第二章⑩
十分後。「……ナオズミ、コーヒー牛乳を頂戴」
「早いな、」皿を清潔な布巾で拭いていた船場はナオミコの声がした方向を見て、とても動揺した。「……おいおい、顔がピンク色だよ」
「もう、無理ぃ、」ピンクのタオル地のパジャマを着たナオミコは全身がピンクだった。髪を濡らしたままソファに突っ伏し、消え入りそうな声で言う。「恥ずかし過ぎる、告白しようと頑張ったけど、無理だった」
「おいおい、焦るな、タイミングは夜なんだから、」船場はコーヒー牛乳を持ってナオミコに近づく。「今はそのタイミングのために、少しでもヒロミに素敵なところを見せなきゃいけないときだよ、服を脱ぐときちゃんと可愛い子ぶったか? ちゃんとヒロミに濡れた体をしっかりと見せたか?」
「……変態、」小さく言って、ナオミコはコーヒー牛乳をグビグビ飲んだ。「……はぁ、うめぇ、」蘇生した顔をする。「……けぷっ」
「ヒロミは?」船場はドライヤを持ってナオミコの隣に座る。ナオミコの髪の毛を乾かすのはだいたい船場の仕事だった。
「……ヒロミの体、」ナオミコの目はとろんとしていた。「綺麗だったなぁ、いつの間にか、おっぱいも大きくなってて、触ればよかった、ああ、どうして触らなかったんだろう、せっかくのチャンスだったのにぃ!」
「小さい方がいいと思うぞ、ナオミコくらいがちょうどいいと思う」
「変態!」ナオミコは自分のなだらかな胸を隠す。「ロリコン! 死ね!」
「お前も十分変態だよ、」船場は苦笑しながらドライヤのスイッチを入れた。「……それで、ヒロミはまだ風呂?」
ナオミコは頷いた。黙ってこちらに背を向けて、船場に髪の毛を任せている。
この時間がとても幸せに感じだ。
「あ、ナオミコってば、まだ兄貴に髪乾かしてもらってるんだ、」黄色のパジャマに着替えたヒロミが風呂から戻ってきた。「いいな、いいな、兄貴、私の髪も乾かしてよ」
「ああ、構わないよ」
「む、」ナオミコは船場を睨んでドライヤを奪った。「ヒロミ、私が乾かしてあげる、ここに座って」
「あ、……うん、」ヒロミはなぜか残念そうに言われた場所に腰を降ろした。「じゃあ、お願いします」
「な、なんで敬語なの?」ナオミコは不満そうに言う。「よそよそしくない?」
「だって、今日のナオミコ、なんていうかね、」ヒロミはクスクス笑っている。「狼みたいな目をしてるんだもん、恐怖を感じさせる目で私のことを見てるんだもん、ああ、怖いよぉ、食べられちゃうよぉ」
「そんなことないっ!」ナオミコはドライヤで乱暴にヒロミの髪を乾かし始めた。
「もぉ、もっと優しくやってよぉ、乱暴だよぉ」
「え、優しいでしょ?」
「もぉ、雑、兄貴に変わってくれる?」
「それは絶対駄目、絶対認可は降ろさない」
「じゃあ、もっと丁寧にやってくれる?」ヒロミは愉快な声を出す。
「やってるってば」
「なんで急にお風呂に潜ったの?」
「恥ずかしかったからだよ、言わせんなよ、恥ずかしい」
「なんで?」ヒロミはナオミコのことをからかう口調だった。
「恥ずかしがり屋だからだよ」ナオミコの声は低い。
「なんで恥ずかしいの?」
「恥ずかしがり屋、だから、」ナオミコの声は小さい。「……はい、ほら、もう、お終い」




