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名もなきエースたちの戦記  作者: 飛桜京
本編 戦争前半
5/19

今回は日常的にいってみようかと思います。

2015年 瀬戸内海 日本海軍空母赤城


「ブラックー! レッドがいじめるー!」


艦橋の影になっているところでゆっくりと涼んでいた黒髪の小柄なやけに白っぽい肌の少年に泣きついてきたのは白金の髪の同じく小柄な少女。ホワイトだ。


「なんで俺のところに来るんだよ。隊長がいるだろ?」

「だって隊長、艦長さんのところから帰ってこないんだもん」

「俺ももう少ししたら友人が来るんだけどな」

「ブラック、お友だちいるんだ」

「おい、どういう意味だそれ」

「うわー、やめてぇえー。ゆぅれぇるぅー」


柔らかい白金色の髪の頭を鷲掴みにして前後左右に振る。目を回したであろう頃に流石にかわいそうになって開放してやる。


「あうー。ひどいよブラック」

「ついやりすぎた」

「こらこら、いくら暇だからってホワイトをいじめちゃダメだろう、ブラック君」

「「隊長!」」


艦橋から出てきたのはブルー。レッドを引き連れている。彼ら四人の機体は現在岐阜県の工場で艦載機仕様に改造され、名古屋へ向かう途中だ。そのため、空母赤城・加賀・信濃は連合艦隊を一時離れ、名古屋港へと向かっている。


「いや、これは---」

「隊長ーーーっ! ふたりが、ふたりがいじめるー!」

「そうなのかい? ホワイトで遊んでもいいのは自分だけだよ?」

「「………………。いや、その、スンマセン」」

「分かってるならいいよ、それで。ほら、ブラック君は友人が来るんだろう? 見えてきたから行ってくるといい」


見えてきたのはSu-27の四機編隊とAH-64やCH-47などのヘリの編隊。その後ろにF-15とF-2、F-35の編隊が見える。


■■■


2027年 日本 帝国陸軍朝霞駐屯地


「それが、あなただということですか」


 東京にある陸軍基地で私と対面しているのはいかにも軍人、といった風格の男。大日本帝国陸軍戦略教導隊所属の山田太郎中佐。陸軍唯一の戦闘機部隊の隊長なんだそうだ。多分偽名。


「ああ。まあ、友人というより元部下、かな? 私たちは大日本帝国陸軍戦略教導飛行隊、要するにアグレッサー隊にいたんだ。彼はその中の戦闘機隊にいた。私は彼の二番機だった。彼は、優秀な戦闘機パイロットだったよ。日本陸海空軍の全飛行隊が彼が中野学校二俣分校を卒業するときに引き抜こうとした。そのくらいの人物なんだよ。ブラックは」

「では、あなたから見たブルーバード隊の印象は?」

「恐ろしい。ただその一言に尽きるね。もう一つ付け加えるなら、薔薇に棘あり、かな。隊長は確か空軍のマドンナだったか。その通り名のとおり美人だったよ。レッドと名乗っていた二番機はよく騒いでいてうるさかったな。赤城の中で何かあるときは十回に三回から七回は彼が中心にいた。ホワイトという三番機は、北欧系の可愛らしい、元気な子供のような少女だったよ。黒、おっと、ブラックさんは、やっぱり変わらず、見た目はどこにでもいそうな特徴のあまりない少年。なぜ四番機に甘んじているのかまでは分からなかったが。隊全体としては自由気まま。そんな感じだ」

