43.特訓
本日二話目!
学園側の???と???
「えーと、向こうに人影が見えたような気がしたのですが?」
一人の教師が窓から山に眼を向けながら、言葉を放つ。それに対応するのは、別の教師だ。
「お前の眼は異常だ。向こうって、アルカド山のことか? ここから何キロっての距離があるの知っているよな? あ、眼より頭が異常だったんだな」
「仮にも私は教師をやっていますが? 眼とか頭に異常と言われても困ります」
「アルカド山に人影があると言われても、困るのはこっちだ。アホんだら」
アルカド山を見ていた爽やかな雰囲気を持った優男である教師と頭に大きなリボンを結んでおり、鋭い瞳を持った少女……もとい、教師が話していた。
二人共、帝国の魔法都市学園に滞在する教師であり、高等な魔術師でもある。
「さらに、眼が合ったような気がしたんですが……」
「いよいよ、壊れ始めたか。休養申請をして、二度と戻ってくるな」
「酷い言いようですね。ただ、眼が合ったと言っただけなのに」
少女みたいな教師の言葉に苦笑して、もう一回山の方に向けるが、さっきまであった人影がなくなっていた。
アルカド山とは、初心者が自分のレベル上げに丁度いい狩場になっているが、たまにベアーズみたいな危険度Cの魔物が、たまに出てくることがあるから注意が必要だ。
さっきの人影は冒険者だったかなと考えていた時。
「ボーッとしてないで、聞きやがれ。昨日の実績訓練で行方不明になった生徒の捜索期間が決まったぞ。三日間、見つからなければ死亡として扱う」
「三日間? 短すぎませんか? 普通なら一週間~二週間じゃありませんでした?」
「確かに短い方かもしれんが、重要な人物ではないから、捜索する時間が無駄だと言うらしい」
「え、この学園の生徒でしょう!! 最終決定したのは…………あ」
最終決定したのは誰なのか、聞く前に思いついた。ここの学園で最も権力を持った人物のことを。
「やれやれ、気付いたか。間違いなく、私怨が入っていやがる。あいつもあの事件の被害者だからな」
「だからって! それを妹のアルエルに向けるのは間違っている!!」
「だからなんだ? ここは帝国だ。それは理解しているな?」
間違っていると言った教師は少女みたいな教師が言いたいことを理解している。
ここは帝国だ。強い程に高い権力を持つことを許されている。といえ、反対に弱い奴は生きる価値がないと言われる程に地位が弱い。強さの他に出来ることがあれば、話は別だが……
「アルエルだったな。アイツはあれ程の大事件を起こした姉を持ち、魔法の才能がない。他に何かが出来たとは聞いたことがない。なら、アルエルにしたら帝国にいるより、他の国に行くか、命を絶った方がマシかもしれんな」
「そんなの……」
「許されないか? それがな、許されるんだよ。この帝国ではな。覚えておけ」
言いたいことだけ言うと、少女みたいな教師、ジュリエは次の授業場所へ向かう。残った教師は、じっとアルカド山を見つめるだけだった。なんとかしたい思いはあったが、自分、エルディムは強力な権力を持つ学園長へ進言する勇気はなかったのだ…………
ーーーーーーーーーーーーーーーー
『特訓だ』
学園から離れたかと思えば、いきなりその言葉。アルエルはなんで、そんなことになったか理解出来ていなかった。
「え、ええと……、なんで特訓?」
『わからないか? お前は俺について行きたいと言ったな?』
「そうですが……」
『察しの悪い奴だな。だから、今のお前が俺について来ても、一週間……運が悪ければ、一日も持たないかもしれん。だから、お前を少しでも強くしてやるって言っているんだよ』
ホタルの本音は、少しでも強くすれば、他の道を見つけることが出来るかもしれない。例えば、冒険者になるか、そのまま学園に戻って、高い地位を実力で勝ち取るとか。
ホタルにしたら、正直に言えば、足手纏いでついて来られても困る。
だから、特訓をすると言ったのだ。
ここに脚を止めることになってしまうが、別に急いでいるわけでもないので問題はない。
「ホタルに着いて行くために…………うん、やるよ!! 絶対にやってやるんだから!!」
そんなホタルの心情を知らずに、アルエルは凄いやる気を出していた。
『よし、お前は今日から弟子だ。厳しく行くぞ』
「はい!」
『はいじゃない、イエッサーだ!!』
「え? イ、イエッサー!!」
『声が小さいぞ!!』
「イエッサーァァァ!!」
今回は声を張り上げる練習、返事をする際の姿勢も教え込んだ。まずは、形からだと言うようにホタルはうろ覚えの軍人式を叩き込んだ。
初めは冗談のつもりだったが、この少女はノリが良いので楽しくなってしまったのは秘密である…………
誤字を見つけたら教えていただけるとありがたいです。
これからはホタルとアルエルの特訓編が始まります!
どういう特訓になるかは、見てのお楽しみに!!




