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門倉さんたちが消えた曲がり角まで来てみたぼくたち。
左右どちらに目を向けても、門倉たちの姿は見つけられなかった。もう教室に戻ってしまったのだろうか。
「……あれ?」
そこで唐突に思い出す。
「そういえばさっき掲示板で見た学校新聞、門倉さんの事故が載ってた号のひとつ前じゃなかった?」
「え~っと、そうだっけ? ん~~~~……覚えてないな!」
ぼくの疑問に真っ先に答えたのは閃太郎だった。まったく答えにはなっていなかったけど。
大丈夫、閃太郎なんてはなっからあてにしてないし。
閃太郎のことはガン無視して、ぼくは他のメンバーに視線を向ける。
「みゃーも覚えてないや」
みゃーが申し訳なさそうにうつむく。
でゅらちゃんは学校新聞を調査したときにもあまり乗り気じゃないみたいだったから期待できないだろうし、る菜先輩はその頃だとまだ会ってもいなかった。
とすると、残るは月見里さんだけか……。
月見里さんは、じっと見つめるぼくに微笑みを返してくれる。
安心して、あたしは他の人たちとは違うわ。とでも言いたそうな表情で。
「確かにそうね。だけど、もっと気になることがあるわ」
維摘くんも、そう考えてるんでしょう?
心の中を見透かしているかのように、月見里さんは再びぼくに微笑みかけた。
「うん。今の時点で門倉さんは学校に来ている。事故に遭ったあとは、半年くらい入院したと言っていた。ということは、近いうちに事故に遭ってしまうはず……」
ぼくの言葉に、月見里さんが驚きの結論を述べる。
「ええ。そしてそれは、おそらく今日だと思うの」
「ええっ!? どうしてそう思うの?」
「あれよ」
月見里さんが指差した先には、トラックが止まっていた。
どうやらガラス業者のトラックらしい。そこから作業着姿の人がふたりほど降り、ぼくたちを生徒指導室まで連れていった体格のいいあの先生が対応しているようだった。
「ガラス業者……」
「あっ! 五本松が話してたよね? ガラス業者の人が来て、校内のガラスの総点検をしてたとかって!」
みゃーが大声を上げるまでもなく、ぼくも思い出していた。
門倉さんが落下した地点にガラスがあって、それによって首に大ケガを負ってしまうということを。
業者の人は、見たところふたりだけ。校内全部を見て回るとしたら、かなり時間がかかるだろう。
それでも、今日中に終わらせる予定なのは間違いないはずだ。
ということは……。
「時間的に、あまり猶予はないってことね」
重苦しい沈黙が流れる。
と、その重苦しさを吹き飛ばす明るい声が聞こえてきた。
「わははは! 唯はやっぱし面白いな!」
「え~? ひどいよ、真紀!」
「でもさ~、スカートの裾をパンツの中に入れて、思いっきり丸見え状態のまま出てくるなんて、なかなかないと思うよ~?」
「ちょ……ちょっと智子! 言わないで~。でもそれくらい、誰でもあるでしょ……?」
「う~ん、絶対にないとまでは言わないけど、あそこまでひどい状態だと、さすがに気づくと思うけどな~」
「うんうん、そのとぉ~り!」
「うぅ~~……」
ついさっき、いつの間にか消えていたと思った、門倉さんたち三人だった。トイレに行ってきて、これから教室に戻るところのようだ。
……どうでもいいけど、そんなことを大声で喋らなくても、と思わなくもない。
沈黙したままのぼくたちは全員、息を殺して門倉さんたちのほうに視線を向けていた。
「それよりさ、今日の放課後、遊びに行こう!」
「……え、どこへ?」
「ふっふっふ、ジャーン!」
真紀と呼ばれていた女子生徒が、スカートのポケットからなにかを少しだけ出して、門倉さんに見せている。
「……カギ……?」
「そ。実はこれ、屋上のカギなのよ」
若干声のトーンを下げ、真紀さんが言う。
「え? でも屋上のカギって、職員室で管理してるんじゃ……」
「ほっほっほ、わたしにかかれば、ちょちょいのちょい!」
「つまり、盗んできたってことね」
「ちょ……ちょっと、それってマズいんじゃ……」
「いいのいいの! 澄み渡る青空のもと、気持ちのいい風を全身に浴びながら綺麗な景色を眺めましょう! カギはあとで返しておけば問題ないわよ!」
「そ……そうかなぁ……?」
「大丈夫大丈夫!」
「根拠はないけどね。真紀だし」
「そんなこと言うなってば智子! ふっふっふ、今から放課後が楽しみだわ」
「うう、わたしは不安……」
「言っとくけど、もう唯も共犯なんだから、告げ口とかしたらダメだからね?」
「う……うん、わかってるよ……」
ひと言も言葉を発することなく、ぼくたちは三人の会話に耳を傾け続ける。
騒がしい声を響かせながら廊下を歩いていた門倉さんたちは、やがて自分たちの教室にたどり着き、ドアを開けて中に入っていった。




