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チョコレート・ムース・レシピ  作者: 枕木悠
第一章 シスタ・イズ・リリィ
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第一章⑨

 錦景地下街にある最近流行のみそもんじゃの店で、コレクチブ・ロウテンションの三人は普通のもんじゃを食べて、エネルギアを補充した。第二ビルにある世界のゲーマーズで様々なコレクターズアイテムを物色して、それから楽器を置くために一度、ドラゴン・ベイビーズに戻った。明日もお金をもらって演奏する予定である。時刻はもう少しで、午後八時になる。

 自動ドアを潜って入ると、店内は混雑していた。夜なので働きに出ているメイドさんも多い。

「お帰りなさいませ、お嬢様、」舌っ足らずな言葉で、メイド服を纏ったアメリが三人を出迎えた。遅れてゼプテンバに気付いたようだ。耳がピクッと動く。「……あ、えっと?」

「わぁ、」鏑屋が耳に反応する。「可愛い耳、触っていい?」

「……駄目です」アメリは手で耳を隠した。

「どうやって動かしているのかな?」久納は疑問を抱く。「脳波?」

「楽器を置きに来ただけ」ゼプテンバは短くアメリに言って、キッチン奥の事務所に向かおうとする。

 アメリはゼプテンバの赤ジャージの袖を掴む。

「なに?」ゼプテンバは英語で言って振り返る。

「何でもします、」アメリもビクビクとした表情で、英語で返す。「何でもしますから、だから、私をペットにしてください」

「まだ来てないの?」ゼプテンバは聞く。

「え?」

「魔女はまだ?」

 アメリが首を傾げる。「……来てない、ですよ、来るんですか?」

「きっと来るよ」

 アメリは疑う目でゼプテンバを見る。

 ゼプテンバはアメリから顔を逸らす。

「何を話してたの?」久納が顔を寄せて聞いてくる。

「貴様等には関係のない、」

 ゼプテンバは皆まで言えなかった。

「ああ、来た、」大きな声に邪魔されたからだ。バイトリーダの東雲の高い声だ。東雲は店内から逃げようとした三人をガッチリと捕まえて高い声で言う。「ちょうどいいところに来た、ファンクラブの方々が来ているわよ、リホちゃんもいるじゃない、機材をすぐに用意するわ、だから早くメイド服に着替えてステージに立って」

 そういうことでコレクチブ・ロウテンションは狭いステージで演奏しなければならなくなった。ファンクラブの方々は主に錦景女子の人たちだった。二十人くらいでステージに近い席を独占している。癒しを求めて会社帰りに独りでここに立ち寄ったサラリーマンは隅に追いやられている。彼は金曜日にいつもいる人だ。ゼプテンバは大人の男性が好きだ。魔女だから女の子も好きだ。でも、哀愁に満ちた横顔を見せる、皺のあるシャツを着たサラリーマンが好きだ。ゼプテンバは少し彼のことが気になっている。だからファンクラブの女の子たちによりも疲れたサラリーマンのために、ゼプテンバはラブ・ソングを歌いたい。「君に似てる人が好き」

 そして。

 曲の佳境に。

 彼女が店に現れた。

 アメリは彼女にお辞儀をする。



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