第二章⑧
リビングのテーブルの上はクリスマス・イブのような色彩を放っていた。誰かが魔法を編んで色を付けたように、煌めいている。もちろん、誰も魔法なんて編んでいない。船場が編める魔法はただのスイッチ。このテーブルに表現されているのは、ナオミコへの愛情に他ならない。ナオミコに褒められたくて、船場は少しだけ無理をした。でも、ナオミコは料理には無頓着だった。まあ、罵倒されないだけマシか。
ナオミコは化粧を十分に一度の頻度で修正。服もなかなか決まらないでいた。
化粧と服が落ち着いたのは、夜の七時の五分前だった。
「ね、ねぇ、ナオズミぃ、」ナオミコの声はひっくり返っている。「変じゃないかなぁ、大丈夫かなぁ、笑われないかなぁ」
「大丈夫、完璧だ、誰もお前を笑ったりしないよ、」ナオミコの衣装は丸い襟がポイントのピンク色のシンプルなワンピースだった。少し子供っぽいが、それがナオミコニははよく似合う。「それより、ナオミコ、自分で言うんだぞ、自分の言葉でハッキリ伝えるんだぞ、これはナオミコの恋愛なんだから」
「分かってる、理解してる、」ナオミコは目を瞑って深呼吸して頭を押さえている。「ヒロミから告白してもらおうだなんて、……そんな甘いことは、考えない、考えない、考えない」
「偉いぞ、ナオミコ、」船場は自分の忠告を素直に聞いて勇気を出そうとしているナオミコを褒めてやる。「そんな緊張するなよ、ちゃんと機会は作ってやるから」
船場のシナリオはシンプルだった。
ナオミコとヒロミを部屋に二人きりにする。船場は魔法で部屋の電気を消す。急に電気が消えて接近し合うナオミコとヒロミ。そこで船場はCDプレイヤを起動させる。流れるのはムードのある曲。そこでナオミコはヒロミの手を触り、指を絡めて、告白する。そこでキスだ。完璧だ。
百合に造詣の深くなった船場が構想した、パーフェクト・シチュエーションだ。
「う、うん、どうか、どうか、どうか、お願いします」ナオミコは珍しく船場の前で弱気だ。胸の前に五指を組んで祈りを捧げている。
その折り。
インターフォンが鳴る。
ナオミコは大きく目を開けた。
「お出迎えしなきゃ、」船場は促す。「ほら、早く」
「お邪魔しまーす」玄関からヒロミの声がする。
ナオミコは立ち上がり、声のする方へ、バランスを上手く取りながら向かった。「い、いらっしゃいませぇ」




