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98.その後の事。

はい、続きをどうぞ!

 


 狼の獣人のこと、ダルグエアは自分の国へ戻ってきていた。応援を要請に国へ帰って……………………ではなく、上司へ報告をしていた。だが、その報告の内容はーーーー




「報告だ。領地へ侵入した奴らは放っても良し、ただの散歩らしい」

「…………ふざけているのか?」


 報告を受けているのは、ダルグエアの上司である黒豹の獣人。ダルグエアの上司は女性の隊長であり、ダルグエアからの報告に頭を痛そうに抱えていた。


「詳細に説明しろと…………いつも言っているだろ!!」


 バン! と机を叩くが、ダルグエアは欠伸をしながら適当に答えていた。


「フワァ~、詳細か。魔人が2人、エルフが1人の三人組だった。魔人の1人からは人間の匂いを感じたが、まぁ、魔人だろうな」

「は? 適当に言うんじゃない!! バレバレな嘘を付いて、報告を怠らおうとするな!!」


 立ち上がって、机の上にあった分厚い本を投げようとするが…………




「いやいや、マジなんだけど!? 分厚い本を持った手を降ろせよ!!」

「…………」




 女性はダルグエアが本気で弁解しているのがわかったのか、疑わしそうな眼でダルグエアを睨んでいた。

 魔人とエルフが組んで、獣人の領地へ攻めてくる噂は一つも聞いたことがないし、それどころか魔人が他の種族と組むのは今までの歴史内では聞いたことがない。戯言だと言い放つのは簡単だが、ダルグエアが一度は見逃していることに気に掛かったのだ。


「……お前は、一度は会って戦ったのだろ? というか、大人しく戦わずに報告へ来るとは思ってないがな」

「ひでぇな、まぁ。間違ってはないがな」


 ダルグエアは今まで、侵入者に出会ったら必ず、戦いを挑んでいた。そして、勝って捕まえてから報告してきたのだ。

 だが、そのダルグエアが手ぶらで侵入者のことを報告してきた。つまり、どういう理由があってのことか、見逃しているということ。


「正直に言え、お前は負けて逃げ出したのか?」

「んなわけねぇだろ!? 俺は、この通りに無傷で帰ってきたんだぜ!?」

「……なら、何故捕まえなかった?」

「だからよ、捕まえるには値はしないと思ったからだ」

「嘘だな」


 女性は知っている。ダルグエアが嘘を吐く時、眉が一瞬だけ下がることを。何故、ばれたのかとダルグエアは後ろへ一歩だけ下がってしまう。


 その動きが確定の証拠になっていることに気付いてないのかね?

 まぁ、そこはダルグエアの良い馬鹿な所だしな。


 良い馬鹿とは、褒めているのか貶しているか。女性にしたら、褒めているつもりだが。




「…………はぁ、国に被害がないならいい。で、奴らはここに来そうか?」

「いや、来ないだろうな。ただの警備員として、獣人の力を見せつけたし、向こうもここへ来る予定ではなかったみたいだしな」

「はっ、お前がただの警備員というナリじゃないだろ。ダルグエア副隊長・・・?」

「副隊長か、メルエダ隊長から、その言葉を聞くとは思わなかったな」

「ちゃんと、呼ばれて欲しいならキチンと仕事をしろ。ダルグエア!」

「資料を読む仕事はお断りだッ!!」

「貴様! 逃げるな!!」


 ダルグエア副隊長が逃げ出し、メルエダ隊長がそれを追い掛ける。この風景は、獣人の兵士にしたら、いつものことである。「またダルグエア副隊長が何かしたのかぁ」と呆れるような溜息も聞こえてくるのだった。

 そこそこ平和な獣人の国だが、ホタル達は今、何をしているのかは…………






 ーーーーーーーーーーーーーーーー







「え、マジなんですか!?」

「ああ」


 さっきまで気絶していたアルエルだったが目を覚ました後に、ホタルから話を聞かされて、驚愕していた。その話とは…………




「獣人の国へ向かうって、本気なんですか!?」

「そうだと言っているだろ。ちょっと、アイツにお返しをするだけで危険は…………うん、返してやらないと気が済まん!!」

「危険がありまくりじゃないですか!? あの狼はただの警備員だと言っていませんでしたか? アレが、ゴロゴロといるような国は危険ですよ!!」


 アルエルはホタルが強いのは知っているが、ダルグエアのような強い獣人が沢山いたら、ホタルでも危険だと思っていた。確かに、ダルグエアがホタルを殴ったことに怒りを覚えるが、それよりもホタルが死地にしか思えないような場所へ行かせたくはなかった。


「大丈夫だ。ダルグエアが去ってから何も音沙汰がないのは、こっちに気をかけるのは無駄だと思っているかもな」


 望遠で周りを見回すが、獣人1人の姿が見当たらない。つまり、放って置かれている可能性が高い。このまま獣人の領地から出ようとしても、獣人は見逃すだろう。

 だが、ホタルはあえて自分からそこへ行こうと言っているのだ。




 その目的は、ダルグエアを殴るためにだけ。




 アルエルは死地へ向かう危険にリスクとリターンが割が合わないと感じていた。だが、エルメスはホタルの案に賛成のようだった。


「あの狼を殴りに行くの? 私も一緒に行くのー!!」

「エルメスはわかっているな。アルエルは……」

「あーもう!! わかりましたよ、私も行きます。ホタルから離れるのはありえませんから!!」

「よし、アルエルもそう言ってくれると信じていたぞ」


 アルエルは元より、ホタルについて行くと決めた。危険だからといって、ホタルと一緒にいないのはありえない。

 いつでも一緒にいるのは、この私なんだから! と言うように、獣人の国がある方向へ向かって歩き出す。

 そのアルエルの姿にホタルは苦笑しつつ、脚を動かしていく。




「ーーーーさぁ、獣人の国を潰しに行くぞ!!」

「目的が違いますよね!?」

「さんせーい!」

「エルメスも冗談に乗らないの!!」


 ホタルが言ったことは、冗談であったが、ダルグエアを殴りに行くのは獣人の国に滞在する兵士へ喧嘩を売るのと違いがないので、国と相手にするのと余り変わらないのかもしれない。

 なのに、ホタルは獣人の国へ行くことに恐れは無かった。むしろ、必ずお返しをしてやると、ヤル気満々であった…………







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