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【仕組まれた命令書 】

┌─────────────┐

│             │

│    †命令書†    │

│             │

│             │

│             │

│             │

│ ロブロウの内部調査補助 │

│ 兼大農家グランドール・ │

│ マクガフィンの補助を  │

│ する事を『ウサギの賢者』│

│ に命ずる。       │

│             │

│             │

│             │

│  セリサンセウム国   │

│             │

│国王 ダガー・サンフラワー│

│             │

│             │

│※決定事項だから、変更は │

│ 不可能です。      │

│             │

│  指令書・企画責任者  │

│             │

│ アルセン・パドリック中将│

│             │

└─────────────┘



「賢者殿、すっごい面白い顔してるにゃ~」

笑顔でそう言ったのは、王族護衛騎士隊員、ライヴ・ティンパニーだった。

ウサギの賢者の住む魔法屋敷がある『鎮守の森』に、ライヴ・ティンパニーと相棒パートナーである王族護衛騎士のリコリス・ラベルが、2日連続で訪れたのは内密ながらも、国王陛下直々の指令書があったからであった。


そしてその指令書を受け取り、読み終えた瞬間のウサギの賢者の顔の感想が、冒頭のライの言葉である。


「賢者さまには、細剣で貫かれるより、こういう方が効果的なんですね。すごいです」

リリィが真面目に感心して、来客である2人の騎士に紅茶を出した。


ちなみにウサギの賢者がどんな顔をしているかというと。

ウサギの小さな鼻の頭に寄せられるだけのシワを寄せて、人間でいえば思いっきり、目付きを悪くしてしかめ面をしている様子になる。

しかし、そこは如何せん"ウサギ"なので、どうにも愛嬌のある顔となってしまう。ウサギの賢者が大好きなリリィなどは密かに(賢者さま、可愛いな)と思う有り様だった。


このウサギの賢者の顔に、"ハラハラ"としていたのは護衛騎士、着任1ヶ月を迎えた、素直なアルス・トラッド(17才)だけだった。


「ぬぅ、久しぶりにアルセンにやられたねぇ」

ウサギの賢者はそう言うと、特別拵えのプニプニの肉球がついたフワフワな手で、鼻の辺りに出来たシワを伸ばすように何度も撫でた。

そんな賢者の言葉や様子を眺めて"そこまで怒ってもいない"と分かると、アルスはやっと安堵する。


「アルセン様も、こんな手紙というか指令書を書くことがあるんですね」

ホッとしたついでに、アルスはアルセンからの指令書の感想を述べた。

それにはリコリス、愛称リコが品の良い笑みで応えた。


「親しい間柄なら、それなりにユニークな書簡のやりとりはよくありますよ。

ただアルセン様は教育するアルス君がいる手前で、そういった事は控えていたのかもしれませんね」

それにはライが比較的平らな胸の前で腕を組み、うんうんと頷いた。


「ワチシもリコにゃんにお手紙する時は、暗号使ったりするにゃ~」

「わあ、いいですねぇ!。それ、とっても楽しそうです!」


リリィが本気で羨ましがっているのが判る、ウサギの賢者は顔には出さないが、少しだけ複雑な気持ちとなっていた。

アルスも、同僚が心から羨んでいるのを何となく察する。

本来なら見習い巫女として、城下の教会でリリィは同年代の子ども達とわいわい楽しくやっていてもおかしくはない。

しかし、諸事情があってウサギの賢者が保護者となり、本人は無自覚だが『匿われている』事になっている。


(でも、リリィも、"友だち"はやっぱり欲しいよね)