「自由、ですか。赤城の中でどんなことがあったか教えてもらっても構いませんか?」

「ああ、いいとも。実は君の他にも聞きたいという者たちがいてね。彼らも一緒でいいのなら」

「ええ、構いません。お願いします」


■■■


2015年 瀬戸内海 帝国海軍空母赤城


「お久しぶりです、隊長!」

「隊長!」

「わー、まだちっさい!」

「それっ、持ち上げろ!」

「ちょっ! 待て、こら!」


輸送ヘリなどからわらわらと降りてきた迷彩服姿の男たち(女性も複数)にブラックが取り囲まれてなぜか胴上げされている。


「ブラックって、人気だったんだ」

「あんなロボットみたいな奴なのにな」

「おや、言ってなかったかい? ブラックくんはあんな外見だけど中野学校卒業の日本陸軍戦略教導隊のエースだよ?」

「「へ、へー。知らなかったー」」

「まあ、彼は自分のことをそんなに語らないから、当然かもしれないけどね」

「ブラックって日本人なんだね。フランカーに乗ってるから中国軍か、肌が白いからロシア軍を辞めた人なのかと思ってた」

「日本陸軍戦略飛行教導隊でも使っているんだ。そこまでメディアなどに出ることもないから日本国外でもあまり知られてないけどね」


第二次世界大戦終結後に陸軍航空隊と海軍航空隊は統合され、空軍となった。陸軍航空隊は一つの戦闘機部隊だけを残して航空隊は攻撃ヘリに移行した。それがブラックの所属していた大日本帝国陸軍戦略飛行教導隊だった。


ちなみに陸軍はSu-27、海軍はF/A-18E/Fやシーハリアー、そして最近それらの後継機としてF-35を導入し始めている。空軍はF-15・F-2・F-35を使用する。また、海軍では中国軍の進撃を見越して第二次世界大戦時の記念艦としてアメリカ海軍の戦艦ミズーリと同じように保存されていた戦艦、大和と長門を改造し、イージスシステム搭載護衛戦艦として再就役させていた。陸軍ではライセンスをスホーイ社から手に入れた三菱が独自の技術でSu-27を大幅に改造し、零戦の思想のもと造られたSu-27J FLANKER ZEROという機動性や航続距離などが更に飛躍した戦闘機を開発。空軍でも海軍の空母、赤城や加賀を始めとした空母との統合運用のことを考え、アメリカが廃棄したシーイーグル計画を元にF-15やF-2を近代化改修ついでに艦載機仕様に改造している。


「そういや隊長、なんでまた艦長のところへ?」

「ああ、自分の古巣の空軍からも派遣される部隊がいるみたいでね。その部隊と派遣される艦名を聞きに行ってたんだ」

「どこに派遣されるんです?」

「空母加賀にF-35、鳳翔と龍驤にF-2、信濃にF-15だね」

「グリペンがない」

「日本では使われてないからね」

「むー、高速道路で離着陸できるから便利なのに。腹いせにブラックで遊んでこよっと」

「む、自分も行こう」

「あ、俺も」


調子に乗りすぎた兵士たちの手によってブラックが赤城から海に落ちかけてブチ切れたのはまた別のお話。



名古屋で愛機と再会した四人は甲板上で整備員たちと共に機体をコンテナから取り出し、組み立てる。そんな中。


「あれっ、俺のイーグル、なんか違えぞ」

「どうした?」

「聞いてくれよブラック、俺のイーグル、C型だったはずなのに、コックピットがE型みたいになってんだよ」

「? 見間違いじゃなくてか?」

「当たり前だろ。俺が何年あいつに乗ってると思ってんだ」

「耐用年数を超えてたんじゃないか?」

「やっぱそれかー。あんま重くなられても困るんだけどなー」


見た目としてはコンフォーマルタンクが装着された程度で、単座なのには変わりないが。


「まあ、いいんじゃないか? ……ん? メモが挟まってるぞ」

「見せてくれ」


コックピットに挟まっていたメモには、耐用年数限界大幅超過のため、大幅に改造しました。そのため、コックピットはE型仕様となっております。エンジンなどもすべて改修したので、しばらく使いにくいかもしれませんが、頑張ってください」と書かれていた。要するに、F型なのだろう。


