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名もなきエースたちの戦記  作者: 飛桜京
本編 戦争前半
3/19

2-1

2015年12月15日


「ブルーバード隊、こちら航空管制機E-3の"グリーン"だ。聞こえるかい? 今回からあんたたちと一緒に行動することになったんだ。よろしく頼むぜ」

「こちらブルーバード2。今度の管制官は随分とフランクな奴らしいな。気が合いそうだ」

「こちらブルーバード1。グリーン、次の作戦について教えてくれるかな?」

「ひゅう〜。まさかレディがいるとはね。こりゃあいいとこ見せねえと。


ゴホン。あー、今回の作戦名はシンガポール奪還作戦だ。まあ、そのまんまだな。で、やることは敵航空戦力の撃破と、連合軍の敵要塞突破支援、要するにワイルドウィーズルだな。どうだい?」

「四人中二人が制空戦闘機なんだが?」


レッドが苦々しく指摘すると、グリーンはカラカラ笑った。

「おいおい、制空戦闘機だからできねえってのか? 不可能でもやって見せるのがブルーバード隊だろ? それともおめえ、ブルーバードじゃねえのか? まあ、赤羽だもんなあ」

「てめえ、言ってくれんじゃねえか! ああ、やってやんよ! このレッド様に不可能はねえって事を教えてやらあ! なあ、ブラック?」

「当たり前だ。マルチロール戦闘機なんかには負けねえさ」


ブラックの挑発にブルーが反応した。


「ほおお? 言ったね? ならば私たちとどちらがより多く敵を撃破できるか勝負しようじゃないか。なあ、ホワイトちゃん」

「はい! 二人には絶対に負けないんだから! ま、どうせ私たちには負けるだろうけど」

「「ああ、やってやる。やってやんよ! そう言って負けて後で泣き寝入りしときな!」」

「そんなことを言ってられるのも今の内だよ〜?」

「カッカッカ。コイツらおもしれー。ほれほれ、とっとと行かねえと他の奴らに持ってかれちまうぞ。なんせ今日は伝説の"Shadow Seeker"が来るんだぜ?」


有名なようだが、どうやらブラックは知らなかったようだ。


「シャドウシーカー?」

「おいおいブラック。知らねえのかよ。空軍の少尉以上の奴らなら誰でも知ってるぜ? お前空軍にいなかったのか?」

「俺は元陸軍だったからな。ちなみに大尉だぞ」

「うげっ、隊長と同じ......。だから口調が急にぞんざいになったのかよ」

「よし、それならしょうがねえ。俺もかつてはグリーンベレーに所属してたからな。同じ元陸軍大尉の、このグリーン様が教えてやるよ」


◼︎◼︎◼︎


2027年 街


グリーン、いや、チョッパーというこの男はよく喋る。元アメリカ陸軍のグリーンベレーに所属するエリートだったが、どういうわけか傭兵としてAWACS搭乗員に。そして今ではこれまた何故かアメリカ海軍のイージス艦に乗っているようだ。


「---で、その時俺はバーっと奴らに啖呵を切ったわけよ。いやあ、あの時の奴らの反応ったらありゃしねえ」

「その、シャドウシーカーって、一度会ったことがありますが、現役の国連空軍偵察隊ですよね? 彼らは戦闘機乗りだったんですか?」

「その通りさ。あいつらの真上からいつも見てたこの俺が言うんだから間違いねえ。奴らは昔、YF-23に乗るエースたちだった。ステルス戦闘機の特性を活かして七面鳥を撃つようにして敵機を撃墜して行くすごい奴らだった。ありゃあ、俺が奴らの敵だったらサッサとケツ捲って逃げてたな」

「では、ブルーバードとシャドウシーカー、どちらかを敵に回さなければならないとしたら、どちらを味方に選びますか?」


私の問いかけに彼は考えるそぶりすら見せず即答した。


「そりゃあお前、ブルーバードに決まってるだろ! 何が嬉しくてあんなのを相手にしなきゃなんねえんだ。化物? 死神? 悪魔? 鬼神? どれもまだまだ生温い。奴らはそんな言葉で表せるような奴らじゃねえんだ。魔王だろうと魔神だろうと、あいつらは全て叩き潰す。『死は万人を襲う』っていうだろ? 奴らはそれを体現した奴らなんだよ。奴らに出会った全ての人間が恐怖するもの。それがブルーバードだ」


