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名もなきエースたちの戦記  作者: 飛桜京
本編 戦争前半
9/19

2027年 日本 青森県八戸市


広島駅で新幹線を降り、乗り換えた快速で呉市に到着した。だが、東京駅についたのが午後四時で、呉に到着したのは午後八時過ぎ。流石にこんな時間に行くのはまずいと思い、近くの旅館をとって泊まった。


次の日、私は朝一番のバスで呉軍港に向かった。だが、朝霞で山田中佐に教えてもらった彼は、なんと昨夜の終電で田舎に帰ってしまったそうだ。慌てて広島駅からバスで広島区空港へ。そこから飛行機に乗って仙台。仙台空港駅から東北新幹線に乗り換えて八戸へと向かう。彼は夜行列車でのんびりと帰っているらしい。うまくいけば追いつくはずだ。


雪の降り積もる八戸駅で新幹線を降りた私は、呉軍港で渡された彼の写真を見ながら改札を出る。するとローカル線の改札で若い女性と話している写真の特徴と合致した初老の男性がいた。浅黒い肌に藍色のロングコート、コートを着ていても分かる筋肉質な体付き、撫で付けられた白い髪。おそらく彼かも知れない。


「すみません、あの……」

「うむん? 旅行者かね?」

「いえ、あの、呉軍港で八戸にあなたが向かったと聞きましたので」

「ああ、ブルーバードについて探っているという雑誌の人か。話には聞いているよ。それで、わざわざ退役軍人の私に話を聞きに来たのかい?」

「ええ。まさか入れ違いになってしまうとは思いませんでしたが」

「む、済まないね。情報が伝わるのが遅かったようだ。おっと自己紹介をしよう。と言いたいところなのだが、私は名前を明かすのが嫌いでね。『信濃艦長』とでも呼んでくれ」


彼は後ろにいる女性を紹介した。彼女は信濃艦長とは対照的に白い肌に手入れされた長く美しい黒髪。華奢な体付きだが、体の均整は取れている。大和撫子の鑑だといえるだろう。


「彼女はかつてブルーバード四番機の専属整備員だった森井深雪少尉だ。彼女もあの戦争を最前線で彼らとともに見続けていた者の一人だ。これもなにかの縁。彼女にも話を聞くといい」

「こんにちは。森井深雪といいます。あまり深いことは話せませんがよろしくお願いしますね?」

「あ、よろしくお願いします」


三人の挨拶がすんだので、バスに乗って信濃艦長の実家に向かう。そこは小さな漁師の小屋だった。ガタイが良く、日焼けをしている彼によく似合う場所だ。


「今は父親が介護施設にいているせいもあって何もないうえに埃っぽいが、まあゆっくりしてくれ」

「「ありがとうございます」」


囲炉裏の周りに敷かれた座布団に座る。


「さて。で、どこまで話は聞いたのかな?」

「九州開放作戦までです。できれば、日本海海戦についてを」

「ふむん。そこまで聞いていたんならここから終盤まで一気に話せるな。なあ、森君」

「そうですね。終戦のあたりまでは話せるでしょう」


■■■


2016年 日本海 大日本帝国海軍戦艦長門


CICが巣をつつかれた蜂の巣のような忙しくなる。


「弾道ミサイルだ! 発射位置は、平壌! 着弾予測地点は東京です!」

「迎撃するぞ! 弾道ミサイル迎撃準備! SM-3発射用意!」

「了解! SM-3、スタンバイ!」


まだ技術的に未完成な部分もあるために迎撃は難しいかも知れない。だが、長門の艦長はいけると踏んだ。


「発射準備よし!」

「発射を許可する!」

「発射!」


砲雷長が叫んだ。第三主砲塔の代わりに搭載された後部甲板のVLSセルが開き、スタンダートミサイルが空へ飛び立った。


『こちら大和。SM-3を発射したようだが何があった?』

「こちら長門。朝鮮がミサイルを発射した。もしかしたらこれに合わせて中露もミサイルを撃ってくる可能性がある。朝鮮のへっぽこミサイルならまだしも、ICBMなんてこられちゃたまらない。救援に来てくれるのなら急いでくれ!」

