65.怒りの刃
間違えて、別の小説に投稿していました。
少し時間がズレてしまいましたが、続きをどうぞ!
今回はティリア側の話になります!
アークが転移をする少し時間を遡る。
ティリアは学園で起きた事件のことで聴き取りを行っていた。対象は事件が起きた時、犯人であるアルエルと会話をしていた二人の教師である。そう、ジュリエとエルディムである。
話の内容はメニアが報告したのと同じで、アルエル・ゼリアが学園を襲い、サイバー系の魔物がアルエルを連れ去ったと。
少しだけだが、戦ったことからアルエルは魔法が使えるようになり、威力も学生にしては高かったと。
学園の四分の一も灰化しており、二つの魔法だけでここまでやられたのは、高い魔力を持っていると読んだ。
ジュリエがアルエルの胸を貫いたといえ、二人はまだ生きていると予感をしていると。
ここまで、話を聞いたティリアは深い溜息を吐いていた。
「はぁっ、目的はわかりきっているわね。ヘラの妹と言う理由だけで他の人から敬遠され、学園に至っては学生の虐めがあったとか…………」
アルエルの親は国に処刑され、その後は碌でもない生活を強いられていたのだから、復讐の念が湧き上がっても仕方がないと思う。
ティリアはヘラの妹が学園に通っているのは知っていたが、復讐することはないと思っていたから放っていた。何せ、あの時のアルエルは魔法が使えず、術式を構成しようとしても途中で暴走する程に才能はなかった。だから、復讐するには力が無いのだから放っても問題はないと考えていた、考えてしまった。
「放っていたツケが今に至るとはね……」
「い、いえ! ティリア皇女様のせいでは……」
「いいえ、放っていた私達。国民を危険に晒したのは、帝国の纏め役である皇族の責任よ」
子供だからって、生かしておくべきではなかったのだ。犯罪者の妹も犯罪者か。
「協力をありがとうございました」
ティリア本人が直接に話を聞き、わかったことはアルエルの復讐心がとても強く、魔物と組む程に堕ちてしまったこと。
「何かわかりましたか?」
応接室で教師から話を聞いている間、アークは廊下で待機していた。
「アークか。何処に逃走したかはサッパリだわ」
「そうですか。では、これからどうしますか?」
「そうねーーーーッ!?」
ティリアが何かに当てられたような反応を起こしていた。アークは最近に、ティリアがそんな反応を起こすことを一度だけ見たことがある。
「もしかして、継承者が?」
「そうみたいね……。でも、短時間に続けて継承者が…………まさか!?」
ティリアは思い出した。新しいダンジョンが生まれた場所の近くで逃した魔物のことを。
魔物の気配がして攻撃をしたが避けられたあの時を。
もし、あれがアルエルを連れ去ったサイバー系の魔物だとしたら?
「今から馬車の手配を! それから、アイツらも呼び戻しなさい。至急に!!」
「はっ!」
アークは理由を聞かずに、ティリア皇女様の言う事に従う。ティリアの考えが間違っているかもしれないが、もしもの可能性は捨て切れなかった。だから、ティリア達はもう一回、あのダンジョンへ向かうことにーーーー
準備に2日間を掛け、ティリアと親衛隊は馬車に乗り込んでいた。
「アークは転移で先に行って、偵察してきなさい。もし、ヘラの妹がいたらアークだけでやれるか判断しなさい。継承者になったとしても、まだ成り立てだからアークでも勝てる可能性はあるわ。もし、勝てないと判断したらすぐに戻ってきなさい」
「了解しました」
転移を使えるアークだけが先行し、偵察することに。ティリアも一緒に行きたかったが、アークの力では自分自身を転移するだけで限界なので、大人しく馬車で向かう。
「アークさんだけで大丈夫でしょうか?」
「ん、あぁ。アークは空間魔術師だが、他の属性魔術も使えるから強いぞ」
エムテムがダロムに質問をしていた。エムテムは親衛隊に入ってから、まだ1ヶ月しか経っておらず、一緒に戦ったこともないからよく知らないのも仕方がない。
「アイツに身代わりの棒を幾つか持たせたから、無傷で報告してくるだろうな」
「身代わりの棒ですか。ダロムさんは高級の魔道具をホイホイと渡せますね?」
「いや、お代はキッチリと貰っているぜ」
「それでは、持たせたよりも押し売りではないですか!?」
