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-☆-

 栞理さんは快方に向かってはいるものの、まだしばらく入院する必要があるらしい。

 だけど退院したら、ぼくたちの通う高校に中途入学することが決まっているそうだ。


 学力は大丈夫なの? と心配に思ったのだけど、入院中にも勉強はしていたため、少なくともぼくや閃太郎よりはマシなようだった。

 小学校三年生からずっと入院している人に、学力で負けるなんて!

 閃太郎は全然気にせず、へらへら笑っていたけど、さすがに自信を失いかけるぼく。


「大丈夫だよ、いーちゃん。どんなにおバカでも、みゃーはいーちゃんを見捨てたりはしないから!」


 みゃーが慰めてくれたけど、なんだか余計に情けなさが募る。


 ぼくは守り続けると誓った女の子に守られながら生きていくの?

 そんなの男のプライドってやつが許さない!

 などと思ってはみたものの、はたしてぼくにプライドなんてものがあっただろうか?


 でもとりあえず、


 みゃーとともに生きる。それは決定事項のようだ。


 ただ、問題がひとつ。

 それがこの子――でゅらちゃんだ。


 栞理さんの生霊だったはずのでゅらちゃんだけど、なんだかんだで結局消えていない。今でもぼくに取り憑いたまま生活している。

 ということはつまり、ぼくの部屋(といっても押入れの中だけど)で寝泊りしている状態なわけで。

 トイレやお風呂にまではついてこないみたいだけど、気配を消してのぞかれていたらわからないような気もする。

 本人は「拙者はそんなハレンチなことはしないでござる!」なんて反論していたけど。


 そういえば、でゅらちゃんのこの、ちょっとおかしな「ござる」喋りの原因も判明した。


 栞理さんは退屈しのぎの手段として外を眺めることを挙げていたけど。

 実はそれ以外に、もうひとつだけあった。


 それが本を読むこと。


 とくに栞理さんのお父さんが愛読していたという時代小説を主に読みふけっていたらしい。

 たびたび、妹の茜音ちゃんに頼んで病室まで持ってきてもらっていたのだとか。


 そのせいで、無意識のうちにあんな喋り方になってしまったのだと考えられる。

 記憶のなかったでゅらちゃんが、最初に「でゅら」という名前を思い浮かべたのも、『剣豪VSデュラハン』などという、ちょっと微妙な小説の影響だったみたいだし。

 ちなみに、その小説の著者は、愛鳩鬼羅――つまり、みゃーのお父さんだったりするのだけど。


 小説の中には、斬られた侍の怨念がデュラハンとなって武蔵に襲いかかる、というストーリー展開があった。栞理さんは、その場面が一番ドキドキして好きだったと語る。

 それが影響して、記憶のぼやけていたでゅらちゃんに「斬」や「怨」といった文字をイメージさせたのかもしれない。


 ともかく、首から上がないとはいえ一応同い年である女の子と、一緒の部屋で生活しているという現状。

 当然ながら、みゃーがそれを快く思うはずもなく。


「うき~~~っ! でゅらちゃん、いーちゃんから離れなさい! みゃーのほうに取り憑いたっていいから!」

「嫌でござる。維摘殿のほうが、居心地がいいでござるゆえ」

「なによそれ! みゃーは居心地悪いっての?」

「なんというか、硬そうではござらんか? とくに、ここら辺が……」

「なっ……!? む……胸は関係ないでしょ! っていうか、男のいーちゃんより硬そうだなんて、心外だわ!」

「しかし、維摘殿は結構、胸板が厚いでござるよ?」

「ええっ!? ななななな、なんでそんなことを知ってるの!? はっ! さては抱き合って眠ってたりとか、それとももう……!」


 わなわなと震えながらぶつぶつとわけのわからないことを口走っているみゃー。

 黙って眺めていていいものだろうか。というか、マズい気はしているけど……。

 だからといって、どうやってふたりのあいだに割って入ればいいのやら。


 う~ん。あれからすでに何日も経っているというのに、なんというか、よくも飽きずに口論し続けられるものだ。

 あっ、でも、何日か経っているからこそ、なのかもしれないな。

 その数日のあいだ、でゅらちゃんはしっかり、ぼくと同じ部屋で寝起きしたことになってしまうわけだから。


「いいではござらんか。拙者は少しのあいだだけの期間限定なれど、実弥殿はこれからずっと維摘殿と一緒なのでござろう?」

「そ……それは……そうだけど……」


 と、なにやら微妙に、みゃーの勢いが弱まった気がするぞ?

 突然小声になったから、ぼくの耳には会話の内容がほとんど聞こえてこなかったけど。

 そしてさらに、ぼそぼそと会話を続けるふたり。すると言い争いは、ピタリと止まった。


「以前約束したとおり、維摘殿と一緒のベッドで寝かせてあげるでござるよ」

「……え、ほんと? どうやって?」

「ふむ……お泊り会ということで、どうでござろう? 拙者と実弥殿と維摘殿の三人で」

「そそそそそ、それって問題あるんじゃない? ご両親だって認めないんじゃないかと思うし……」

「ふっふっふ、拙者の能力をなめてもらっては困るでござるよ、旦那」

「だ……旦那じゃなくて奥さんのほうだけど、ってなにを言わせるのよ! ともかく、そうね……。でゅらちゃんに任せておけば、万事OK?」

「そういうことでござる」

「おっしゃ! そんじゃ、交渉成立!」

「ふぉっふぉっふぉ、お主も悪でござるのぉ」

「いえいえ、お代官様ほどではございませんて」

『ひょっひょっひょっ!』


 なにやら怪しげな闇取引が交わされ、ふたりの異様な笑い声が響く。

 背筋になにやら悪寒が感じられなくもなかったけど……。

 どうやらぼくには、逃げるという選択肢なんて用意されていないようだった。


以上で終了です。お疲れ様でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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宜しくお願い致しますm(_ _)m

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