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100.波乱

はい、続きです!

もう騒ぎを起こしてしまうホタル!!

 


 ホタルが焼き鳥を買った屋台に向かって、怒鳴る豚の獣人とその後ろで黙って立つ馬の獣人。

 この2人は屋台の取り立てをしに来たようで、熊の獣人が驚いた様子のまま、対応をしていた。


「待ってくださいよ! 締め切りがまだ1週間もあるのではないですか!?」

「そんなの、関係ないブビー。この私が決めることだ!! まさか、逆らうつもりか? 逆らうなら…………、わかっているよな?」


 後ろでは縦長の顔をした馬の獣人が関節を鳴らして、準備は出来ていると知らせていた。こんな顔だが、元はCランクの冒険者だった者である。熊の獣人は挑んでも、確実に勝ち目はない。それどころか、目の前にいる豚の獣人に逆らうことが出来ない。

 トール・アディスは4つの領地に分かれており、統治をする者が4人もいて、その上に王が1人。

 そういう政治になっており、目の前にいる豚の獣人も統治をする権利を持っているその1人だ。

 その豚が、期限にもなってないのに、急に土地代を払えと言ってきたのだ。


「なんで、急に払えと言うのですか? 一週間後なら一括で払えます」

「そんなの知らないブビー。払えないなら、屋台と全財産を置いて、私の土地から出て行け」

「そんな!? 屋台だけは!!」


 屋台は長年に渡って使ってきた。全財産を払うだけならともかく、屋台までも奪われたら、仕事が出来なくなる。


「ブビー、屋台は足りない分の代わりだ!! 嫌とは言わせんぞ!!」

「うぅっ…………」


 熊の獣人は元から逆らうことが出来ない。周りの人も理不尽な状況から助けたいと思っても、出来ない。睨まれたくはないからだ。

 逆らうと、後ろにいる馬の獣人に痛めつけられる。大人しく全てを差し出せば、命だけは助かる。その後は何も無い状態で生きることになるが…………


 涙を飲み込み、全てを差し出そうとする熊の獣人だったが、それを止める者がいた。




「おい、オーク」




 ピタッ…………




 ホタルが放った言葉に周りの人々が固まる。言われた本人も何を言われたのか、すぐに理解出来てなかった。まさか、この国で最も偉い人物である自分にあんな言葉を言われるとは思わないだろう。聞き間違いかと思っていたが…………




「聞こえてんだろ、脂っこいオーク!」




 聞き間違いじゃなかった。

 まさか、この自分を魔物のオークと言い放つ輩がいるとは思わなかったが、間違いなく聞こえた。

 豚の獣人は顔を赤くし、青筋を浮かべてホタルへ眼を向けた。


「貴様!! この私にオークだとーーーー人間だと?」


 ホタルの存在をたった今に知った豚の獣人はホタルが獣人ではなく、人間だったことに驚いていた。何故、人間がここにいるのかも気になったが、それよりもその言葉が許せなかった。


「クズ人間が、ここにいるか知らんが…………、私のことを知らないとは言わせんぞ!! このイグル様をなぁぁぁぁぁ!!」

「知らねーよ、それよりも唾を飛ばすな。口臭も臭えよ、オーク」


 ホタルは鼻を摘みながら、豚の獣人であるイグルを馬鹿にするような言葉を吐き出す。

 イグルは怒りを溜まりに溜まるが、一周したように少しは冷静を取り戻した。


「こ、このガキが…………、バドム。やれ」

「御意に」


 バドムと呼ばれた馬の獣人が前に出る。元はCランクの冒険者で、自分自身の強さに自信を持っているような振る舞いだった。

 すぐに戦いが始まると思えば、バドムから話かけていた。


「排除せよの命令ですが、ここで暴れるには人が集まりすぎています。なので、この戦いは決闘ということにして、そこの広場で決着を付きませんか?」

「バドム! そんな面倒なことをせずに、さっさとやればいいだけだろ!!」

「お言葉ですが、イグル様。この者は数秒で終わらせるのは難しいです。数秒で終わることが出来るなら、このままでも良かったのですが……」

「なにぃ?」


 バドムがそんなことを言うとは、目の前の子供が強いと認めているような物だ。イグルは信じられなかったが、数秒で事を終わらせることが出来ず、長引くと私闘が起こったことになり、後が面倒だ。

 だから、決闘という形にして、周りの人々を巻き込まないようにすれば、話もすぐに片付くと考えた。


「……わかった、さっさと行け!」

「はっ」

「ねぇ、あんたはなんでその豚に従ってんの? 礼儀もあるし、周りの事を考えているし」


 ホタルにはバドムが豚に従っていることに不思議だった。聞いてみたが、バドムは何も言わずに広場へ向かっていく。それにイグルもホタルを一睨みしてからついて行く。

 ホタルは話が少し大きくなったなーと思いながら、バドムが向かった広場へ脚を向けようとしたら、熊の獣人が声を掛けてきた。




「……すまない。私のために動いたのだろう?」

「あん? ただ、あの豚が気に入らないと思っただけだ」

「そうか……」

「…………まぁ、美味かった焼き鳥がもう食べられないのは勿体無いとも思ったがなーーーー」


 話を切り、歩き出していく。後ろから頭を下げてお礼を言う熊の獣人だったが、ホタルは気に留めてなかった。

 ホタルはあのオークをどう調理してやろうかと、考えていた。


「ホタル様、大丈夫なんですか? あ、勝敗のことではなくて……」


 アルエルが心配しているのは、この悶着で目的を達成出来ないのでは? ということだ。

 その答えは、眼を向けるだけだったが、アルエルはあっと気付いて、納得したのだった。


「失礼しました」

「わかってくれて、嬉しいよ」

「なにが~?」


 エルメスだけはわからなかった。エルメスにはアルエルが後から教えてやればいいとして、ホタルは戦う相手となるバドムへ向き合う。


「では、お互いは武器だけで魔法は無しでいいですか?」

「当たり前だろうな。この場所で魔法をぶっ放つ奴はいないだろ」


 広場に移動したといえ、周りには観客がいて、装飾もある。ホタルは関係ない者を巻き込みたいとまでは思ってないので、その提案に了承する。


「では、始めましょ…………あれ、武器は?」

「あ? 俺はいつでも無手だ」


 バドムは短剣を2本抜いたが、ホタルが何も武器を持たないことに気付いた。

 少し考えて、バドムは短剣を戻して無手で構えた。


「いいのか? 別に武器を使っても文句は言わないぞ?」

「いえ、私はフェアに行きたいので。それに、無手でも結構強いので問題はありません」

「そうか、前座を楽しませて貰うぞ」

「前座……?」


 前座の意味がわからなかったが、ホタルが先に動き出していたのでバドムも口を閉ざして、集中し始めた。

 波乱から始まった、獣人との戦い。ホタルは獣人と戦うのは2回目だが、油断は出来ない。

 もし、ダルグエアのような強さを持っているなら、油断なんてしてはいられない。ステータスも見たが、名前とレベルとHPしか見れなかった。

 つまり、強いのは間違いはない。だが、レベルとHPはダルグエアよりも低かった。




 この前座に勝てないなら、ダルグエアにも勝てないだろうな。

 待っていろ、必ず一発は返してやるからよ!!






 ホタルは気合十分でバドムへ向かっていくのだったーーーー









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