指令書の事なんて、すっかり"心の棚の隅に追いやって"しまう賢者であった。

そんなウサギの賢者を現実に戻したのは、心配している相手のリリィで、


「じゃあ、賢者さまはグランドールさまとご一緒にロブロウという領地に赴かれるのですか?」

少々難しい言葉を使い、行われたリリィの質問には、顔を見合わせる事となる。


「にゃ~、賢者殿、ウサギである事をオープンにすることにしたのかにゃ~?」

ライが単刀直入に尋ねた。


「う~ん。ワシ、そんな気持ちは微塵もないんだけどなぁ」

この答えに、リコが意見をだす。


「一応ロブロウ側の裏をかいて、表向きはグランドール様。

裏をウサギの賢者殿に監査させるつもりでしょうから、『ウサギ』という事がバレない方法ですれば、良いことなのでは?」

「しかし調べるのはともかくとして。というか、ウサギの姿をバレないように調べるのはどうやってしたもんかのう」


ウサギの賢者がそう応えると、アルス、リリィ、ライ、リコは

「難しいですね」

「どうすればいいかな」

「そうだにゃ~」

「禁術を使う賢者を、大っぴらにするわけにもいかないでしょうし」

と、テーブルをを"一回り"するようにして呟いた。


不意に思いついた事を、アルスはウサギの賢者に質問する。


「自分は魔法が苦手でよくわからないんですが、変身の魔法とかで人の姿に戻ったり、変身出来ないんですか?」

「魔法で、"変身"は出来ない事じゃないんだけどね」

ウサギの賢者が、王族護衛騎士とリリィをチラッと見詰めた。

リコとライは顔を見合わせ苦笑し、リリィはキョトンとしている。


「魔法の変装は"わかる人にはわかる"んだよ。特に魔法に携わっている人なら、簡単に見破れる。

魔法で変装しても

『あっ、今日は魔法で変装なさっているんですね』

とあっさり見破るし、鋭い人だと、元の姿が見える方もいるからねぇ。ロブロウが閉鎖的な領地だとしても、魔法を断絶してるわけじゃない。きっと魔法での変装はバレるだろうねぇ」

ウサギの賢者がアルスにそう説明する。


ライが"名案を思いついた!"とのばかりの様子で、両手をパチンと合わせた。


「物理的に変装したなら、ばれにゃいんじゃないかにゃ~。"そのまま"で変装させてしまえば、いいんだにゃ~!」

「ウサギの賢者殿がそのまま姿で変装って――」

リコがそう呟やき、多少わざとらしく鼻と髭をヒクヒクさせているウサギの賢者を観察してから、()()()()()()()()()姿()をシミュレーションし終えてから、ライに微笑む。


「ライちゃん。耳が長いから、ウサギの賢者殿にカピバラの変装は無理よ」

と言って、アルスとリリィを愕然とさせた。

ライは口の形をそれこそ猫のように口角を上げて、てフッフッフッと笑う。


「いっとくけど、リコにゃんは至って真面目に言っているにゃ~」

ライが人差し指を、ピシリとアルスとリリィに向けて宣言した。

リコはリコで口元を両手で押さえたなら、白い肌を一気に真っ赤にして、自分の「天然」の発言に漸く気がついた。


「え、あの、その、えっと」

あたふたとするリコを見て、ウサギの賢者の御一行は

(可愛いのぅ)

(可愛いなぁ)

(可愛い!)

と感じて、温い微笑み浮かべ"理知的美人騎士"から、"天然ボケもこなす可愛いお姉さん"とリコへの印象を変えていた。


「もう、ライちゃん。イジワルしないで!。賢者殿も、アルス君もリリィちゃんも、どうやって賢者殿が"ウサギの賢者"とばれないようにして、ロブロウに行くか考えましょう!」

