111.vsキングスゴキア
お久しぶりです!
続きをどうぞー。
ホタルのためにアルエルが時間稼ぎをする。30秒と言ったが、数分は稼げるようにと動いていく。
「火魔法が使えないなら……、土と風魔法で止める! ”鎌鼬”!」
土で出来た巨兵の”地鎧兵”で数秒は足止め出来ていたが、キングスゴキアは触覚から放たれた放電で破壊されていた。破壊された瞬間を狙い、”鎌鼬”で右側の脚を切り裂いていた。
これなら、素早く動けまい! と思ったが、アルエルは異常な回復力を持っていたことを知らなかった。
「なっ、脚が!?」
「ギゴォォォォォ!!」
「くっ! ”地鎧兵”、”鎌鼬”!」
再びに巨兵を生み出して、鎌鼬で牽制していく。だが、鎌鼬は胴体に当たっても真っ二つになることは無かった。致命傷にならず、傷はすぐ塞がってしまう。巨兵がキングスゴキアの突進を受け止めていたが、すぐ放電でまた壊されてしまう。
アルエルは悟った。火魔法でなければ、倒せないとーーーー
「ホタル様は、絶対に火魔法を使うなとおっしゃった! それを破るにはいかない!!」
自分自身へ危険が迫ってこようが、ホタルの言葉を裏切るつもりは無かった。倒せではなく、時間稼ぎをしろと言ったことからトドメはホタルがやるということ。アルエルが出来ることで時間稼ぎとなれば…………
「”煉爆”!」
キングスゴキアの足元に爆発を起こし、バランスを崩させる。”煉爆”は煉気で爆発を起こすが、火は使われてない。熱エネルギーと衝撃の集合体であり、森へ火は着かない。
「ギゴォッ!!」
「やはり、熱に弱いのですねッ!!」
煉気を使い果たす勢いでキングスゴキアを爆発で包んでいく。『昇華』は魔法にしか効果がないが、威力は充分高く、スノーゴーレムだったら破壊して勝てたかもしれない。爆発が収まり、姿が見えるようになるまでは致命傷になる傷ぐらいは与えられたと思っていた。
「なっ!?」
土煙が収まり、姿が見えるようになるとアルエルは驚く声を発していた。姿を現したキングスゴキアは致命傷を全く負っておらず、テカテカした液体を包んでいた。
テカテカした液体のような物が”煉爆”を防いだと理解したが、どんな液体なのかまではわからなかった。
近くにいた鳥の獣人がはその正体を知っていた。
「あれは、樹液だ! 衝撃と熱を防ぐ性質を持っている!!」
「な、なんでそんなのが!?」
「キングスゴキアは自分の体内に樹液を溜め込むことがあると聞いたことがある! まさか、それだけの量を溜めていたとは……」
「くっ!」
これでは、”煉爆”も防がれたことになる。次の攻撃はどうするか迷っていると、キングスゴキアがアルエルに向かって酸を吐き出していた。
魔法の構築を止め、酸の範囲から抜け出していく。だが、抜け出した先にはキングスゴキアが突進してくるのが見えていた。
突進を喰らう覚悟を決め、両手をクロスにするように防御を固めた…………が、前に誰かが出てくる影が見えた。
「ホタル様!?」
「ありがとうな。充分、時間を稼いでくれたな」
アルエルの前に出ていたのは、ホタルだった。そのホタルは黒い球を両手で抑えるような体勢だった。それが何なのかわからないが、アルエルはアレがキングスゴキアを倒す物だと理解出来た。
「い、いえ。私はホタル様のことを信じていますので」
「そうか。未完成な技だが、威力は充分。見よ!!」
突進してくるキングスゴキアに黒い球が向けられる。
「『万象』を省き、動作を減らしたことでラグも無くなった。『黒死点』を無理矢理に圧縮して、それを一方向へ向けて解放すれば、どうなるか…………、キングスゴキア! お前の身で知るがいい!!」
そして、その無理矢理に圧縮された力が一方向だけに向けて解放された。その姿はウォーターカッターみたいに音をも置き去りに発射される。
”黒死冥”
新たな技、”黒死冥”は一瞬でキングスゴキアを貫通して、弱点であった額を貫いていた。貫くで終わらず、『黒死点』の効果で蝕んでいった。
「ギィ?」
当のキングスゴキアは何をされたか理解も出来ず、その命を散らしたのだった。
それだけでなく、キングスゴキアの後ろにいた何十体のベディゴキアも巻き添えにしていた。
「ぐっ!」
「ホタル様!?」
「大丈夫だ。魔力と煉気を使いすぎただけだ」
ホタルも無理矢理に圧縮したせいで、思ったより消耗していたようだ。それはすぐ『偽造永久機関』で回復したので、続けて動くのは問題なかった。
まだクイーンが残っており、ベディゴキアも何千か屯っている。
「先にクイーンを……」
「む、お前らも終わったのか?」
「はっ、手伝いはいらなかったのか」
クイーンゴキアが戦っていた場所を見ると、メルエダ隊長と呼ばれている者がクイーンゴキアの胴体をバラバラに切り裂いているところだった。どうやら、メルエダ隊長にしたら、クイーンゴキアでも苦戦はしなかったようだ。
「強いな……」
「あら、キングスゴキアを倒したの? やるじゃない、役立たずのダルグエアと違って」
「おいおい、お前がまず1人でやるから、予想外のことが起きるまでは待機と命令を出していただろ?」
「馬鹿か。待機と言ったが何もしないのと同義なわけあるか! 暇があれば、周りを手伝わんか!!」
「理不尽な……」
ダルグエアは肩を落としていた。周りはまだ戦闘中なのに、緊張感がないなと思うホタルであった。