ダロムは笑って誤魔化すだけで、エムテムの返事を返さない。
そのやり取りに呆れるティリアだったが、ダンジョンはどうなったのか気になるばかりだった。帝国ではない者にダンジョンをクリアされてしまったとなれば、後が面倒なのだ。
「アークが上手くやれれば、上出来なんだけどね…………また盗賊なの?」
「いえ! ち、違います!!」
急に馬車が止まったことから、また盗賊が現れたと思っていた。だが、御者の言葉で盗賊ではないと。
なら、なんなのかと聞こうと思った所にーー
「アーク様が道で倒れてーーーー」
「なんだと!?」
ティリアは御者の言葉を全て聞く前に、外へ飛び出していた。確かに、馬車の20メートル先にアークが倒れている姿があった。
「く! エムテム!!」
「は、はい!」
エムテムが素早く、アークの側に駆け寄って回復魔法を掛ける。
「”光癒”!!」
エムテムは診断をして、酷い火傷に腹の打撲があることがわかったが、命に関わる程ではないとわかり、HP回復よりも火傷をなんとかしようとしたのだ。火傷は状態異常ではないが、長い時間も放っておけば、火傷を負った部分が死んでいくため、状態異常よりは酷いといってもいい。
エムテムが構成した術式は、細胞の働きを活性させて自己治癒を高める効果がある。
「うぅっ……」
「凄いな、目に見える早さで火傷が治っていくぞ。傷を回復するとこは何回か見たことがあるが、火傷や凍傷などは状態異常じゃないから、HPを回復させたり状態異常を消す魔法は効かないしな」
後ろにいたダロムが関心するように火傷が治っていくのを見ていた。
「エムテムは、回復能力を高める上級スキルを持っているから、このようにすぐ回復させることが出来るの」
「へぇー、回復能力を高めるスキルは少ないからな」
今までわかっている中で、回復能力を高めるスキルは3つしかわかっていない。
回復には3種類の効果がある。一般的なのはHPを回復させる魔術やスキル。状態異常を治すのもあり、今みたいにエムテムが使っている自己治癒を高める効果で3種類となる。
対象に違った回復を施しても、効果は現れない。例えば、状態異常にHP回復の魔術を使うとか……
「うぐ、ティリア皇女様……?」
「あぁ、いるぞ」
意識を取り戻し、まだ回復仕切ってない身体でエムテムの手を借りて、なんとか座り込んだ。偵察をした結果、何があったのかを報告のために。
「ティリア皇女様が予想していた通りに、継承者がいました。継承者特有の魔力を感じました」
「やはり、ヘラの妹が……」
「いえ、継承者はアルエルと一緒にいた子供でした」
「は?」
アルエルが継承者になったと思ったが、別の人だったことにどういうことかわからなくなる。
「待てよ、サイバー系の魔物はいたのか? その子供は人間なのか?」
「いえ、そんな魔物はいませんでした。継承者の子供は私達と変わらない人間にしか見えませんでした」
「む、また謎が増えたな……」
ティリアは少し考え込むが、情報が少なすぎる。ただ、間違い無いのは子供が継承者であること。なら、ダンジョンはもう攻略されたと考えていいだろう。
このままダンジョンの方へ向かっても、既に何処かへ行ったのが予測出来る。だが、仲間を傷付けられて、引き下がるのも気に食わない。
「まぁ、いい。継承者達はまだダンジョン辺りにいるでしょうね?」
「おそらくは……」
アークの返事を聞き、ティリアは刀を取り出す。皆はまた”遠斬”を飛ばすかと思ったがーーーー
「10キロ以上もある場所へ”遠斬”を飛ばすのは不可能よ。これからやることは見れば、わかるわ……」
ティリアはあるだけの魔力と煉気を刀に注ぐ。これだけの魔力と煉気を何に使うのか?
それは、すぐにわかることになるーーーー
「”修羅・毘沙門”!!」
一瞬にして、ダンジョンがある箇所に巨大なる刀の群れが現れた。
ティリア達がいる場所からでもその姿が見えた。それだけに巨大で大量の刀が現れたら、誰かも驚愕するだろう。現に、初めて見たエムテム、アーク、ダロムは口をポカーンとしていた。
だが、刀の群れが宙にいる時間は短い。すぐに刀の群れは、ダンジョンがあった場所へ墜ちて行ったのだったーーーー
どうでしたか?
大技をダンジョン辺りに向けられ、ホタル達は生き残れるのか!?
次回をお楽しみに!




