わが家<4>
姉が晩ご飯の買い物に行っている間、幼子のお守りを頼まれた。四歳で、名前は坂井立樹。男の子だ。立樹くんはお昼寝の途中だったらしいが、可哀想なことに姉に起こされて、お互い自己紹介をした。
「この子が立樹。もう四歳だよ。ほら立樹、挨拶は?」
目元が姉に似ているその男の子は、寝ぼけ眼ながらももじもじと姉の陰に隠れて、なかなか挨拶しようとしない。母たる姉に怒られて、姉の陰から引っ張り出された彼はしぶしぶ、しかしやっぱり恥ずかしそうに目を伏せて、小声で挨拶をした。「たつき……」
消え入りそうな声だった。四歳となると、ちょうど恥ずかしがり屋になり始める時期だろう。でも、僕は幼子の扱いに手慣れていた。
「片桐翔。一九歳だよ。よろしく」
手を伸ばして、ぽんぽん、と頭を軽くなでる。立樹はすぐに姉の陰に隠れてしまう。「日頃は腕白ないたずら小僧やけん、ちょっと注意しときーね。美枝ちゃん並」
「マジで? 怖かね」
「まあ、今日は立樹も様子見ってとこやね。でも、すぐ仲良くなれるけん」
「うん」
実際に、すぐに仲良くなった。立樹くんが仮面ライダーか何かのおもちゃで一人遊びしているところに、ちょっとちょっかいをかけたのだ。
「それ、なんて言うの?」
「……ふぉーぜ」
「ふぉーぜ?」
フォーゼって何だっけ。確か、大学の友だちの高梨が言ってたような……。ああ、思い出した、仮面ライダーか。あいつ仮面ライダー好きだったしな。
「ああ、仮面ライダーね」
そう言うと、たつき君の目がちょっと輝いたように見えた。どうやら、仮面ライダーが好きなようだ。
「しってるの?」
「名前だけね」
僕も子供の時は仮面ライダーを余り見ない子供だったし、今の仮面ライダーの知識は乏しいが、どうにか食らいついていこう、と思った。