『了解した。我々第二艦隊は今関門海峡を抜けたところだ。もうしばらくかかる。代わりにこちらの艦載機を送るからそれまで持ちこたえてくれ!』

「了解。急いでくれよ!」



同日 関門海峡 大日本帝国海軍空母赤城


「ブルーバード、もう行けるな?」

「ああ。隊長達はもう出たよな?」

「ああ。さっきチヌークが二人を岐阜に運んだ。そのまま来るらしい」

「了解。なら、ブルーバード2、発艦する!」

「ブルーバード3も発艦します!」


カタパルトに乗せられたF-15とJAS-39が急加速とともに発艦した。



同日 日本 大日本帝国空軍岐阜基地航空技術研究所


「どうせ後で追い抜かれるでしょうし俺らは先に行きます」

「ああ、助かった」

「大尉、終わったら森井のところに行ってあげてくださいよ? マジであいつの部屋のところだけカビが生えそうなんで」

「………………。お、おお。そうするよ」

「そんじゃ、ご武運を」

「ああ。お前らも墜ちるなよ」


飛び立つCH-47を見送り、用意された新しい機体の元へ向かう。格納庫の中に実験用のF-4やF-2などが並んでいる。その中に洋上迷彩を施された異形かつ巨大な戦闘機が二機。Mig-1.44とSu-47だ。研究員らしき男が二人に話しかけてきた。


「ああ、あなた方がブルーバードの一番機と四番機ですね? 準備できていますよ。まさかこんなところで幻の二機を見るとは思ってませんでしたよ」

「まあ確かに。俺もそう思う」

「自分も初めて見たね。面白い形状をしている」

「もう出撃することが可能ですが、どうします?」

「する。機体の改造箇所等は無線で随時教えてくれ。あまり時間がない」

「わかりました。ではお乗りください」


トーイングカーに牽引されながら二人は無線で機体の情報を教えられていく。


『ということです。大丈夫ですか?』

「ああ。ありがとう。ここまでわかればあとは自分でできるよ。ということでブラック君、お先に」

「了解。すぐ追いつきます」

「で、あなたの機体はTVC(推力偏向システム)をつけてあるので、より機動性が上がっていますよ」

「さっすが。岐阜に任せて正解だったな。またよろしく頼むぜ」

『今後ともご贔屓によろしくお願いしますよ、中野の旦那』

「俺は中野って名前じゃねえけどな」

『けど、名前が分からないんじゃしょうがないんですよ。あなたは中野学校出身の元陸軍アグレッサー部隊のエース以外に何も情報がないんですから』

「意外と知ってるじゃねえか……。情報操作で出来る限り俺の情報は消してるはずなんだがな。まあ、それでいいや。よし、行ってくる」

『了解。お気をつけて』


ブルーの乗るMig-1.44を追いかけて青い犬鷲(ビェールクト)が出撃した。



同日 日本海


ミサイルを迎撃することに成功した戦艦長門だったが、ここで更に弾道ミサイルが発射されたことを感知した。


「日本海にいる全軍に通達する! 弾道ミサイルだ! 迎撃してくれ!」

『こちらアーレイバーク。迎撃開始!』

『こちら金剛。航空機だ! 各艦、ミサイルだけに気を取られるな!』

『こちら三〇六飛行隊! 敵航空戦力は航空隊に任せろ!』


無線が入り乱れている。


F-15が敵のSu-27を追う。その後ろにMig-29とF-35が付いたがその後ろにJ-10が、またその後ろにラファール戦闘機が付いた。敵味方入り乱れての大空戦が起こる。


