106.大暴れ!!
はい、続きをどうぞ!
黒い森が獣人の国へ迫ってくる…………ではなく、黒光りした生き物が大量に雪崩れ込むように迫ってきていた。
聞いた数はーーーー2万以上。
こりゃ、普通にやったらあっという間に国は滅ぶな。というか、何故、こんなになるまで放っていたんだ?
こんな状況にならないように、少しずつと倒しておけば良かったんじゃないのか?
それとも、それが出来ない状況があったのか?
考えてもわからないことなので、ホタル達も獣人の最前線まで屋根伝いに走っていく。森に出たら、木の上を忍者のように跳んで最前線である場所を見つける。
「おい! ここが最前線で間違ってねぇよな!?」
「貴様は…………王が言っていた助っ人か? そうだ、ここが最前線だ」
「よし。ここまで来るまでは時間がまだあるな。聞きたいことがあるんだが、いいか?」
指揮者らしきの者を見つけ、知りたいことを聞いてみる。まず、先程の疑問だ。
「何故、こんなのになるまで放っていたんだ?」
「王から聞いてないのだな。アレは、隣の魔王領から来ている。魔王領は化け物みたいな魔物が沢山生息しており、ベディゴキアにかまけていたら、強力な魔物か魔人から後ろからバッサリとやられる可能性が高い。だから、今までは獣人の領地へ入ってきた奴しか倒してなかったんだ」
「ふむ? 魔王は沢山いるんだよな? 隣の領地にいる魔王は誰かわかるか?」
「…………青い炎を操るベルフェゴールとしか聞いていない。王が詳しいから、あとで聞いてみるのがいいだろう」
ベルフェゴール。また聞いたことがある名前だなと思いながら、放っていた理由がわかったので次の質問をぶつける。
「次の質問。今まではアレをどうやって撃退していた? 2万もいると聞いたんだが?」
「去年よりちょっと多いから、厳しい状況だな。基本的は精霊剣で遠距離攻撃をぶつけて、数を減らしたら近接でやる形だった」
「だが、今回は数は多いだろ? それでやれるか?」
「わからん。やらないと街に被害が出てしまうから、やらない選択はない!」
指揮者は覚悟を決めたような表情をしていた。死ぬ気で止めるという気迫を感じた。
「そうか、先手は貰うから…………あの草原は見えるな? あの草原を超えて、森に入ったら攻撃を始めるのは大丈夫か?」
「む、あの草原か? 大丈夫だ、元より精霊剣で遠距離は森に入った瞬間に発動するつもりだったからな」
「よし。俺が草原で暴れて弱らせてやるよ」
「待て!? 1人でいくつもりなのか!?」
「いや、こいつらも一緒だ」
後ろにいるアルエルとエルメスを指し、3人でやると言い放った。指揮者が次の言葉を発する前に、『堕印の翼』を発動していた。
印が入った紫色の翼を広げ、黒い群れへ向かっていく。それに遅れて、覚悟を決めて走り出すアルエルとワクワクしながら風に乗って浮き上がるエルメス。
これだけの敵に黒死点をぶつけようとするなら、魔力と煉気が足りなくなるな。ならば、吸収して回復しながら弱らせてやればいい!!
堕印の翼は形を変えて敵を包み込むことも可能で、魔力と煉気を吸収していく。それに続いて、威力と効果を疾風並みに落とした黒死点で広範囲に広げていく。疾風並みに落とせば、細胞を殺さずに苦しめるだけに留めることが可能である。
「たまにこういうのいいな!!」
ホタルは草原で真正面から突っ込んで、自分の攻撃を当てていく。ホタルは弱らせるのが目的で、完全に殺せなくてもいい。
後から止めを刺してくれる頼もしい仲間がいるのだから。
「ち、”地鎧兵”! ”地槍撃”!」
巨兵を盾にして、地の槍でベディゴキアを串刺しにしていく。アルエルの魔量は増えているので、広範囲に高威力の魔法を放っても疲れてはいない。
倒していく毎にレベルが上がっていき、MPも格段に増えていく。
それに続いて、エルメスも旋風魔法の『乱刃旋』で大量の鎌鼬がベディゴキアをバラバラに斬りざんでいく。魔法を放つで終わらずに、接近して殴り飛ばしていく。顔に血と言える液体を被っても怯むこともなく、斬って殴って葬っていく。
「キャハハハハハッ!!」
狂っているように笑って楽しんでいるエルメス。さすが、異常者という相応しい称号持ちだとわかるぐらいに狂っていた。
その戦い振りを見ていた獣人は惚けていたが、指揮者が一先に気付いて、大声で指示を出した。
「こ、この時が好機だぁぁぁ!! 前に出て、3人がいない場所に撃ち込めよ!!」
「「「ハッ!!」」」
予定よりも遠い場所で開戦となったが、その好機を見逃してはならないと、脚を動かして精霊剣の攻撃範囲まで走り出す。
追い付いた獣人達は、それぞれが精霊剣を発現して、火を除いた水、風、雷、土などと魔法みたいな攻撃で動けるベディゴキアを減らしていく。
「オラッよ!!」
総隊を纏める副隊長のダルグエアも前線に出て、スピードを生かした戦いで圧倒していた。ホタルが見たところ、精霊剣を使った様子は無かったのに、数の不利をものとせずに剣を振るっていく。
ここまでは、順調だった。
アレが出てくるまではーーーー