彼の顔には脂汗がびっしりと浮かんでいて、今の発言が本気で述べられているのだと如実に語っていた。


「なあ、あんたはシャドウシーカーに会ってきたんだろ? その時になんて言われた?」

「我々が今の君に話すことができるものはない。この大戦の真実が見えて来た時にまた来て欲しい。そう言われました」

「俺も同じだ。今はあんたに話せることはない。このシンガポール奪還作戦について話したら帰ってくれ」

「......。分かりました」


◼︎◼︎◼︎


2015年 シンガポール近海


綺麗な四機編隊を組んで飛行中のブルーバード隊のレーダーの死角から四機のYF-23が現れた。接近に誰も気づかなかったので、四人が焦ったのは言うまでもない。


だが、それでも彼らが攻撃をしかけなかったのはそのYF-23がIFF(identification friend or foe:敵味方識別装置)に反応していたこと、そして、その内の一機が気さくに話しかけてきたからだ。


「よお、あんたたちが噂の501小隊、ブルーバード隊だな?」

「そういう君たちは168小隊のシャドウシーカー隊だね?」

「ヒュウッ。いい声だな。今度うちの基地のバーにでも来ないか? 多分一番の歌姫になれるぜ、姉ちゃん」

「退役した時にでも考えておこうかな。けど、それならウチの三番機をオススメするよ。どうだいホワイト?」

「んー、わたしとしては少なくともこの戦いの間は飛んでいたいかなって。だからわたしも退役後なら考えてもいいよー」


ホワイトの割と前向きな発言にシャドウシーカー隊は大盛り上がり。


「おい、聞いたか? 退役したら来てくれるってよ!」

「ヒュウッ、可っ愛い声だなあ」

「彼女は俺の手柄だ! 誰にも譲らねえからな!」


だが、当然ブルーバード隊の男二人は面白くない。だから主にレッドがシャドウシーカー隊にいちゃもんをつけ始めた。


「おうおうおうおう、うちのマスコットキャラクターに手えつけてんじゃねえぞ」

「あっ、レッド嫉妬? いくらわたしが可愛いからって、拗ねてるんだー」

「随分古典的な絡み方だな。それと、可愛い性格だな。レッド」

「そんなんじゃねえよ! お前なあ、なんとも思わねえのかよ。ブラック」

「そりゃあ面白いとは思わねえさ。けどな、俺は個人の自由を尊重するし、俺たちは傭兵なんだぞ? ホワイトがこの戦争を境に何をするのも自由なんだぜ?」


その言葉にレッドがぐっと詰まる。


「た、確かにその通りだけどよお、お前はもうちょい仲間に対する優しさを持とうぜ?」

「............そろそろ黙れ。交戦空域に入るぞ」

「チッ、ロボットめ」



交戦空域に入った。


「お前ら気イ引き締めろ! 敵防衛隊の出撃だ!」

「き、聞こえるか、連合空軍航空隊。こちら陸軍第八師団! 済まないが航空支援を頼む! 対空兵器も多い。注意しろ! 」

「こちら連合空軍第501小隊のブルーバード1。これより航空支援に入る。場所を教えて欲しい」

「現在おそらく君たちであろう戦闘機の八機編隊が見えている。上空に管制機を飛ばしている戦闘機編隊だろう? そこの右斜め後方の白煙の上がっているところだ! 早く来てくれ!」


何か小さく聞こえたような気がしたが、ブラックはすぐに忘れた。目標が確認できたからだ。


「ブルーバード4、支援目標確認。援護に移ります」

「こちらブルーバード1。シャドウシーカー隊、敵機が前方に見える。全機撃墜してくれないかい?」

「了解。レディの頼みとあらばどんなことでもやって見せよう! シャドウシーカー隊、俺に続け!」

「「「了解」」」

「ブルーバード隊、ブラックに続くんだ!」

「「了解!」」


煙を突き破り、四機の戦闘機が対空砲火の的になるかのようにやって来た。


「おい、かかったぞ!」

「近づいて来い! 蜂の巣にしてやる!」


何人かの兵士がこちらを指差してニタリと笑う。そして幾つものSAMや対空機関砲がこちらを向く。


グリーンが叫んだ。


「ロックオンされてるぞ! ブルーバード、回避しろ!」


大地から灼熱の鉄の雨が湧き上がる。コックピットで警報が鳴り響く。後ろ以外の全ての方向から灼熱したアイスキャンディーのような弾丸と巨大な鉛筆のようミサイルが飛んでくる。


「隊長ぉ! どうやら俺たちゃ騙されたようだぜ!? うわっ、掠った!」

「各機、墜ちないように気をつけるんだ!」

「「「了解!」」」

次回は1月22日の更新予定です。


ちょっと長くなりそうなので、話を分割します。

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