リコが一生懸命に話を元に戻そうとしているので、皆素直に従って話を戻す事にした。


「――――で、ロブロウ側にはグランドールが『農業研修』で行くように伝えているんだよね?」

ウサギの賢者は確認するように尋ねると、リコがまだほんの少し赤い顔で、はい、と頷いた。


「向こうも単なる農業研修とは思ってはいないでしょうが、『大農家グランドール様を快く受け入れる』という返事は頂いております」        

「グランドール様が、普通に農業研修をしている間。ウサギの賢者殿が『処刑された貴族』に関して調査するのが、アルセン様の命令なんですよね?」

アルスが賢者に尋ねると、ウサギの小さな鼻に、再びシワを寄せながら頷いた。


「うん、まあそういう事何だろうけれど。アルセンは相変わらずワシに手厳しいなぁ」

「アルセン様は、賢者殿なら多少の無茶ぶりしても大丈夫という信頼をしてるにゃ~」

ライが笑いながら楽しそうに言とそれにはウサギの賢者も納得している様子だった。


「まあ、かわいい後輩から信頼されるのは、嫌じゃないけれどね。

アルセンはまず自分で考えて、無理な事は命令しないのはわかっているつもりだよ。

ただ時々、おっとろしい思考回路で、ワシでも予想外のとんでもない作戦を練るからなぁ」

そう言って少しだけ懐かしそうに"空"を見上げてから、自分の2人の部下達を眺めた。


「多分、今回はアルス君とリリィも連れていけ、って事なんだろう」

賢者のその言葉に、リリィは緑の瞳を輝かせた。


「私も行っていいんですか?!」

しかし、とても喜んでいるのを申し訳ないと言った感じで、上司は見詰め返していた。

ライがネコのように目をパチクリとして、ウサギの賢者とリリィを見比べる。


「にゃあ~、もしかして"ぬいぐるみ"で行けって事なのかにゃ?」

ライの言葉にアルスが、本日二度目の愕然を味わった。

「賢者殿を、()()()()()()()()()()って事ですか?!」

「ちょっと失礼しますね」

リコがそう言って、素早くウサギの賢者の両脇に手を突っ込んで、軽々と抱え上げる。


「私にしたら軽いですけれど―――。ギリギリ、リリィちゃんでも抱っこ出来るかしら」

「う―ん、キングス以外に抱っこされると、ちょいと複雑だねぇ」

ウサギの賢者は、お気に入りで仲良しの仕立屋の名前を出し、長い耳を曲げて、円らな目を細めて、本当に複雑な表情を浮かべた。


「にゃ―!キングス様も美人だけど、兵士募集ポスターのモデルに推薦されたリコにゃんに抱っこされてるんだから、有り難いと感じるべきにゃ―!」

美人に関しては"親友推し"のライが不満の声を出す。


「ポスターは、断りましたけどね。はい、リリィちゃん。賢者殿を抱っこしてみて」

ライの言葉をサラッと流して、リコはリリィに賢者を渡そうとする。


「え!、えええ!!」

リリィは慌てふためいて、一応同僚のアルスに救いを求めるように視線を向けた。


「いや、自分がウサギのぬぐるみを抱えている姿の方がおかしいから。それに、賢者殿はキングス様以外に抱っこされるのは、出来れば避けたいみたいだし」

アルスは会った事はないが、配属後に幾度となく名前を聞いている、賢者と同じく国最高峰で、どうやらとても親密な間柄らしい仕立屋の名前を出して遠慮する。


「それにリリィなら、似合うし大丈夫、とっても可愛いよ」

アルスは極めて真面目に、同僚に向かってそんな返答をした。


「そ、そういう事じゃなくて!」

リリィが言うと、ライがまだウサギの賢者を抱えたままになっているリコを見ながら

「リコにゃんも、ウサギのぬいぐるみは全然イケるにゃー」とまたしても対抗心を燃やしながら、意見を言う。


「可愛いとか、イケるとかじゃなくて()()()()()()()()()()私は心配しているんです!」

少女が両手を拳にして、叫ぶようにいうと、そこで騎士3人はハッとして気がついたようだが、特に態度は改めなかった。


