59.氷獄人エレタルア
本日二話目!
戦わないと決めていたが、それは面と面を合わさなければのことだ。
だが、現在はエレタルアが襲い掛かっており、4階層は地面以外がほぼ氷で出来ているので、全域へ警戒をしなければならない。
ひょんなことから戦うことになったが、ホタルは高レベル相手に勝算がないわけでもない。
『氷から切り離すか、動きを止めれば上出来だ。出来るか?』
「イエッサー、任せてください!」
動きを止めるのはアルエルの役目だ。土魔法は様々なサポートをする魔法が多く、中には拘束用の魔法もある。まず、火魔法で牽制するアルエル。
「”火炎獅子”!」
炎で出来た獅子が、2体現れて壁へ突進をした。氷を溶かしてしまえば、エレタルアの移動範囲が減ると思ってのことだったが、壁から大きな氷の手が現れて、獅子を掴んで潰された。
天井からエレタルアが生えていて、クスクスと笑っていた。
『ヨワイヨワイ』
「くっ!」
氷は火に弱い。だが、エレタルアの魔力がアルエルに勝っていたため、氷でも炎の獅子を潰せたのだ。もし、エレタルアの方が弱かったら、掴んだ瞬間に溶かされていただろう。
悔しくも思いながら、鎌鼬でエレタルアの首を落とそうとするが、先に氷の中へ逃げられてしまう。
別の場所から現れ、沢山の氷の槍を作成して2人の方へ向かう。
「”土壁”!」
盾となる土の壁が2人の姿を隠す。1枚だけでは、防げないのはわかっているので3枚の壁を盛り上げるように作り出した。その分、MPを沢山使うが、仕方がないだろう。
『昇華』で強化された火炎獅子が氷にやられたのだから、エレタルアの魔力はアルエルの数倍はあると考えている。
その考えは間違っていなかったようで、1枚、2枚目を貫いて、3枚目で止まったのだから。
『あのレベルは伊達じゃないな』
ホタルも隙が出来るまで見ているだけではない。攻撃の主体はアルエルに任せているが、ホタルは何もしないわけでもなかった。
疾風でエレタルアがいる場所だけではなく、壁にも狙っていた。また氷の中へ逃げられても、次に出てきた時に当てられるようにと考えのことでだ。
『アマイアマイ!』
エレタルアが息を吸う動作を見せたので、ホタルの危険察知が鳴り響いた。
『ッ!! 壁だぁぁぁ!!』
「”土壁”!」
咄嗟に指示を出し、アルエルはさっきより数が多い5枚の土壁を顕現した。
兵士やフロストオークを凍らせた冷たい風が吹かれて、疾風と土壁を凍らせていた。
『クスクス、ツギハナニをミセテーーーーエッ?』
凍らせた後、土壁を氷の槍で破壊したら、後ろ向きに逃げている二人の姿が見えたのだ。
『二、ニガサナーーアババッ!?』
エレタルアが手を伸ばした瞬間を狙って、ホタルは電磁盾を発動していた。手に触れたエレタルアは麻痺っていた。
そのチャンスにーーーー
『一撃必殺を持っていて、氷の中へ逃げられる敵を相手にしていられるか!! 一気に階段まで逃げるぞ!!』
「イエッサー!!」
アルエルもホタルの指示に賛成のようだ。火魔法を氷で勝つような相手には相手出来ない。
そろそろ階段へ着く頃ーーーー
『チッ! もう麻痺が解けたのか!?』
『イカセナイー!!』
エレタルアは氷の中へ潜らずに、上半身を出したまま、氷上を滑るように移動していた。
何故、潜って追わないのか?
『コオレコオレ!!』
今までの最大と言えるぐらいの氷の息吹がホタル達を襲う。たった5枚だけの土壁では防げないと理解したアルエルは、その2倍の数を顕現した。
だが、それは完全に止められなかった。1枚ずつ凍って割れていき、ついに10枚目まで届きようとしていた。
『飛び込めぇぇぇ!!』
2人は氷漬けにならず、地が剥き出しになっている階段へ飛び込むことが出来た。そのまま、逃げ続けようとしたが、エレタルアが階段前で止まった。
『ニゲラレター!!』
このまま、階段で襲われたらちょっとヤバいかなーと思っていたが、エレタルアは階段に近づけないようだ。正確に言えば、階段から1メートル内には入れないような状態だった。
ホタルは確実に安全を勝ち取るために、エレタルアは無視して、最下層へ降りていくのだった。
『助かったな。何故、追ってこれないかわからんが』
「もしかしたら、ダンジョンにいる魔物は行動出来る場所が決まっているのでは?」
『いや、そんなことはないだろ。前のダンジョンでは化け物が4階層から最下層へ降りてきたの見たことがあるし…………あ』
ホタルは何かに気付いた。今まで気にしていなかったが、階段は質素な作りになっており、階層のように氷が張られてなかった。
つまり、あのエレタルアは…………
『氷が無かったら行動出来ないのか?』
「成る程……。限定された場所で生きる魔物ですね」
そう、エレタルアは氷が無ければ生きていけない魔物である。だが、その分だけ強い実力を持った魔物であり、珍しい魔物なのだ。
『いや、今はこの最下層をクリアすることに集中するぞ!』
「ようやくですね……」
『よし、早速、封印の扉をーーーーは?』
最下層も氷の洞窟みたいな作りになっており、幻想的な場所だった。
それはいい。
ホタルがアホっぽく口を空いて、眼が向けられる場所があった。
ドンっと構えるような大きな扉があったのだった…………




