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113.報酬




 草原の中心に集められたベディゴキアを食べていたら、エルメダとダルグエアがこっちに来て、ホタル達も城へ来て欲しいと。なんか、話があるとか。

 ホタルは充分、お腹は一杯になったので話を聞きに城へすぐに向かう事にした。




 あ、カマキリはカステラのような柔らかさと甘みを持っていて、美味しかったぞ。


虫の魔物はどうして、甘いのか知らないが、他はどうなのか気になった。もし、チャンスがあれば食べてみたいなと思うホタルだった。








「おう、来たか! 協力して貰ったのは助かったぞ!」

「構わない。沢山食べれたしな。で、話とは?」

「そうそう、お前達に報酬を渡そうと思ってな。――――で、何が欲しい?」

「ん、こっちが決めてもいいのかよ?」

「そうだな。魔族と話すのも初めてだし、何が欲しいか想像出来んでな」


 獣人の王様、タイガルド・ジェクトは今まで、魔族と会話をすることもなく戦闘に入っていたので、魔族とは話したことはなかった。ホタル達のことを知ってから、今度は会話をして判断するとの考えになっている。


「魔族と言っても、欲しい物は人間、エルフ、獣人とは変わらないと思うけどな。んー、アルエルとエルメスは何が欲しい?」

「えっ、私はええと……」

「美味しいご飯!!」

「エルメス! さっき、食べたばかりでしょ!?」

「え~、もっと食べたいー!」


 エルメスは甘味だけではお腹が膨れなかったのか、美味しい食事を要求していた。


「ご、ご飯ぐらいなら、報酬とは別に出すから、他にないか教えてくれんか?」

「すまないな……そうだな、金を少しとここの近くにダンジョンがあるか教えてくれないか?」

「金はいいが、ダンジョン? 教えるだけで報酬になるのか?」


 タイガルドはダンジョンの居場所を教えるだけで、報酬になるとは考えていないようだ。つまり、最下層にある継承スキルのことを知らない可能性が高い。ホタルはそう思い、『念話』で二人に継承スキルのことを話題に出さないようにと命令を降す。二人はホタルと契約している状態なので、そう命令を降せば、口に出すことも出来なくなる。

 ここからはホタルだけが会話をする。

「ええ、ダンジョンにいる魔物は自分のレベルを上げるにも効率が良いし、最下層には珍しい宝があると聞いたことがあるので」

「成程な。わかった、ネガル、地図を持って来い」

「はっ!」


 ネガルと呼ばれたライオンの大臣は、王に言われた通りに地図を持ってきた。地図は獣人の国であるトール・アディスの全体地図であり、ダンジョンがある場所を詳しく教えてくれた。見つけたダンジョンは入らない限りは、危険がないと判断しているので人間の国のように兵士を配置をもしてはいなかった。


「休むなら、ここで過ごすといい。お金はあとで渡すとして、部屋は――――」


 タイガルドが話していた時、突然に扉が大きく開かれた。王が客と話している時は緊急以外にこの部屋へ入ってくるのは認められていなかった。また緊急事態のことが起こったのかと思って、全員が扉の方へ目を向けると――――豚がいた。




「た、タイガルド様! 何事ですか!? 失礼な人間共を王城の中へ!!」


 その豚とは、この国に来てホタルがぶっ飛ばした人物であり、頭には包帯を巻いているイグルだった。会話を中断されたタイガルドは額に青筋を浮かべて、ギロッと睨んでいた。


「……緊急事態ではないのか?」


 睨まれたイグルだが、それに気付かないまま、叫び散らすだけだった。


「そうですよ! 私を馬鹿にした人間共がここにいる事態が緊急事態でしょう!!」

「人間だと? そんな人物はおらんぞ。お前の目は節穴か?」

「なっ!? 目の前にいるのではないか!!」


 イグルは王に対して、礼儀もなく敬語を使わずに文句を言い続けていた。ホタルは会った時から馬鹿なのかと思っていたが、本当に馬鹿だったようで、呆れていた。イグルは戦闘に関しては素人であり、タイガルドが放つ威圧には気付いてなかった。ネガルは王の状態に気付いたのか、助けを出すように注意を促した。


「イグル! そちらは国の恩人であり、人間ではなく魔族なのだぞ! タイガルド様の目前でその態度は有り得ない。速やかに退出し、考えを改めよ!」

「魔族……? どう見ても、人間とエルフではありませんか! 大臣ごときが私に意見をするな!! 失礼な奴だな!!」


 どっちがだよと思うホタルだった。その態度にタイガルドは切れたのか、先程から放つ威圧の質が変わった。その威圧は素人でもわかるのか、叫び散らしていたイグルが黙り、身体を震わせていた。


「た、タイガルド様……?」

「お前には失望したよ。お前の経営力には期待していたが、礼儀がない。国の恩人である客に無礼を働くだけで終わらず、我がの大臣をも馬鹿にするか」

「っ!」


 ようやく、イグルも言い過ぎたことに気付いたのか、冷や汗をかいて身体を震わせ、土下座の体勢になっていた。


「も、申し訳ありません!!」

「もう遅い。お前は解雇だ、おい。連れて行け」

「なっ!? か、解雇!? 私の力が無ければ、政財が回らないのでしょう!?」

「それを決めるのは我だ。さっさと連れて行け! もう顔を見たくもない!」

「お許しをぉぉぉぉぉ!!」


 現れたと思えば、両端で待機していた兵士によって、すぐ退出されてしまう脂っこいオークに何をしに来たんだよと思うぐらいに、呆れていた。


「邪魔が入って、すまないな」

「気にしてない。それよりも、地図だが――――」

「そうだな。ダンジョンがあるのは、ここだ」


 獣人の国で居場所がわかっているダンジョンは一つだけで、歩いて一日の距離にあると。そこへ行く道は道案内を出すと言われ、ホタルは足手纏いはいらないと断ろうとしたが――――




「俺が案内してやるぜ!」




 タイガルドがその案内人の名を出す前に、ダルグエアが手を挙げて名乗り出たのだった。

 ダルグエアなら、足手纏いになることもないが、ホタルは――――




「むしろ、いらんわ!!」

「なんでだよ!? あの時、殴ったことにまだ恨みを持ってんの――ぶげらぁ!?」

「ダルグエア! 勝手な事を言うな! まだ仕事が残っているだろ!?」


 横からエルメダ隊長がダルグエアの額に手刀を打ち込んでいた。その威力はとても高くて、ホタルが頭蓋骨は無事なのかと心配に成る程だった。


「……いや、ここはダルグエアに行って貰おう」

「タイガルド様!?」

「やりぃ! 宜しくな!」

「えー、いらないけど……」

「そう言うな。ダンジョンの一階層はダルグエアの力が必要になると思うぞ」

「む? どういうことだ?」


 タイガルドの話によると、自分達は三階層までは攻略を進み終わっており、その先はまだ進んだことがない。そして、一階層に出てくる魔物はほとんどが迷彩の能力と気配遮断の能力を持っているから、そこを抜けるには鼻の良さが一番高いダルグエアの力があった方がいいと。


「成程な。そういうことなら、こっちから頼みたいぐらいだ」

「宜しくな!」


 そんなことがあり、次のダンジョン攻略はダルグエアと一緒に行くことに決まった。五月蝿い奴だが、攻略する為に我慢しようと思うホタルだった――――








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