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73.ディア・シーラ

はい、どうぞー。

エルフの街だよー。

 


 駐屯地であんな事があった後、ホタル達はセリアとエリーの案内をもとに、半日を掛けてディア・シーラと呼ばれるエルフの国に着くことが出来た。

 ディア・シーラはエルフの領地で中心に構えていることから、エルフの領地は帝国の領地程に広くはないのがわかる。何せ、帝国から国境まで一週間に近い時間が掛かったのだから。


「へぇ、遠くからアレが見えていたが、近くまで来ると圧巻だな」

「はい。大きな樹に滝が落ちてきていますね。しかし、どう見てもあの滝は樹から流れていますね?」

「はい。大昔のことですが、ここは水不足によって枯れ木ばかりの森でした。先人はその森を再生しようと、中心にあったこのエルディ樹に離れた場所から地下水を引っ張って、人工水路を造ったと聞いています」

「へぇ、そんなことが出来るとはな」


 想像していたのと違い、街はとても広くて、中心には滝が流れる樹が初めて見るホタル達を圧倒していた。


「ほぉー、滝の下は透明な水で底まで見えているーーーーん、地下に窓が見えるな……?」


 ホタル達は既にエルディ樹の元に立っている。柵の向こうは透明な水が溜まっており、それらが街全体に行き渡るように沢山の川道が出来ている。


「あの樹は最上階が女王様の住まう場所であります。更に、地下は宿を営んでおり、見えている窓は食堂から水の中が観れるようになっていますね」

「中に入れるのか!? 」


 巨大な樹木の中が建物のような造りになっている。それはロマンだ。

 そうホタルはそう思うのだった。


「俺達でも予約なしで泊まれるかな?」

「え、そこの宿は他の宿よりも数倍に高いですよ? 予約なしで泊まれますが……」

「む、高いのか? 幾らぐらいかわかるか?」

「確か、3000セルだったかと」


 金額を言われても、わからないホタルはアルエルに念話で聞いた。


『おい、普通の宿だったら幾らだ?』

「3000セルですか。普通の宿は500セルぐらいなので、6倍はしますね」

「成る程。その分、サービスが充実でもしてんかな」


 早速、アルエルに手持ちは幾らあるか確認させる。一度はそんな宿に泊まってみたいものだ。


『アルエル、今は幾らある?』

「うーん、少し足りないから稼がないと駄目ですね……」

「ふむ……、ここにギルドはあるか? アルエルを冒険者にするぞ」

「え、ギルドはありますが…………、貴方は?」

「アホか、俺はまだ8歳(嘘)だ。登録は無理だと聞いたことがあるんだが?」

「あ、そ、そうでしたね……………………8歳に負けた私達は何だろう」


 言われて気付いたが、ホタルはまだ子供で冒険者になれる条件を達していない。冒険者は15歳からだと決まっており、ホタルが15歳だと嘘をついても、ギルドの人は信じてくれないだろう。

 だから、15歳であるアルエルにギルドに登録させて、依頼を受けられるようにして、一緒に依頼をこなしてやればいい。

 8歳に負けたと今更に気付いて、セリアは落ち込む。エリーは苦笑していたので、戦闘に負けたことは気にしてないようだ。

 ちなみに、セリーは18歳でエリーは17歳。一つの歳違いだが、前から親友で警備でタッグを組むことが多い。


「あははっ、セリアも落ち込まないで。ギルドまで案内をしたら、別れてもいいかな?」

「おう。宿とギルドの場所だけ、わかれば充分だ……あ、近い内にここで楽しめるようなイベントとかないか? たまたま、大きなイベントがあるとかならいいが、そう都合良いことはないよな……」

「あ、明日でしたら、ありますよ」




 あんのかよ!?




 まさか、都合良く、明日にやることに驚いたが、それを詳しく聞くことに。

 明日の昼から魔闘技会があると言う。制限はなく、誰でも参加できると。

 運が良ければ、危険度Sの魔物を単独討伐する者と戦えるかもしれないと。

 戦い場所となる闘技場は結界を張っており、結界の中で死んだら、死を無かったことにして、外へ出される効果を持っているらしい。なので、制限なしで強き者を募集して、祭りのようなイベントとなっている。

 受付は明日の午前中にやるようで、今から急がなくて良いのは助かる。すぐに金を稼がないと、エルディ樹に泊まれないのだから。


「案内をありがとうよ」

「この街は初めてだったので、案内は助かりました」

「い、いいのよ。もうソフリャ森林に入らないでね」

「魔闘技会に出るなら、頑張ってねー」


 ここでセリア、エリーと別れることに。






「さて、ギルドに行って、サッサと登録して来いよ。俺も一緒に入ったら、確実に面倒なことになりそうだ。あ、依頼も忘れるなよ」

「はい、すぐに終わる討伐系の依頼で良いですよね?」

「そうだな。夜になる前に帰れるなら獲物は任せる」


 ホタルはギルドの中に入らない。入ったら、絡まれる可能性が高そうだと読んだから、アルエルだけを行かせたのだ。


「んー、ここも精霊がいるんだな……」


 街の中にも精霊がふわふわと飛んでいて、緑色に光っているのが見えた。おそらく、風属性の精霊だろうなーとギルドの入り口でボーッとしていたら、知らない人に声を掛けられた。






「もしかして、迷子かな?」

「多分、そうじゃない? 子供が1人だもの」

「ねぇ、僕? お母さんは?」


 三人組で、剣士のスタイルをした優しそうな男性と魔術師スタイルをしたエルフで童顔の女性と双剣を背に抱えた女性が、心配心から声を掛けていた。


「お構いなく。相棒がギルドにいるので」

「そうだったんだ? すまないね、1人でボーッとしていたから、迷子だと思って」

「ゴメンね。僕? ここで待っていないで一緒に入った方が良かったんじゃない?」


 双剣を背に抱えた女性はよしよしとホタルの頭を撫でながら、話をしていた。頭を撫でるぐらいなら何でもないので、子供らしく大人しく撫でられているのだった。


「あー、8歳の自分が入ったら面倒なことに巻き込まれそうなので、ここで大人しくしていた方がマシかなと思いまして」

「言葉遣いが大人っぽい……」


 思ったよりシッカリとしていて、男性は心配は無用だったかと苦笑していた。


「俺はダート。俺達はこれから依頼に行くから、また会えるといいな?」

「私は、リーデと言うわね!」

「……メルデ。またね」

「俺はホタルです。また会えるのを楽しみにしています」


 自己紹介だけをして、三人組の冒険者は手を振って、門がある方向へ向かっていった…………









「お待たせました。声が聞こえていましたが、友達が出来たのですね?」

「友達なのかな? 自己紹介をしただけだから、知り合い程度だと思っているが……」


 アルエルはアクセサリーみたいな耳で、こっちの声は聞こえていたようだ。ギルドの中で何もなかったか聞いてみたら…………


「下心でパーティを組もうと言ってくるむさい男達がいましたが、無視をしました」

「無視をしたんかー。なら、事が起こるのは森に向かった後かな?」


 ホタルはテンプレ通りに考えれば、森に向かった後に起こりそうだなと思うのだった…………








何かが起きる予感。

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