112.後処理
久しぶりに載せました。
ここまでの流れを忘れていたら、すいませんが読み直してくれると助かります。
簡単に流れを説明するなら、ホタルは獣人の街まで行ったが、王様に会ったり魔物の殲滅を手伝った貰いたいとお願いされたり、Gの魔物が攻めてきて、ホタルはキングスGを苦戦しつつも、仲間の協力で倒すことに成功する。そこまでが、最近の流れになります。
では、続きをどうぞ!!
クイーンゴキアとキングスゴキアを倒した今、この場に残っているのは一万に満たないベディゴキアだけ。キングスゴキアを倒して、更に強くなったホタルにしたら、物足りない相手だがヤル気を削ぐ結果にはならない。
何故なら――――これらは餌なのだからだ! 甘ーい黒飴のように美味しいを知っているからだ!!
後は作業処理のような仕事だが、ホタルにとっては苦にはならなかった。後の食事のことを考えれば、脚が軽くなるものだ。数は獣人の方が多くなっているので、後の処理は3時間ちょっとで終わった。
「終わった……、もうべディゴキアの姿もしばらくは見たくないよぅ……」
「次は一箇所に集めろ!」
「鬼!!」
「違うだろ、命令されたら―――」
「わかっていますよぅ、い、イエッサー……」
「ようやく、食べれるよね!?」
「そうだ。一箇所に集めたら、食事だっ!」
「楽しみ~!」
まだベディゴキアへ関わる事態に落ち込むアルエル、これからの食事に胸を膨らませるホタル、どんな味がするか楽しみにして、涎を垂らすエルメス。
虫の魔物だと知っても、涎を垂らすことが出来るエルメスに呆れつつ、アルエルは風魔法でバラバラになっているベディゴキアを草原の中心に集めていく。決して、手に触れないようにと風魔法で集めているアルエルだったが、エルメスの場合は身体が何かの液体で汚れる事を厭わず、べディゴキア達の死体を抱えていた。
「ほ、本気で食べる気なのか……?」
「そうだが? ん、黒い豹の隊長は?」
「エルメダ隊長? あいつなら、王様に報告をしに行ったぞ」
「報告を? って、お前は行かなくてもいいのか? 役立たずといえ、副隊長だろ?」
「役立たずじゃねぇよ!? はぁっ、報告に二人もいらないだろ。それよりも、どんな味がするか気になってな」
ダルグエアは今まで虫の魔物は食べたことが無く、見た目だけで忌避していたが、ホタルが美味いと言うので、気になっていた。
「おっ、食べてみるか? 生でもいけるぞ? まぁ、生しか食べたことがないけどな」
「生か……、【病苦】にはならないよな?」
ホタルは【病苦】の状態異常にはならないので、問題はないが、ダルグエアは違う。
「あ、そうか。俺とエルメスは『状態異常無効』を持っているから、問題はないが……」
「こりゃぁ、食べてみないとわからないか。って、『状態異常無効』を持ってんのか!? 上級スキルだろ、それは」
「珍しいか?」
「そうだぜ。上級スキルは一生の内で二つを手に入れることが出来れば、上等。お前はまだ子供にしか見えないのに、既に上級スキルを持っている事態が異常。しかも、誰も欲しがる『状態異常無効』はとても希少なんだぜ?」
『状態異常無効』というスキルは、取得条件が全くわかっておらず、状態異常による全ての耐性をレベル10まで上がらないと取得出来ないと考えられている。実証したくても、状態異常による耐性は実際に喰らって、耐えなければ取得出来ないし、レベルを10までに上げるのも時間が掛かる。一生を賭けなければ、手に入らないと考えれば、誰もやりたがるとは思わないだろう。今まで、『状態異常無効』を持っていた人は少なくともいた。それらは、全てが先天に生まれて持った人である。
「ふ~ん。で、食べる?」
「少しは興味を持ってくれよ……【病苦】を消せる薬を持っているから、少しだけ食べてみるぜ」
最初は脚をちょっぴりと食べる。べディゴキアは毛皮のようにごわごわとしてないだけでもマシだと考えながら、硬い殻を舐めるように、口へ含んでみるダルグエア。
「ん!?」
更に脚を口に含み、舌を動かしていく。
「――――――――美味ぇ!? なんだこれ、蜂蜜みたいに甘えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ダルグエルはこの甘さを気に入ったのか、次々と口に入れていく。その様子を見たアルエルは顔を青くしているが、甘いと言いながらダルグエルに質問をせずにいられなかった。
「ほ、本当に甘いの……?」
「甘いぜ! 食べてみればわかるぜ!!」
「まぁ、待て。【病苦】になっていないか? 『隠蔽』で確認出来ないから、自分で確認してくれよ」
「あぁ、えっと、無いな。【病苦】になる心配はないようだな」
アルエルに勧めようとしたダルグエルだったが、先にステータスを確認しておけと忠告しておく。ベディゴキアは食べても【病苦】にはならないようで、ダルグエルは安心して次を食べ始めた。
「甘~い! これ、美味しいよ!!」
「そうだろ? 見た目で食べられないと判断するのは早計ってことだな」
「うむむむっ……わ、私も食べてみる!!」
「おうおう、食べろ」
覚悟を決めたのか、アルエルもベディゴキアを食べようと手をぶるぶるとさせながら、口へ近付いていく。しばらくは逡巡したが、脚を舐めると――――
「ッ!? え、ええっ!?」
信じられないと言う様な表情で、舐めた脚を見詰めていた。また舌をちろっと出して、つんつんと少しずつ確かめるように動かして……ぱくっと口の中へ含める。
「あ、あまい、嘘……?」
「な? 俺の言った通りだろ?」
「う、うん。これは間違いなく、虫の魔物、ベディゴキアの脚だよね?」
「まだ疑うのかよ~? 自分の眼で見た物が信じられないのか?」
「い、いえ、嫌われ魔物でナンバーワンになっている、ゴキア系の魔物が甘くて美味しいとは思わなかったので……」
ゴキア系とは、ベディゴキア、キングスゴキア、クイーンゴキアなどの魔物を纏めてそう言う。見た目や戦い方がキモくて虫の魔物であって、食料になるとは考えられていなかった。それが美味いと言われても、すぐには信じられないだろう。
「美味いな! これを仲間の皆にも食べさせてもいいか!?」
「まぁ、数は多いし。好きにしろ。あ、思い出したが、キングスゴキアとクイーンゴキアは【支配】状態になっていたぞ」
「りょうかい、りょうか――――って、それを早く言えよ!?」
ダルグエアはキングスゴキアとクイーンゴキアが他の者から支配された魔物だと気付いていなかったようで、慌ててその情報を王様へ伝えに行った。
「私達はどうしましょうか?」
「ん~、迎えが来るまではここで食べていようか」
「美味しい~。あのカマキリは美味しいのかな?」
「む、それは気になるな。カマキリも虫の魔物というだけで誰も食べてはいないだろうし。よし、食べてみるか!!」
「さんせーい!」
「ホタル様ったら……」
城へ向かっていったダルグエアを放って、ホタル達は草原で食事を楽しむのだった。




