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103.ようやく……

はーい、続きをどうぞ!

 


 ホタル達は誰1人も殺さずに、警備隊を無効化させていた。さっきまで周りに観客はいたのだが、警備隊が来てから戦いに巻き込まれては危険なので、離れる者が多かった。

 少数は残って観戦していた者もいたが、今は固唾を呑む思いで見ていた。

 隊長を含める警備隊の1つがたった3人相手に無効化されていたのだから、その実力に固唾を呑まずにはいられないだろう。

 これから警備隊がどうなるかで、観客の反応が変わるだろう。もし、警備隊が問答無用で殺されることになれば、獣人の全体がホタル達の敵へ回るだろう。今はイグルとのやりとりのこともあり、完全に敵だと判断しきれていない。だから、観客はホタル達を注意深く見ているのだった。


「ようやく落ち着いて、話が出来るな。一応、聞いてみるけどお前がこの隊の隊長で間違ってないよね?」

「……話が出来るだと? イグル様をあんな目に合わせて、話だと! ふざけている!!」

「あー、どうすっか。これは……」


 聞く耳を持たない様子で、話が出来るとは思えなかった。ホタルはどうするかなと考えていたら、さっきの熊の獣人が前に出ていた。

 その熊の獣人は懇願するように、隊長へ訴えていた。


「聞いてあげて下さい!! 私のためにやったことで、単なるに暴れただけではないのです!!」

「何を……」

「そうだ、俺も見た。その子供が助けていたことを!!」

「私には悪い人だと思えないんです! どうか、聞いてあげて下さい!!」


 ポツンポツンと観客から声が上がるのが聞こえた。ほとんどがホタルを擁護する言葉だった。

 それらの言葉に、聞く耳を持たずだった隊長は少々考え込み…………


「…………説明しろ。さっきまで起こったことを」

「は、はい!」


 ホタルにではなく、前へ出ていた熊の獣人に説明を求めていた。人間にしか見えないホタルより同族である獣人から話を聞いて、判断したいと思っていた。

 説明を求められた熊の獣人は先程に起こったことをそのまま、説明をしたのだったーーーー
















「そうか。わかった、子供よ。いきなり襲ってすまなかった」

「いや、構わないけどよ」

「ひとまず、話をしたいと言うなら…………こいつを退かしてくれんか?」

「んー?」


 まだエルメスが乗って首へ短剣を添えていた。ホタルは解放しても大丈夫とわかったので、退かしてやることに。

 解放された隊長は、周りの獣人達に倒れている警備員を介抱をお願いして座り込む。折れている脚は痛むが、それぐらいの怪我なら警備隊に入ってから良くあることなので、我慢は出来る。