「にゃ~、リコにゃんは賢者殿を抱っこする時ちゃんと『失礼します』って一言詫びているし、賢者殿は渋ったけど、拒絶まではなかったからそこまで失礼でもないにゃ~」

ライがあっけらかんとリリィに向かって言った。


「それでも、あのっ」

珍しくまだ、下を向いてまごまごしていたなら、リコが長いウサギの賢者の耳に、小さく素早い耳打ちをする。


「リリィ」

賢者が呼びかけると、漸く顔を上げた。


「これは"仕事"になるからちっとも遠慮はいらないよ。寧ろ抱っこして行動して貰わんと、ワシは人前では動けないからね。お願い出来るかな?」

「わかりました!。失礼します」

恐る恐る手を伸ばして、リコが賢者を抱えている部分に手を入れる。


「じゃあ、リリィちゃん、いいかしら?私は手を離すから、自分の力で賢者殿を支えてみてね」

リコが優しく語りかけるも、少女は緊張してカクカクと顔を縦にふるぐらいで余裕がないのがよくわかった。


「じゃあ、せーの」

そう言って一気に手を引き抜いた。


「うわっ」とよろめき、「よいしょっと!」

と、声を出してウサギの賢者が手を伸ばして、丁度、リリィの首にぶら下がった形となった。

軽くよろめきながらも、それから慌ててリリィも手を伸ばして、ウサギの賢者を「抱っこ」した。


「どう?リリィ?」

よろめく同僚を心配してアルスが声をかける。

「賢者さまは、も、モフモフでフワフワしてて暖かいです!」

緊張し過ぎた少女からの「ウサギの賢者の抱き心地」に関する感想に、アルスは苦笑し、ライはニャーと一言もらし、リコはウサギの賢者を抱きしめなかった事を密かに後悔した。


「う~ん。リリィが動き回るのには、ワシ、重たいみたいだねぇ」

抱えられているウサギの賢者自身が、そう自分で判断して指をパチリと弾く。


「うわあ!?」

リリィが今度は驚きの声をあげる。


「どうだい、軽くなったろう」

賢者からの質問に、リリィは再び激しく頭を降った。


「凄く軽くなりました。ホントに綿だけのぬいぐるみみたいです」

ウサギの賢者を抱えたまま、リリィはジャンプしたりターンしたりしてもまだ不思議そうにしている。


「どんな仕組みだにゃ?」

ライが僅かに瞳を鋭くして、賢者に尋ねる。


「厳密に言えば違うんだけど、体の中の素材を『ゴム』みたいなのから、比較的軽いに『綿』らしき物に変えたんだよ。体は軽くはなるんだけど、筋肉の役割を果たすゴム素材を減らしたから、『瞬発力』が抜群に落ちてしまうねぇ」

ライはウサギの賢者からの「回答」を聞いて、抱っこしているリリィの側に来た。


「リリィちゃん、ちょっと賢者殿かりるにゃ」

「キングスとリリィ以外はお断りしたいんだけど……」

ウサギの賢者の言葉空しく、リリィからヒョイと抱え上げた。


「にゃ~♪どれどれ」

そう言ってウサギの賢者の体を弄くる。


「チョイとくすぐったいわい!」

脇や足先を揉まれたりして、賢者は身をよじって笑っている。


「ライちゃん、失礼だから止めなさい」

「わかったニャー」

リコから言われてライは弄くるのを止めて、ウサギの賢者を膝上に乗せて座った。


「―――でも指先や足先はまだゴムな感じだにゃ~」

「あひゃひゃ」

ライがウサギの賢者の指先や足先を確認するように揉むと、再びくすぐったくて笑い出した。


「もう、ライさん止めてよ~」

そう言ってウサギの賢者はライの膝から飛び降りて、いつもよりは機敏ではない動きでアルスの元へ行き、ジャンプしてその膝に乗って"避難"した。


「うわっ、ホントに軽くなっちゃいましたね。自分は前のウサギの賢者殿の重さは知りませんが」

思わずアルスもウサギの賢者を抱え上げてみている。


「一応短剣やナイフを投げることが出来るくらいの力は残してるよ。でも戦力はかなり落ちたね」

親友への()()()を諦めつつ、併せて「力」が落ちた事に、賢者は頭を悩ましている様子だった。


「ロブロウで身の危険が迫る事態がないとも言えないしなぁ。アルス君は、多分グランドールの従者として行動するから、随時リリィの側にいられるというわけではないだろうから」

