33.3階層の主②
本日ラスト!
後ろから危険察知が反応し、すぐ横へ転がるように避けるとすぐそこを通る物があった。
手だけが動いていやがる!?
切り離された黒い霧で出来た手は魔力を纏っていた。その魔力を纏っていたため、黒い霧は物理となって殴られたのだ。
魔力を纏った手で殴られたが、ホタルは衝撃耐性を持っていたので、殴り飛ばされた割にはダメージは少なかった。
衝撃耐性はダメージを減らしてくれるが、衝撃自体を減らしているわけじゃないんだなー。
ここで一つと賢くなったホタル。それはそれとして、カンテラを排除出来たと思ったら、手を飛ばしてきた。
しかし、威力はあのカンテラが出す炎よりはマシなので手は魔力感知と危険察知で避けつつ、本体を狙うことにする。髑髏の部分なら物理でも当たるだろうと、突撃をする。
髑髏がある部分へ向かい、雷脚を発動した。この前、偶然にベディゴキアへやったことをやった。
頭と頭のぶつかり合いでベディゴキアの額にヒビをいれた奴だ。
ゴバッ!
お互いの頭がぶつかり合い、死霊ダクスエルのダメージはどれくらいかわからないが、防御力はこっちの方が高かったお陰なのか、死霊ダクスエルはバランスを崩してよろめく。ホタルは少しHPが減ったが、想定内である。
っ、少し痛いが転がり回る程ではないな。
物理で髑髏の奴に当たったのは収穫だ。髑髏を狙い続ければ、死ぬはずだ!!
こっちは少しだけだが、純回路のお陰でHPを回復出来る。死霊ダクスエルはどうかわからないが、ベディゴキアみたいに自動回復や回復魔法みたいなのを使えないと想定して挑む。
回復と死霊は相性が悪そうだと思うし、攻撃や魔法にあれだけの性能があり、回復までもこなしてしまうならば下の階層にいても不思議ではない。
続けてダメージを与えようと動こうとした時、また『影写』を使ってきた。
同じ手は喰らうかよ!
疾風を自分の周りへ放出して、偽物を消してゆく。消した後に短剣を咥えて、髑髏に一筋の切り傷を付けた。
ゴガァァガァァーー!!
あれ、意外と効いている?
この短剣で斬っただけなのに……、まさか銀製であることに関係が?
その推測は当たっていた。死霊ダクスエルみたいな幽霊やスケルトン、ゾンビなどは銀製に弱い。
この短剣を持ってきた兵士はこういう敵は銀製に弱いのを知っていたから、持ってきていたのだ。兵士は力不足で死んでしまったが……。
よっしゃっ!
この短剣で更に斬りつけてやればいいんだなーーッ!?
また手だけを飛ばして、咥えていた短剣を払い落されてしまう。その隙を見せてしまったため、死霊ダクスエルは最強のスキルを放ってきた。
『腐蝕』
髑髏の顎が大きく開き、紫色の煙を吐き出してきた。ホタルは顎が開いた瞬間に横へ退避していたので、避けることが出来た。
ゲッ、地面が腐った!?
紫色の煙が通った先は、全てが腐っていた。防御が高いホタルでも、それを食らったら死ぬ。それだけは本能で理解していた。
続いて、死霊ダクスエルは『腐蝕』を吐き出してホタルを追い詰める。腐蝕を食らったら地面は腐って溶けていき、ホタルはその溶けた地面を踏むとどうなるかわからないので、踏まないように気をつけつつ、腐蝕を避けていく。
ホタルは腐蝕を避けられているが、行動できる範囲が狭くなっていくのがわかる。
やばい! これでは、こっちが不利だ。
避けていた地面も行動範囲に含めるべきか……?
ただダメージを受けるだけならいいが、滑ったり粘着性が出来ていたなら踏まないほうがいい。
そう考えれば、踏まないでホタルは賭けをした方がいいと考えた。
ホタルは脚を止め、腐蝕に対して疾風をぶつけた。だが、勢いは腐蝕の方が強い。
やっぱり、向こうの腐蝕が上か。
だがーーーー!
死霊ダクスエルの腐蝕は前方の広い範囲に放たれており、脚を止めたホタルは既にその範囲から逃げることはできなくなっている。
だから、ホタルは突き破るために一点だけに集中して疾風をぶつけた。
腐蝕はさっき、言っていた通りに疾風よりも上の力がある。だが、疾風を一点の場所だけを狙えば…………
一点だけの場所が死霊ダクスエルへの道を作る。疾風は一点に集中しても、相殺が限界で消え去った。
ホタルはその作った道に雷砲を髑髏に当てることが出来た。
そして、そのまま腐蝕を喰らった。
いてぇぇぇーー!!
焼けるような痛みが!!
一点だけの穴で顔には当たらずに済んだが、身体が焼けつけるような痛みに転げ回る。
死霊ダクスエルからは笑みを浮かべたような感じがあったが、ホタルは痛みに耐えて、反対に笑みを返してやった。
怪訝に思う死霊ダクスエルだったがーーーー自分のHPが0になったことに遅れながらも気付いた。
さらに、自分の頭から痛みを訴えてくる。
自分の頭に何かが刺さっているのは理解出来たが、何が起きたのかまでは理解できなかった。
ゴガァァガァァ、ガァァァァァァ!?
身体の維持が出来なくなり、身体が消え去っていく。実体があった髑髏も砂になって地面へ落ちていく。
砂と一緒に落ちていく物があった。
銀製の短剣。
そう、髑髏の頭に刺さってHPを0にしたのは、その短剣だったのだ。
短剣にパリッと電気が流れていたが、それも消えていく。
ふぅ、HPが0になってくれたのは助かったな。
ホタルはもう戦えなかったのだ。もし、短剣が刺さってもHPが少しでも残っていたら負けていた。
ちなみに、どうやって短剣を刺したのか?
それは、雷砲のお陰である。短剣は咥えていた時に雷砲で磁力の力を持たせていた。そして、髑髏にも雷砲を当てたら…………さっきのようになるわけだ。
だが、銀製が弱点でも一撃だけでHPを0にすることが出来るかは賭けだった。
その賭けに勝ったホタルは安堵して、そのままHPの回復を待つのだった…………
皆からの感想で被った質問が多かったら、活動報告で答えさせて頂きます。
では、またー。