「レッド! 後ろ!」

「ちっ!」

「援護するよ! FOX3!」


レッドを追っていたJ-11がホワイトの放ったミサイルによって爆発する。だが、敵も負けじと撃墜していく。一機こちらが撃墜すれば向こうも一機撃墜する。


「ダメだ、敵が多い!」

「うぅ、早く来てくれないかなあ」


急激なGがかかる機動を行いながら、二人は集合して撃墜されまいとワゴンホイールを行う。かなり原始的な戦法だが、この乱戦状態の中では割と使える。だが、いくら腕があっても今は敵の数が多い。なかなかきつい。二人ではワゴンホイールもワゴンホイールとは言えないような形なのだから。だが、そんな時に戦闘機の二機編隊が襲来する。


「もう無理だよお!」

『そんなことで根を上げてどうするんだい?』

『せっかく来てやったのにそのタイミングで言うなよ』

「隊長! ブラック!」


飛んできたのはMig-1.44とSu-47の実験機編隊。味方だ。


「悪いな。ようやく到着だ。ブルーバード4、交戦」

「ブルーバード1、同じく」


二機のステルス戦闘機はテスト飛行も兼ねて各々の目標に狙いを定める。


「ブラック、援護するよ!」

「頼むぞ」

「レッド君、援護を!」

「了解!」


Su-27を追い掛け回すブラックは、無線にも聞こえるほどの呟きをブツブツと漏らしていた。


「…………よくも………フランカー……俺の、…を……手前ら」

「ぶ、ブラック? どうしたの? 怖いよ」

「……フランカーは、俺の嫁だあああっ!! FOX3!」


急に怒り出したブラックは何やら訳のわからない言葉を叫びながらSu-27とそれに連なるJ-11などを執拗なまでに狙い続ける。


《只什么这是谁、为何瞄准Flanker!?(な、何なんだあれ! なんでフランカーだけを狙うんだ!?)》

「那是我的媳妇儿!(そいつは俺の嫁だ!)」

《哇!(うわあ!)》


予告も何もなしに撃たれてしまったJ-11に乗っていた哀れなパイロットはよくわからないまま撃墜されてしまった。



「ブルーバード1、FOX2!」

「すげえ。なんて機動だ。俺もロシアの機体に変えようかな……。いや、けど、俺はアメリカ人だ、アメリカ人としていいのかそれは?」

「早くしないと自分が全部撃墜してしまうよ?」

「あっ、それはダメっす!」


レッドの葛藤も知らずにブルーは淡々と敵を撃墜していく。


「援護します!」

「いや、大丈夫だよレッド君。このくらいなら自分ひとりでやれる」

「……? そうっすか。それならいいんすけどね? 珍しいっすね。隊長が援護を頼まないなんて」

「ま、まあね。今回はテストということも込めてこれがどれだけできるのかを試してみたいのさ」

「了解。何かありゃ言ってくださいよ」


ブルーの行動をなんとなく不審に思いつつもレッドは自分の獲物を探す。その時、高空にいたので背面になった時に見たものは、到着したばかりなのに炎上している赤城と艦首に穴があいたのか艦首から沈みかけている長門、まるでタイタニック号のように真っ二つに両断されてしまったタイコンデロガ級のアーティンタムとシャイロー。転覆している三隻の旅大(ルダ)型駆逐艦と飛行甲板が大破した空母遼寧。油が流れ出て炎が燃え広がり海が赤く染まる。退艦して救命艇に乗ったはいいものの炎に囲まれて動けない海軍の乗組員たちが敵味方問わず多くいた。大空でも、墜ちていく戦闘機が多い。だが、ベイルアウトしても炎の中に自分から突っ込んでしまう者が多く、更に海に落ちたパイロットのいない戦闘機の爆発で更に炎が燃え広がる。


「なんてこった。これじゃあ帰れねえ」


だが、泣き面に蜂とでも言うかのように飛行要塞が現れた。unknown2だ。unknown2から巣をつつかれた時の蜂のように飛び出して来たのはUAVらしき航空機。自分たちの巣を守るかのように大量に現れてunknown2を見えなくなるほどに覆い隠してしまった。レッドたちにブラックとホワイト、シャドウシーカー隊が合流する。


