66.ピンチは続く
本日二話目です!
大量の刀がダンジョン辺りに向けられ、巨大な刃が指定された箇所を突き刺して、抉り、全てを更地にするーーーー
はずだった。
「……え、アレだけの巨大な刀が墜ちたのに、揺れもない?」
「は、はい。音も何も聞こえませんでしたね。距離があっても、あれだけの攻撃が何も反応を起こさないのはおかしいですよね……?」
ダロムとエムテムの言う通りに、あれだけの攻撃が何も揺れも音も届かずに終わるとは思えなかった。
そう、普通なら10キロ以上も距離があっても、少しは揺れるぐらいの反応があったはずだ。
それが、何もない。と言うことは…………
「………まさか、破れた? 全ての刀が破壊された!?」
「え、嘘!?」
「刀から伝わった。全ての刀が壊れて、地面に一本も届かなかったと……おっと」
「ティリア皇女様!?」
脚をふらつかせたティリアは刀を支えにして、なんとかバランスを取る。魔力と煉気を一気に使いすぎたからだ。
「大丈夫よ。しかし、あそこにいる継承者は何者なのよ? 継承者になったばかりなら、あの技を完璧に破ることは出来ないはずよ」
「どうやったか、私にもわかりませんが……、子供はホタルと名乗っていました」
「ホタルか、…………ふ、ふふっ、ふははははは!!」
「ティリアさん?」
いきなり笑い出して、エムテム達は困ったような表情を浮かべる。沢山笑ったからなのか、スッキリしたような表情に変わっていた。
「久々に面白くなった。今から向かっても、もういないだろうな。なら、直接会える日を楽しみにして置くのがいいだろうな」
まだ姿を知らないティリアだが、継承者は結びつきが強いと聞いている。なら、今に会えなくても、いつか何処かで出会うだろう。
「帝国に帰るぞ」
親衛隊はティリア皇女様の指示を無視することは許されていないので、頭を下げて了承する。そして、ティリア達は帝国へ帰っていくのだった…………
ーーーーーーーーーーーーーーーー
巨大な刀を向けられたホタル達の方では…………
…………何を考えてんの? あんな技を繰り出した化け物は!?
ここら辺を更地にするつもりだったのかよ!?
馬鹿じゃない!? 馬鹿だよな!? ああぁぁぁ、馬鹿だろぉぉぉーーーー!?
当のホタルは、独り言を叫び散らしていたのだった。頭の中で。
隣にいるアルエルは腰を抜かしたままだ。
「死ぬかと思いました。走馬灯が見えたような気が…………」
アルエルもアレだけの技を向けられては、一瞬だけ生を諦めてしまうのも仕方がないだろう。
だが、2人はまだ生きている。しかし、どうやってあの”修羅・毘沙門”を破ったのか?
本当に馬鹿じゃねえのか!?
もし、この右手がなかったら終わっていたんだぞ!?
その言葉から予想出来るだろう。
ホタルが”修羅・毘沙門”を破ったのだ。新たに手に入れた継承スキル、『大天使の右手』がなければ、ホタル達は何も出来ずに死んでいたのは間違いない。
刀の群れが現れた瞬間、ホタルは無意識というか、反射的に右手を突き出していた。
そして、『拒無』を発動したのだ。MPを150も消費する代わりに、魔力と煉気の攻撃を全て無効化する。
そう、全てをだ。
ホタルの右手に当たったのは、一番近かった刀だった。それに触れた瞬間に、触れた刀が先に破壊される。それで終わらず、連鎖するように他の刀も地面へ突き刺さる前に消え去ったのだ。
そして、ホタル達は生き残ったのだった。追撃の気配もないし、取り敢えず、安全を獲得出来たと思ってもいいだろう……………………と考えていたが、今度は山の方から咆哮が聞こえた。
その咆哮に、ホタル達は顔を青ざめていた。あの山にいる魔物のことを知っているのだから。
山を登る際に、避けて行こうと考えていたあの魔物だ…………
グギャォォォォォォォォォォ!!
エルフの領地へ繋がっており、国境もないエレベア山。そこから黒い物が飛び立つ。4枚の蒼い翼を持ち、体長が10メートル以上もあるドラゴン。
「絶体絶命だな……」
「そうですねぇ」
現れたのは、危険度SSのドラゴン。
イングランドラゴン。
ホタル達は2度目の危険に陥ってしまうのだった…………
続けての危機。
ホタル達は乗り越えられるのか!?




