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振り向けばデュラハン  作者: 沙φ亜竜
6.憧憬
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-6-

「でも、どうしてでゅらちゃん、過去に飛んだときには顔があったのかな?」


 すべてが終わったという気持ちでいっぱいだった帰り道、閃太郎がポツリと口にした。

 ……そういえばそうだ。いったいどういうことだったのだろう?


「おそらくだが……」


 その問いに答えたのは、やはりこの人、る菜先輩だった。


「栞理は茜音の顔は見ていた。茜音は妹だから、自分と似ているはずだと考えていたのだろう。それで自分の顔を、茜音を少し成長させたイメージで思い描いた。しかしそれは、あくまで想像でしかない。そのため、想像した自分の顔を深層意識の奥へと追いやっていた。だが過去へと飛んだ影響で表面化してしまった。……ま、こんなところだろうな」


 確かに妹がそばにいれば、そこから自分の顔を想像するのは自然な気がする。

 もっとも、どうして過去に飛んだ影響で表面化してしまったのかまでは、ぼくにはわからなかったけど。

 ただ、少し気になっていたことがある。


 みゃーについてだ。


 幼い頃にぼくがケガをしたとき、知らないお姉さんが優しくしてくれた。

 それからしばらく、みゃーはあの人にもう一度会いたいと、ずっと話していた。


「こんどあうときには、もっとおとなになったみゃーをみてもらうんだ!」


 そう言って笑顔をこぼすみゃーの想いは、空き地で魔法陣を描いたときにも、まだ残っていたのではないだろうか?


 ケガをしたぼくに優しくしてくれたお姉さん。

 ぼくたちが小さかったから、ずっと年上のお姉さんのように考えていたけど。

 はっきりとは覚えていないものの、おそらく小学校高学年くらいの女の子だったのではないかと思う。


 そのときのお姉さんは、もしかしたら門倉さんだったのではないだろうか?


 みゃーは、お姉さん――門倉さんに会いたいと思いながら魔法陣を描いた。

 そして時空を超え、空間はつながった。

 高校生となった門倉さんたちのもとへ。


 信じられないことではあった。だけど、想いの力は強いというのを、ぼくたちは栞理さんの例でも見ている。

 だからこそ、そんなバカなと否定することなんて、できるはずもなかった。


 さらには、もしかしたらぼくたちが過去へ飛んだのも、る菜先輩の儀式の失敗ではなく、みゃーの力が影響していたのではないだろうか?


 る菜先輩は、みゃーにはいろいろなモノを引き寄せる力がある、なんて言っていた。

 その言葉どおり、もっと大人になった自分を見てもらいたいというみゃーの想いに反応して、本当に未来の自分まで呼び寄せてしまったのではないだろうか?

 ぼくたちというオマケまで、連れていってしまったけど。


 思えば、みゃーのお父さんもタイムスリップしたことがあるなどと言っていた。

 根も葉もない嘘だと思っていたけど、実は全部真実で、その能力をみゃーも引き継いでいて、今回の件が起こったという可能性もあるのではないだろうか?


 やっぱり信じられないし、単なる推測でしかない。

 それでも、少なくともぼくがみゃーに引き寄せられているのは紛れもない事実だった。


「ん? いーちゃん、どうしたの?」


 みゃーが心配そうにぼくの顔をのぞき込んでくる。

 みんなが楽しく話しながら歩いているのに、ぼくだけ黙ったままうつむいて歩いていたからだろう。


 うん、そうだ。


 いろいろと口うるさいけど、みゃーはぼくのかけがえのないパートナーなのだ。


「なんでもないよ」


 ぼくはみゃーを安心させるため、シンプルに返事をする。

 続けて素直な想いを言葉にして伝えることができれば、苦労はしないのだろうけど。


「ただ……みゃーってやっぱり、おかしな女の子だなって」

「だ、誰がおかしいっての!? 信じらんない! バカ、ボケ、カス、クズ、死ね!」


 どうしても、余計なことを口走ってしまう。

 結果は当然ながら、いつもどおり。みゃーから文句が出る、手が出る、足が出る。


 そんなぼくとみゃーのじゃれ合うようなケンカを、他のみんなは生温かい目で眺めているのだった。


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