「無理ゲーじゃね?」

「なんて数だ」

「連合軍、詰んだな」

「なんかしらんけど、すげーなオイ」


シャドウシーカーは諦めたのか、達観したような感想を述べている。


「敵はレシプロ機のようだね」

「数は多いが速度は遅い。脅威になるのはあの機動性だな」

「おいおい、まさかあの中へ突っ込もうってのか? いくらなんでも無茶だ。奴らもミサイルくらいなら装備してるだろうし、なんたって無人機なんだから体当りすることだって考えねえといけねえんだぜ?」

「あんなの無理だよぅ」


ブルーバードは半分がやる気になった。だが、もう半分は突入を嫌がった。


「「行くぞ」」

「「ええー……」」

「「「「正気かブルーバード!?」」」」


反対意見は認めないと言うかのような二人の語調にレッドとホワイトは渋々従う。それをシャドウシーカーが見て驚愕した。


「さて、行こうか」

「蜂に刺されないように気をつけろよ」

「オオスズメバチ程度じゃすまねえケガになるよな」

「当たらないようにしないと」

「「マジかよこいつら。人間じゃねえ」」

「隊長、俺たちも行きましょうや。新参の傭兵部隊なんかにゃ負けてらんねえ」

「あんなもん当たらなきゃいいだけの話っしょ」

「わかったわかった、シャドウシーカー隊、ブルーバードに続け!」

「「「アイアイサー!」」」


八機の戦闘機がUAVが集まってできた蜂球のような黒い塊の中に鋭い機動で飛び込もうとするが、普通に考えれば自殺行為だ。破壊すれば破片が自機だけでなく味方の機体のエアインテークに吸い込まれて爆発してしまう可能性がある。迂闊な行動は取れない。ならば、破壊しなければいい。


ブラックはここは乱戦が得意である自分が道を開くべきだと考えた。翼を振って付いてくるように指示を出す。


相手はUAV。無人戦闘機だ。だが、絶対に操縦者がいるはず。あの要塞の中でコンピュータのモニターから見ている者がいるはずだ。そいつに恐怖を味あわせてやろう。ブラックは酸素が絶えず送り込まれているマスクの中で唇を潤すことも兼ねて舌なめずりした。


アフターバーナー点火。急加速で群れの中に突っ込む。敵編隊を引っ掻き回すことに慣れているブラックは大型であるSu-27よりもさらに大きなSu-47の巨体を活かして何度もバレルロールを行いながらドリルで道に穴を開けるかのように引っ掻き回す。人は急に目前に現れたものを反射で避けようとする。それを利用してやれば、道は自ずと拓け、ジェットによる乱気流でうまく動くこともできない。急にエンジンの回転数を落として敵の動きを乱し、また加速、急にコブラ機動を行うなど、むちゃくちゃな動きで敵を寄せ付けない。


「これなら俺たちも行けるぞ!」

「それっ! 突っ込め!」


傭兵だけでなく、何機かの正規兵の機体もUAVの群れの中に突っ込む。Su-27とF-22、F-2だ。機動性の高い戦闘機が一緒に突っ込んできた。


「早く止めないと、沈む!」


unknown2の攻撃が赤城と長門にとどめを刺した。日本の誇る巨艦二隻があっけなく沈んでいく。unknown2の攻撃時には機体下部のUAVがいなくなるので口を大きく開いたような姿になる。その隙を狙って翔鶴と瑞鶴から出撃したF/A-18が攻撃を仕掛けたが、攻撃速度の速さと装甲の硬さに阻まれてしまう。そして戻ってきたUAVによって撃墜されてしまった。上空から果敢に攻撃するもなすすべなく撃墜されてしまう攻撃機もいた。


