第四章⑨
内海は散華が店長を勤めている錦景女子高校の北校舎三階にある喫茶マチウソワレでコーヒーを飲んで散華と話した。話すことは沢山あった。散華はマチソワの運営を他の女子に全て任せてずっと内海の隣に座っていた。会話を重ねるごとに内海の視力は回復していった。徐々に髪の毛の色も良くなった。髪の長さも伸びていた。散華は内海に起こった、不思議な現象のことを指摘しなかった。最初から綺麗な髪の毛の色と目の色をした内海と会話をしていたようだった。事実、彼女の目にはそう見えていたのかもしれない。
内海と散華は友達になった。
店仕舞いとともに、二人は別れた。心に温かいものを感じていた。外はすでに真っ暗だった。内海は駐輪所に停めた自転車を押して門を出る。警備員の女性が門の前に立っていた。警棒の紅いライトを発光させていた。お礼を言うと、彼女は首を傾げながら頷いた、内海は自転車に跨りペダルを踏む。
自宅に戻るとアメリが玄関で待っていた。「ご主人様、遅い、早く服を脱いで、お風呂に入りましょう」
内海はアメリとお風呂に入った。綺麗な髪をシャンプしてもらうのは楽しかった。浴槽に浸かりながら内海は今日あった出来事を話す。アメリは感心なさそうに手の平に掬ったシャボンの泡を中空に浮かべていた。
風呂から上がってスマホを確認すると、メールが来ていた。
ナオミコからのメールだった。
「電話してもいいですか?」
そういう短いメールだった。
内海はこの短いメールのことを考えながら軽く夕食を済ませ、自室のベッドにごろんとなった。お揃いのパジャマを着たアメリもごろんとなる。アメリの柔らかい部分に顔を埋めながら、内海は様々なことを考えていた。
パジャマ・パーティは成功したのだろうか?
成功したから電話をしたいのだろうか?
それとも。
失敗したから?
内海は自分がどんなシチュエーションを望んでいるのか、自分で分からなかった。
良く見えるようになった目を瞑って開いてみても見えるのは天井の照明だけ。
「ねぇ、アメリ」
「なぁに?」目が半開きのアメリは内海の髪と自分の髪を絡めている。
「何してるの?」
「駄目?」アメリは手を止めた
「駄目っていうか、」内海は微笑む。「いや、いいけど」
「メールのこと?」アメリは髪を解いた。
「うん、あ、分かった?」
「うん、聞いてた」
「そっか」
「OKすればいいと思う」
「使い魔としてのアドバイス?」
「ただのアドバイス」
アメリは可愛い欠伸をして向こうを向いてスヤスヤと寝息を立て始めた。
内海はアメリのただのアドバイスに従って。
メールを送った。
そしてアメリの背中に頬を寄せて寝る。




