78.魔闘技会③
はい、続きです!!
全ての予選が終わった頃、ホタルとアルエルは予選をーーーー
「予選通過出来ませんでした! すいません!!」
通過出来ていなかった。正確には、アルエルは予選通過出来なかった。
あの意味不明な槍使いに串刺しにされて、外へ放り出されてしまったのだ。
「あー、初見でアレを避けろと言われても無理だから仕方がないだろうな。気にするな」
「い、イエッサー……」
弱々しい返事を返すアルエル。ホタルは本心から言っているのだから、気にしなくてもいいのに、まだ気にしている様子だ。
ホタルもアルエルと敵が戦う所を見たが、槍を下へ突き刺した瞬間に参加者全員を串刺しにするとは思わなかった。
もし、初見であればホタルもやられていた可能性が高い。今なら、下へ突き刺す動作を見れば、避けられると思うが……
アレでも本気じゃないんだよな。
解析も名前しか見えなかったから、強いのはわかる。
多分、俺よりも…………。
さっき、『機人形』のスキルレベルが上がったし、当たったらやれるだけやってみるか。
ホタルは予選が終わったら、条件を達したと神のお言葉(笑)が聞こえてきたのだ。
新しい技は、使いようによっては強力なスキルと言えるだろう。
それに、この大会のために『隠蔽』のスキルを取ったし。ステータスは名前の部分を見られるだけでもヤバイので、アルエルと一緒に『隠蔽』を取っておいたのだ。『隠蔽』にはレベルが付いてなかったから、おそらく鑑定レベルでは見破れないと考える。
思ったけど、継承スキルのスキルレベルを上げるための条件がいつ経っても、謎なんだよな。
解析で調べようと思っても、神のお言葉(笑)で聞こえてくるだけでステータスのように、条件という文字さえも表示されないから、解析出来ないのだ。
あと、これは結構ショックだったんだけど…………俺は魔法を覚えられないーーーーというか、使えないかもしれない。
だって、スキルポイントが500もあるのにスキル表には◯◯魔法が全く見当たらなかったのだもん。
まさか、継承スキルがあるから必要ないと神がおっしゃってるのか?
一度でいいから、使ってみたかったのだが…………。
まぁ、隠蔽を取れただけでもマシだと納得するしかないか。
「整備が終わりました。いよいよ、トーナメントが始まりますので、進出決定した参加者は集まって下さい!!」
イリーナが音量を高める魔道具で、闘技場の整備が終わったと連絡し、トーナメントに参加する者を集める。
ホタルも整備された闘技場へ向かっていく。数十分でこれだけの傷跡を整備出来たなーと思っていたら、魔法があったじゃないかと気付く。
また魔法かよと毒吐きながら、闘技場へ上がっていく…………
「ではー、真ん中にある水晶玉は見えますよね? それに、一人ずつ触ってください! それで、トーナメントの組み合わせが決まります!!」
イリーナが元気良く、これからの順序を説明している。この台に乗せている水晶玉に手を数秒触れるだけでいいが…………
「あの、俺の手が届かないんだけど?」
静寂になる。騒いでいた観客までも「…………」と黙ってしまう程にだ。たまにプッとツボに入った者もいた。
イリーナはあわわと何か言おうとしていたが、声が出ていなかった。
俺はとんでも無い事を言ったのか?
何故、黙るんだよ……。
ホタルも困っていた。何故、そんな空気になってしまったのかは、理解してなかった。
原因はさっきやった予選にあるのだが、当の本人はじー(何か言えよ)と実況をしているイリーナを睨むだけで気付いてない。
予選で見たこともないスキルを使って、1人で全滅させた子供から睨まれて、イリーナはあわわ……と慌てるしか出来ていなかった。
そんな空気の中で、トーナメントに参加する8人の中から声を上げる者が現れた。
「なぁ、俺が抱えれば、届くよな。ホタル、いいか?」
「ん、ダートじゃないか。お前も参加していたのか?」
「こっちこそ、驚いたぞ。魔闘技会に参加していて、トーナメント進出するとはな」
ホタルはアルエルの予選しか見てなかったから、トーナメント進出が決まった者は誰なのかまで知らなかったのだ。
「そうだな、これでは届かないから、頼むよ」
「おう、任されたぜ」
抱えて貰うことで、ホタルは無事に水晶玉へ数秒間は触れることが出来た。それに続いて、他の参加者も触れていく。
「…………よしーー! ちょっとしたハプニングがあったけど、無事に終わって良かったねーーーーゴメンゴメン、謝るから睨まないでよ……」
「いいから進めろよ。病苦をブチ込むぞ?」
「ゴメンなさい!! さっさと進めるわよぉぉぉぉぉ!!」
イリーナは脅されて、涙目になりながらトーナメントの組み合わせが発表された。
1回戦《ルデアvsダート》
2回戦《ホタルvsドォム》
3回戦《アレクvsアディーネ》
4回戦《アレンvsザルド》
ん? 周りを見てみたが、ギルドで喧嘩を売って来た男がいないな?
まぁ、いいか。そんな戦闘能力が200しかない雑魚は。
ホタルが誰かを探しているように、ちょろちょろと周りを見ていたことに気になったのか、ダートが話し掛けてきた。
「誰か探しているのか?」
「ん、たいしたことはないが、ギルドで喧嘩を売っていた馬鹿がいたんだ。ハゲで斧を持っていたおっさんだったな」
「ハゲで斧を…………あ、予選で倒した記憶があるような…………あまり覚えていなくてすまないな」
「それだけ聞ければいいや。また会う時があれば、ざまぁと笑ってやるからよ」
「容赦ないのな……」
話を切り上げ、ホタルはドォムと戦うことになった。ドォムはアルエルを倒した、あの槍使いだ。
ステータスもあんまり見えなかったから、強いのはわかる。
ホタルが勝つには、ステータスでは足りない。だから、どう勝つか考えなければならない。
んー、やっぱり疾風を当てることが勝機に繋がるとしか思いつかん。
まぁ、なんとかなるだろうな。
ホタルはすぐ考えるのやめた。戦いになってから、やれることは全てをやる。それだけ決めて、闘技場から降りたのだった…………
次回からは、トーナメントに入ります!!
ホタルがどう魅せてくれるか、お楽しみに!!




