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「でも、どうしてでゅらちゃん、過去に飛んだときには顔があったのかな?」
すべてが終わったという気持ちでいっぱいだった帰り道、閃太郎がポツリと口にした。
……そういえばそうだ。いったいどういうことだったのだろう?
「おそらくだが……」
その問いに答えたのは、やはりこの人、る菜先輩だった。
「栞理は茜音の顔は見ていた。茜音は妹だから、自分と似ているはずだと考えていたのだろう。それで自分の顔を、茜音を少し成長させたイメージで思い描いた。しかしそれは、あくまで想像でしかない。そのため、想像した自分の顔を深層意識の奥へと追いやっていた。だが過去へと飛んだ影響で表面化してしまった。……ま、こんなところだろうな」
確かに妹がそばにいれば、そこから自分の顔を想像するのは自然な気がする。
もっとも、どうして過去に飛んだ影響で表面化してしまったのかまでは、ぼくにはわからなかったけど。
ただ、少し気になっていたことがある。
みゃーについてだ。
幼い頃にぼくがケガをしたとき、知らないお姉さんが優しくしてくれた。
それからしばらく、みゃーはあの人にもう一度会いたいと、ずっと話していた。
「こんどあうときには、もっとおとなになったみゃーをみてもらうんだ!」
そう言って笑顔をこぼすみゃーの想いは、空き地で魔法陣を描いたときにも、まだ残っていたのではないだろうか?
ケガをしたぼくに優しくしてくれたお姉さん。
ぼくたちが小さかったから、ずっと年上のお姉さんのように考えていたけど。
はっきりとは覚えていないものの、おそらく小学校高学年くらいの女の子だったのではないかと思う。
そのときのお姉さんは、もしかしたら門倉さんだったのではないだろうか?
みゃーは、お姉さん――門倉さんに会いたいと思いながら魔法陣を描いた。
そして時空を超え、空間はつながった。
高校生となった門倉さんたちのもとへ。
信じられないことではあった。だけど、想いの力は強いというのを、ぼくたちは栞理さんの例でも見ている。
だからこそ、そんなバカなと否定することなんて、できるはずもなかった。
さらには、もしかしたらぼくたちが過去へ飛んだのも、る菜先輩の儀式の失敗ではなく、みゃーの力が影響していたのではないだろうか?
る菜先輩は、みゃーにはいろいろなモノを引き寄せる力がある、なんて言っていた。
その言葉どおり、もっと大人になった自分を見てもらいたいというみゃーの想いに反応して、本当に未来の自分まで呼び寄せてしまったのではないだろうか?
ぼくたちというオマケまで、連れていってしまったけど。
思えば、みゃーのお父さんもタイムスリップしたことがあるなどと言っていた。
根も葉もない嘘だと思っていたけど、実は全部真実で、その能力をみゃーも引き継いでいて、今回の件が起こったという可能性もあるのではないだろうか?
やっぱり信じられないし、単なる推測でしかない。
それでも、少なくともぼくがみゃーに引き寄せられているのは紛れもない事実だった。
「ん? いーちゃん、どうしたの?」
みゃーが心配そうにぼくの顔をのぞき込んでくる。
みんなが楽しく話しながら歩いているのに、ぼくだけ黙ったままうつむいて歩いていたからだろう。
うん、そうだ。
いろいろと口うるさいけど、みゃーはぼくのかけがえのないパートナーなのだ。
「なんでもないよ」
ぼくはみゃーを安心させるため、シンプルに返事をする。
続けて素直な想いを言葉にして伝えることができれば、苦労はしないのだろうけど。
「ただ……みゃーってやっぱり、おかしな女の子だなって」
「だ、誰がおかしいっての!? 信じらんない! バカ、ボケ、カス、クズ、死ね!」
どうしても、余計なことを口走ってしまう。
結果は当然ながら、いつもどおり。みゃーから文句が出る、手が出る、足が出る。
そんなぼくとみゃーのじゃれ合うようなケンカを、他のみんなは生温かい目で眺めているのだった。