「この字の主は、女と見た! それも美女!」

「なんでそう思うんだ?」

「字が可愛らしくて綺麗だからな! 俺の目に狂いはない!」


レッドは豪語したが、実はそのメモを書いたのは男性だということをレッドが知るのはしばらく後のことになる。


ブラックのSu-27も艦載機仕様のものがあるが、赤城の飛行甲板はスキージャンプ台式ではなく、カタパルトを採用しているため、それ用の改造が施されていた。



『赤城艦長より通達する。我々第一航空戦隊はこれより名古屋を出港。各国連合艦隊と合流するためにミッドウェーに向かう』


名古屋港を出港し、房総半島沖で瀬戸内海で別れた戦艦大和を旗艦とする第二艦隊と合流。米英仏独の連合艦隊が待つミッドウェーへ。


◼︎◼︎◼︎


2027年 日本 帝国陸軍朝霞駐屯地


「この話を聞く限り陸軍の隊員が元凶のなってません? レッドさんではなく」

「.............」


鈴木中佐は明後日の方向を向いて黙り込む。話を聴きにきた兵士たちもじとっとした目で彼を見る。


「ま、まあそんなことは置いといて、だ」


(ごまかした!) おそらく全員がそう思っただろう。


「それで、ミッドウェーに着いてからは......」


だが、ごまかしたまま彼は話を続けた。


◼︎◼︎◼︎


2015年 ミッドウェー環礁 帝国海軍空母赤城


ミッドウェーにはすでにドイツ海軍のU-35潜水艦、空母グラーフ・ツェッペリンを始め、米海軍の戦艦ミズーリと空母エンタープライズ、英海軍の空母クイーン・エリザベスとヴァンガード級潜水艦、フランス海軍の原子力空母シャルル・ド・ゴールとラファイエット級フリゲートなどの精鋭艦が勢揃いしていた。


小さな諸島に世界でも指折りの連合艦隊旗艦などが揃う。かつて歴史の転換点となったであろうこの場所に。各国軍部の代表者が集まって交流会を開いている小さな島を赤城の甲板上で見つめながらブラックが呟く。


「壮観だな。連合国の艦隊旗艦が勢揃いか」

「ああ。中国もよくこんなのを相手に戦争できるもんだ。ま、お前の古巣の日本も七十年ほど前には世界に宣戦布告したわけだが」

「確かこのミッドウェー海戦で日本が負けてたら戦争の早期講話はできなかったんだよね?」

「その通りさ。初戦の真珠湾攻撃でアメリカ空母艦隊を見つけなかったらミッドウェー海戦で勝利できなかったかもしれないね」


そこからしばらくブルーの歴史講義が続く。ブルーに出会うまで日本という単語すら知らなかったらしいホワイトの事を考えてか、彼女の講義は明快で分かりやすい。それも真に迫っていた。


「まあ、自分が知っているのはこのくらいかな。参考になったかな?」

「隊長は物知りだね」

「祖父がこの赤城で零戦に乗っていたからね。色々な話を聞いていたんだ」


もちろん今の赤城は戦後新たに建造されたものだ。七十年以上もの時を生きるのは今では大和や長門、ミズーリくらいだ。


集合した艦艇の中で最も巨大な大和に各部隊の代表者が集まって軍議を開いている。空母の飛行甲板上では兵士たちが談話していて、ブラックたちもドイツ人と日本人の兵士たちと話していた。


「なんでわざわざミッドウェーに集められたと思う?」

「うーん、敵の攻撃があるとは思えないから?」

「それもあると思うけど、ここはアメリカの領土だから、招集をかけた自分がリーダーであると言いたいからじゃないのか?」

「目の上のたんこぶの中露は敵だから口出ししないし、日本はもともと何も言わねえから、自分がリーダーになれると思ってんだろ。自称世界の警察()だからな」

「肝心なところで役に立たないのにねー」


その時、警報がけたたましく鳴り響いた。


『各員に告ぐ! 各員に告ぐ! オーストラリアに向けて敵軍が進軍中! これより国連軍はオーストラリアへと向かう!』

次回は2/5更新の予定です。

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