「話をする前に、人間である君達とエルフが一緒にここへ来た? なんの目的で来たのか、聞かせてくれないか?」

「質問があるのはこっちなんだが…………まぁ、いいか。ダルグエアと言う奴に会いに来ただけだ」

「む? なんで、奴と面識があるのか知らんが、それだけなのか?」

「そうだな。ここへ来たのはダルグエアのせいだと言ってもいいが、観光もしたいと思った気持ちもなくはない」


 話を聞いた隊長の男は呆然とした表情になっていた。獣人の国へ攻めて来た者だと思っていた。

 ホタル達が偵察組か暗殺組であって、イグル様を狙ったと思い込んでいたのだ。


「呆れた……、つまり、ダルグエアと会わなかったら、人間である君がここへ来なかったわけか?」

「そうだな。あ、1つだけ訂正するぞ。俺は人間じゃないぞ」

「え?」


 人間の姿をしておいて、人間ではないと言われて呆気に取られるが、次の言葉に驚愕の表情に変わった。




「俺らは魔人だぞ?」

「はぁっ!? え、えっ? 俺らって……?」

「そのエルフも分類としては、魔人になるぞ?」


 衝撃の真実に隊長だけではなく、周りにいた者も驚いていた。見た目は人間とエルフにしか見えないのに、魔人と言われても理解が追い付かないだろう。


「俺が人間か魔人だってどうでもいいじゃないか。質問に答えてやったんだから、こっちからの質問に答えて貰うぞ。ダルグエアは何処にいる?」

「あ、え? ……そうだったな、ダルグエアはーーーー「答える必要はないぜ」っ!?」


 ホタルの質問に答えようとしたが、その本人が現れた。何もない所からスッと浮き出るように現れたため、ホタルは眼を大きく見開いていた。

 さっきまで気配を感じなかったから、いきなり現れたことに驚いているのだ。


「驚いているな。これは、俺の精霊剣の能力だ」

「ダルグエア! 見ていたなら、さっさと介入してこんか!!」

「いやぁ、始めはそのつもりだったが、大人数の方に介入するのはフェアじゃないだろ? だから、観戦させて貰ったわけだ」

「なんで、こいつが全ての隊における総部隊の副隊長なんだよ……」


 この隊だけの隊長である猫の獣人は背中を丸めて項垂れるのだった。

 話を聞くには、ダルグエアはとんでもない地位を持つ人物のようだった。その様子を見ていたホタルは、ダルグエアに隊を率いるような器があるように見えなかったが、おそらく実力で勝ち取ったのだろう。

 だが、そんなことはホタルにとってはどうでもいいことだ。


「おっと」

「何を!?」


 いきなりホタルがダルグエアの顔へ殴り掛かったが、頬ではなく手で受け止められた。猫の獣人はそのことに驚いていた。




「そうだそうだ、戦いは終わったんだろ?」

「決まってんだろ、俺は一発をお前に返すために来たんだからーーーー」


 ホタルの闘志に当てられたのか、ダルグエアも闘志が湧き上がってきて、ヤル気になっていた。

 周りはまた戦いが始まるのかと思って、避難をしようとしたがーーーー




「やめんか!!」




 その声にギクッとするダルグエア。声がした方向へ向いてみると、そこには黒豹の獣人。

 総部隊の隊長でダルグエアの上司になる人物がそこにいたのだった。


「メ、メルエダ……隊長?」

「遅いと思えば、ここで道草を食っているとはな…………、レイヴィン!!」

「はいぃぃぃぃぃ!!」


 咄嗟に立ち上がろうとする猫の獣人だったが、脚の骨が折れているのを忘れていた。凄さまじい痛みに転げ回ることになる。


「情けないぞ。隊長の1人として、部隊を全滅させられてしまうなんて」

「す、すいません……」

「し、しょうがないと思うぞ? こいつらは強いからな「黙れ」…………」


 メルエダは一睨みでダルグエアを黙らせる。拳を受け止められていたホタルはその様子が可笑しく思い、闘志は鎮火していた。

 メルエダはダルグエアから視線を外し、ホタル達へ向けられる。


「この国から出て行け。私達は忙しいんだから、お前達に構っている暇はない」

「ダルグエアは構ってきたが?」

「…………」


 ホタルの細やかな反論にメルエダはまたダルグエアへ一睨みをし、ダルグエアは眼を横へ逸らしていた。


「……言い直そう。この馬鹿以外は構っている暇はない!!」

「わざわざ言い直さなくてもいいじゃねぇか!? 忙しいって、あれの繁盛時期のことだろ?」

「わかっているなら黙れ。万一があったら、この国が滅ぶんだぞ!」

「む、国が滅ぶだと?」


 何故、繁盛時期があると国が滅ぶような事態になる? 魔物だとしても、獣人達があっさりと負けるとは思えなかった。戦ったことがあるホタルにしたら、獣人達は下手な兵士より強いとわかっているからだ。


「その話を詳しく聞かせろよ」

「お、興味があるんだ?」

「ダルグエア!」

「いいじゃねぇ……そうだ! こいつらにも手伝って貰おうぜ!!」

「はぁっ!?」


 ホタル達に手伝って貰おうと言い出すダルグエアに、目を見開くメルエダ。ホタルは何のことかわからないので、拳を降ろして説明を求めた。


「手伝って貰う? 自分の中で完結をせずに、詳細を説明しやがれ、この馬鹿が」

「おい!? お前までも言うのか!?」

「それはどうでもいいとして、国が滅ぶや手伝って貰おうとか意味がわかんねぇよ」


 ダルグエアはやれやれと言いつつ、説明を始めようとしたが、メルエダに止められる。


「やめろ、こいつらには関係ないだろ?」

「いいじゃねぇか。レイヴィン隊が全滅してんだから、その補充は必要だろ? レイヴィン隊より強いこいつらならアレが来ても万一は無くなる」

「…………」


 少し考え込み、レイヴィン隊が戦えないのは痛手だ。いや、戦力的には問題はないが、万一に入り込まれたら被害が大きくなるのは必然。その可能性を少しでも潰すためなら…………




「私達が決めることではない。王に進言して聞くべきだ」

「それもそうだな~」




 ホタル達は内容を詳しく知らないまま、いきなり王へ会うことになるのだった…………













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