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みゃーの父親は作家だった。
主に小説を手がけていたけど、扱うジャンルは、オカルトにホラー、SF、時代小説、恋愛小説まで様々だ。
中でもオカルトものと時代ものには多大な感心を寄せていたようで、小説だけではなく、オカルト研究本や歴史研究本なんかも執筆していたらしい。
おじさんの書いたオカルト研究本は、閃太郎も愛読している。
愛鳩鬼羅。
ペンネームみたいだけど、それがおじさんの本名だ。
おじさんの時代小説には「宮姫様と泉之進」という有名な著作がある。
わがままでおてんばな宮姫様を、家臣の泉之進が四苦八苦しながら守り続ける内容だ。
キャラクターの名前からなんとなく想像はついたけど、宮姫様と泉之進は、みゃーとぼくをイメージしているらしい。
以前読んでみたことがあるけど、泉之進にとっても共感でき、どっぷりと引き込まれてしまった。
確かに、みゃーとぼくの関係に、非常に近いように思えた。
おじさんのことは、とても優しくて大好きだったけど、ちょっと信じられないような発言をする場面も多かった。
オカルト研究に没頭するのは実際にタイムスリップしたことがあるからだとか、そのときに見た記憶を時代小説にしているから、自分が書いているのは実は小説ではなくノンフィクション作品なのだとか……。
そんな痛い発言をするおじさんと夫婦だなんて、みゃーのお母さんは大変だ。なんて考えていたのだけど、おばさんはいつも笑顔だった。
もちろん苦労はあっただろう。それでも、おじさんのことをすべて受け入れているように思えた。
慎ましやかな大和撫子、といった雰囲気のあるおばさん。……みゃーにも少しは見習ってほしいところだ。
おじさんは、三年ほど前に亡くなってしまったけど。
ぼくには、男と男の約束がある。
たとえどんな相手が現われても、ぼくはみゃーを守る。それだけは、絶対に成し遂げなければならない。
それは、おじさんの願い。だけど同時に、ぼくの願いでもある。
みゃーは、他の誰でもない、このぼくが守る!
恥ずかしくて本人には面と向かって言えやしないけど、その思いは今でも、ぼくの心の中で熱く燃えたぎっているのだ。
……もっとも、ぼくなんかで本当に守りきれるのかは、かなり疑問が残るけど。
月見里さんに助けてもらうとか、いざとなったら閃太郎をおとりにするとか、そういった方向で手を打つことにしようかな……。