「おい、ブルーバード4。どういうつもりだ?」

「UAVの射出口を破壊する。あそこからのUAVを止めればもう増えることはない。少なくともこの作戦の間はな」

「抜けたぞ! あそこだ!」


機体の後部にアリの巣のようなものがいくつかあってそこから一分おきぐらいに十機のUAVが出ていた。


「あれか」

「もう撃墜してもいいよな?」

「お好きに」

「よっしゃあ! ブルーバード2、FOX3!」


レッドが放ったミサイルは射出口から出てきたばかりのUAVに命中。爆発したUAVが射出口を塞ぎ、爆風が内部爆発を引き起こした。


「まずい! 爆風がこっちへ来る! 全機上に逃げるんだっ!」


飛行要塞が爆発する。爆炎は内部を侵食し続け、排熱口から炎が吹き出した。だが、unknown2が最後のあがきを見せる。機体上部のハッチから炎とともに吹き出したのは三発のミサイル。


『ミサイルだ! 全軍、退避っ!』

「対艦ミサイルでも対空ミサイルでもない、……。あれは、まさかMIRV(Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle:多弾頭独立目標再突入ミサイル)か!?」


おそらく狙いは日米主要都市と日本海にいる敵味方を問わない全ての部隊だろう。あんなものを開発した国だ。おそらく照準もできるに違いない。


『着弾まで残り一分!』

『航空機は全機一万フィート以上へ退避しろ!』

『総員退艦! 艦からできるだけ離れて海に潜るんだ!』

『着弾まで三十秒! 退艦します!』


蜘蛛の子を散らしたように巡洋艦や空母などの乗組員が海に飛び込む。


『迎撃開始! 帝国海軍の意地を見せろ!』

『了解! 全弾発射します!』


大和、金剛、愛宕が迎撃ミサイルを発射。長門も最後の力を振り絞るかのようにミサイルを発射した。


そして、日本海が爆発した。


■■■


2027年 日本 青森県八戸市


「この時、連合軍も中国軍も甚大な被害を被った。日本軍は航空戦力が四分の一まで減り、赤城と加賀が轟沈した。アメリカの戦力も日本海に投入した戦力の九割が爆発によって失われていたのだよ。中国も艦隊一つが丸々消えた」

「そんな、敵を倒すためだとはいえ、味方もろとも焼き尽くすなんてことが、ありえるんですか?」

「ありえるありえないではなく、実際にあったことなのだよ。飛行要塞unknown2と中国艦隊は連合軍の日本海戦力の八割を持っていった。それが事実なのだ」


沈黙。囲炉裏で薪の爆ぜる音だけが虚しく響く。しばらく誰も話さなかった。


「それで、」信濃艦長がゆっくり語りだす。


「それで、MIRVの標的となっていた都市は東京、大阪、名古屋、札幌、ワシントンDC、ニューヨーク、サンフランシスコ、ベルリン、ロンドン、パリだった。迎撃に成功した都市もあったが、ロンドン、パリ、サンフランシスコ、仙台、札幌は迎撃に失敗し、壊滅的な被害を受けた。我々は海にいたからどんな様子だったかはわからないが、焼け野原で、まるで地獄のようだったそうだ」


私も写真で見たことがある。本当に何もなかった。焼け焦げた家、人、車、電車、飛行機。すべてが真っ黒になっていた。


「また、航空戦力の大半を失った一航戦は、赤城と加賀の艦載機を信濃に着艦させた。それでようやく信濃のもともとの航空機搭載数だった。確かに我々は勝利した。だが、余りにもひどすぎた。喜ぶことも何もできなかったのだよ」

「でしょうね。当時の写真を私は学校の教科書で見ました。海に浮かんでいる軍艦や戦闘機の残骸と人が、重油にまみれて炎に呑まれている写真を……」

「「「…………」」」


再び沈黙が起こる。しばらくの後、信濃艦長が明るい声で言った。


「まあ、暗い話はそこまでにして、今日はここまでにしよう。夕飯にしょうじゃないか。君たちも食べていきなさい」

「「あ、ありがとうございます」」


夕飯の献立は焼き魚と刺身、魚の煮物だった。魚づくしで私はその日、自分が魚になった夢を見た。

次回は2/26更新予定です。


終わりが微妙すぎるなあ……。

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