わが家<3>
「ちょっとでかくなった?」
「大学生にもなって大きくなるわけないやろ」
庭で洋服の日干しの途中だったらしい姉はそれを終えてしまうと、嬉しそうに僕を居間に招いて、林檎を剥いてくれた。八畳のリビングに置かれた真新しいテーブルは、見慣れないものだったが、やっぱり新しく買った物らしい。
「ちょっとずつリフォームとかもしとるとよ。ほら、キッチンとかもちょっと変わったと思わん?」
「ん……」
ちょっと酸味の強い林檎をかじりながら、僕は姉の指さす方を見た。確かに、どこかち違う気がする……。どこだろう。ちょっと眺めてから、すぐに気付いた。
「あ、IHになっとる」
「ほら、冷蔵庫も」
「ホントだ、ちょっと大きくなっとる」
ちょっとどころではない。家族四人の一食分の食料を詰めるだけでぎりぎりだったちっぽけな冷蔵庫は、その二倍以上の大きさになっている。
「ほら、今流行りのエコポイントってやつ? どうせ安くなるんやったら、買っとかんとね」
「ふーん」
何でも、新しくなってるんだ。
変わらないふる里の光景にさえ、不思議によそ者と疎外されているように感じたのに、実家がこうも変わっていると、余計にこの場所の人間とは違うのだと思い知らされるようで、悲しくなる。
「なんか、元気無かね」
「そう?」
「いつもそんなに元気そうやなかったけど、今日はもっと元気そうやない」
「そうかな」
そうかもしれない。大学生になって、高校の時と比べて楽しいと思うことが少なくなって、寧ろ疲れるだとか、ネガティヴな感情がわき出ることが多くなった。ちょっとしたうつ病にでもかかったのだろうか。
「うつ病?」
「まさか」
そう言いつつも、同じことを考えた姉に、やっぱり姉弟だな、と思った。




