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振り向けばデュラハン  作者: 沙φ亜竜
4.儀式
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-4-

 周囲を確認してみる。

 オカルト研究会の部室にいたはずのぼくたちは今、どういうわけか屋外にいた。

 ぼくたち、と言っているのは、みんな一緒だからだ。

 みゃーもでゅらちゃんも、閃太郎も月見里さんもる菜先輩も、ぼくのすぐそばにいる。


 あの魔法陣の中にいた全員が、この場所に飛ばされたということか。

 さらに周りを見回してみると、ぼくたちを取り囲んでいるのが見慣れた風景と建物であることがわかってくる。

 楓坂学園の敷地内――どうやら中庭辺りのようだ。


 ただ、なんとなく違和感を覚える。

 なんだろう、この感覚は……?


「な……なによ、これ!? どうしていきなり外にいるの!?」


 みゃーは混乱してぼくをバシバシと叩きながら不安と驚愕の入りまじった声で叫ぶ。


「どうやら、中庭のようだな」


 落ち着いて分析しているのは、る菜先輩。


「ワープ……した? わくわく」


 なにやら楽しそうな笑顔の月見里さん。心情表現まで口に出してるし。


「……る菜姉ちゃんがいきなり飛び出したりするから……いえ、なんでもないです」


 ぼそっと抗議の声を漏らした閃太郎ではあったけど、る菜先輩に睨まれてすぐさま口をつぐむ。


「不思議な感じでござる……」

「あっ、でゅらちゃんもそうなんだ。ぼくも同じで……」


 でゅらちゃんのつぶやきに、ぼくは彼女を振り向き……そして言葉を失った。

 首をかしげて、ぼくを見つめ返すでゅらちゃん。

 その異変に、ようやく他のみんなも気づいたようだ。


 首をかしげるでゅらちゃんは、確かに今、ぼくを見つめ返している。


 そう、見つめ返しているのだ!

 綺麗なキラキラした茶色いふたつの瞳で!


 そよ風が、でゅらちゃんの真っ黒でツヤのある髪の毛をさらさらと揺らす。


「ちょ、ちょっとでゅらちゃん、顔が……!」


 みゃーは指差しながら、目の前に立ちはだかる事実を口に出して表現しようとするけど、上手く声にならないようだ。

 でも、わざわざ口に出すまでもなく、一目瞭然だった。


 長いストレートの黒髪、大きめの茶色い瞳、細くて短めの眉、小さくて形のいい鼻、微かに濡れた唇……。

 少々子供っぽいけど、ぱっと見て多くの人が可愛いと感じるような、そんな整った顔を携えた頭部が、でゅらちゃんの見慣れた首の上にしっかりと乗せられていた。

 ……いや、乗せられていたという表現はおかしいな。


 今ぼくたちの目の前にいるでゅらちゃんは、紛れもなく、可愛らしい顔立ちをした女の子だった。



 ☆☆☆☆☆



「ぐ……ダメだ……胸だけじゃなくて、顔も負けてる……」


 みゃーががっくりと肩を落として、ぶつぶつとなにか言っているようだったけど。

 それはともかく、どうしていきなり、でゅらちゃんの頭が出現したのだろう……?


「う~む、とりあえず、一旦部室に戻るか」

「そうね。上履きのまま飛ばされちゃったみたいだし」


 言われて自分の足もとを確認すると、確かにぼくたちはみんな、上履きのままだった。

 上履きのまま外にいたら、目立ってしまうかもしれない。

 る菜先輩の言うとおり、ここは一度部室へと戻って、ゆっくりと現状を整理してみたほうがいいだろう。


 ぼくたちは素早く、中庭から渡り廊下へと移動する。

 軽く上履きの裏についた砂をはたき落としたあと、ぼくたちはそ知らぬ顔で渡り廊下を歩き、オカルト研の部室のある特別教室棟へと向かった。


 ともあれ、いまだにぼくの中の違和感は消えないままだ。


 でゅらちゃんが抱いていた違和感は、頭が復活したせいだったと考えられる。

 ついさっきまで首の上になにもなかったのに、いきなり頭が乗っかったら、そりゃあ違和感もあるだろう。

 だけどぼくの違和感は、そういうものとは異なっているように思えた。

 とはいえ、その違和感の正体にまではたどり着かない。


 ま、そのうち気づくかもしれないし、今は考えないことにしよう。オカルト研の部室に戻ってから改めてじっくりと考えてみてもいいし。

 なんて思いながら、る菜先輩を先頭として列を成すみんなの最後尾につく。


 特別教室棟の一番端っこにあるオカルト研の部室まで歩みを進めると、ぼくたちの目の前には、思いも寄らない現実が両手を広げて待ち構えていた。

 そのため、ぼくはさっきの違和感について改めてじっくりと考える時間を、完全に失ってしまったわけだけど。


「あれ……開かないよ?」


 ドアを開けようとしたみゃーが首をかしげる。

 他の人が代わっても、カギがかかっているのか、ドアはガタガタと音を立てるばかり。

 さっきまで、開けることができたはずなのに……。

 そして異変に気づいたぼくは、ドアの上のほうを指差しながら、つぶやき声を漏らした。


「ねぇ、これって……どういうこと……?」


 みんな、呆然と立ち尽くすしかなくなる。

 ドアの上にあるプレートには、「調理実習室」とはっきり記されていた。

 そもそもそのドアには、「オカルト研究会部室」と書かれた紙も、貼りつけられてはいなかったのだ。


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