周りで見ていた観客も騒ぎ始めた。


『あ、悪魔族!? なんで、魔人がここに!?』


 イリーナの言葉に、騒いでいた観客からこの場を逃げ出す者が現れ始めた。




「クク、クハハッ!! 大会はもう終わりだ!! ”破界”」




 デリアードはそう言って、死を無かったことにする結界を破壊した。”破界”は、MPの半分を犠牲に、全ての結界を破壊することが出来る。

 デリアードはMPが半分に減ってもホタルを倒して、賞品を奪って逃げ出すぐらいは出来る自信があった。


「これで、死んだら終わりだ!」

「ふん、やってみろよ」


 ホタルはデリアードが本気になって、ステータスも強化されようが、逃げることはない。

 この前みたいな化け物程に差があるとは思えなかった。恐怖を感じるような危険を感じなかったからだ。

 デリアードは強いが、勝てる確率が少しでもあれば、戦うだけだ。


 本気になったデリアード相手に、黒死点を顕現して構えるのだった…………










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