そういう賢者の話を聞いて、リリィがきょとんとしてから

「思えば、私はどういった"立場"でこの調査に参加する事になっているんでしょうか?」

と尋ねた。


リコが形のよい人差し指を顎にあてて思案して、

「多分グランドール様の若い農家弟子の社会科見学みたいな流れのオマケで、リリィちゃんかなと」

と多少言葉を濁らせながら、言う。


「にゃ~、ストレートに『ワガママ言ってついてきた従者のアルス・トラッドの妹』みたいなポジションの方がしっくりくるかもにゃ~」

ライのその明朗な言葉に、明らかに、基本的に"良い子"である少女の顔は渋る。


「リリィ、これも仕事だよ」

ウサギの賢者がアルスの膝の上で、やんわりと言った。


「今回の仕事はあくまでも『貴族の処刑』の裏側を調べる事だ。

自分がどうこう思われる事をこだわりたいなら、今回はキングスは出張中だから、バロータさんの所で留守番をしていても構わないよ」

ウサギの賢者の言い方は優しいが、力強い。


「る、留守番ですか?」

リリィの瞳が酷く怯えた色になったのに、アルスは気がついて慌てた。

そんな慌てたアルスをウサギの賢者は、ニコニコしながら観察して、怯え慌てる2人の部下に向かって伝える。


「アルス君やリリィはワシの護衛や世話が仕事となっているだろうが、国王から命ぜられたのならワシはこういった事を『仕事』としてこなす。

もし同行するなら、それなりに行動を共にする者に意向を汲んで貰わなければばらない。

ただ責任者としては、その意向を、自分の部下が受け入れても受け入れなくても、この"部隊"は構わないという気持ちだよ。

だから『ワガママな妹』もやりたくないなら、本当にやらなくても構わないよ」

その言葉でリリィの怯えの色は少しおさまったように見えたが、完璧に消えてはいない。


その表情にウサギの賢者は

(さて、困ったねぇ…)

といった具合で耳をピピッと動かし、アルスの顎に当たってしまった。


「おおっと、ゴメンよ、アルス君。さて、これ以上は言葉で言っても伝わり難いかなぁ」

アルスは賢者の耳がかすったを場所を少し掻きながら、


「自分は『ワガママな娘』のリリィも見てみたい気もしますけれどね。

こんな事がないと、多分ワガママしてくれませんから」

と、何気なしに言う。


そんな一言で、リリィからは怯えの色が軽く払拭された。

「ワガママを言ったら嫌われるとか、ないですか?」

リリィが実に切実そうに、アルスやリコやライ、そしてウサギの賢者に対して尋ねた。


「にゃ~、少なくともここにいる人や、命令に参加する人達は『ワガママな妹』が仕事とわかっているにゃ。リリィちゃんを嫌うハズないにゃ~」

その話を聞いて、少女は意を決した。


「なら、私、『ワガママな妹』をやります。賢者さまとアルスくんの側にいたいです」

力強くそう言いきり、頷く。


「ん、リリィが納得したならそれでいいね」

ウサギの賢者も、リリィに迷いがなくなった事に安心していた。


「でも、いつも強気なリリィちゃんがウサギのぬいぐるみを抱きしめて、

『お兄さんから離れたくない!』

ってアルス君の服の裾を涙目で引っ張っているのって、すっごく可愛いと私は思います」

リコがそんな事を言って瞳を輝かせながら、賢者御一行を眺める。


「にゃ~♪それスゴくわかるにゃ ~♪」

若い女性騎士達が、"萌え上がっている"のにリリィは赤面する。


「やめて下さい~!」

「にゃ~♪」

リリィがそう言っても、ライはわざとリコの服の裾を引っ張ったりしてみてからかうので、追っかけ始めた。


「これが()()()んですかねぇ」

()()という言葉の使い方が分からないアルスは、ふざけあっているリリィとライを眺めながめ、ポツリと言う。


「ワシも若人の言葉や感覚に、追いつけない時があるよ」

アルスの膝の上に乗ったまま、ほのぼのと眺めている。

―――眺めながら、賢者はリコが自分を見つめているのに気がついた。


(何か()()()()()()()()()()()()()()()かな?)

ウサギの賢者が視線で問いかけると、リコはゆっくり瞼を閉じて、『肯定』の意味を現した。


「さて、ワシはちょっと体の微調整をしてくるよ。鬼ごっこするのは構わないが、ケガしないようにね~」

そう言ってアルスの膝から飛び降りた。


「私はウサギの賢者殿から、命令書を確認したサインを頂いてきます。アルス君、2人をよろしくね」

そう言って、ウサギの賢者とリコは魔法屋敷の中へと消えて行った。


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