いじめっ子とイカズチ
ユウ君から話を聞いた後、僕はできる限り早く保健室に迎えるように足を動かした。
そのうち、げらげらという嫌な笑い声とともに、「やめて、ください。」というか細い声が、聞こえてくる。それは紛れもなくイカズチの声だった。
「なあ、そんなに嫌なら、あんときみたいに雷出せばいいじゃん。
なに?いい子ちゃんぶってんの?災害のくせに。」
それはあまりにも鋭い刃
「つーか、何で雷なんか出んの、おい!喋れよ。」
「それは、施設の人が、生まれたときに、」
「施設?もしかしてお前、家族いねぇの?
はっ、だからあんとき答えられなかったんだ。」
「それ、は―「僕がイカズチの家族だよ。」
「家族ならいるさ、僕にそれに姉さんもいる。」
見ていられなかった。家族を侮辱する彼の口ぶりを
それを真正面から受けるイカズチを
おびえた家族を、見ていられなかった。
「はっ、これお前の兄貴?ハハッ血もつながってねーのに兄貴?家族ってのは血がつながってるやつのことなの、お前のこれは家族ごっこ。お前が惨めで無様だから仕方なくそう言ってるだけで、本心から家族だなんて、思われてねーし、お前も思っちゃいねーんだよ!」
「そうだね、確かに家族というには一緒にいないし、家族というにはまだぎこちない、でもね、少なくとも僕は、彼女のことを家族だと思ってる。彼女のためなら、学校を停学になってもいいとすら思っているよ。」
正直、腹が立っていたのだろう、手が出そうになる。
「はっ!家族ごっこのシスコン野郎かよ。きもいんだよ。そういうの
てか、俺ら遊んでただけじゃん。
ただドッチボールでボール投げて、そしたらこいつが雷なんか出すからわりいんじゃん。
おれ、本で見たことあるぜ、そういうの魔女っていうんだろ。
災害の兄貴さんよ。」
平静を装うことも煩わしくなってくるような語り口調だった。
「てか、災害なんだから学校なんてきていいわけないだろ
魔女は魔女らしく引きこもっとけよ。」
殴ろう、プツンと糸が切れたように、そう思った。腕を振りかぶって、思いっきり振り下ろそうとした。
「やめて!にいさん!」
イカズチはバチバチと指先が電気をまとっている。
それが、僕の指先に触れて、僕は、がくんと視界が揺れる。
かなめ君といわれた少年は僕が倒れたことに驚き「きもちわる」と言って、どこかに行ってしまった。
そのあとのことは、あんまり覚えてない、覚えているのは必死にイカズチが僕のことを呼んでくれたことと「にいさん」と呼んでくれたことだった。
ほのかな日光と白いカーテンが視界に映る
そこには不安そうな顔のイカズチと、安堵の顔を浮かべ、徐々に表情を怒りにトランジションしようとしている姉がいた。
「すみません、どうしても止めなきゃって、思ったら、止められなくて。」
「それはいいよ。僕がしゃしゃり出たくせに怒りに身を任せてしまったのが悪いんだから。」
「まったく、どうしてこうも無茶をするんだい。かなめは捨て台詞をはいて、教室に戻ったよ。」
「そのあと篠瓶ユウさんという方が兄さんを運ぶと言ってくれたので、私は、ねえさんを連れてきました。」
「そうか、ユウ君はどこに?」
「もう授業だから身内以外は返したよ。はぁこれだけで結構な身内贔屓になるんだ。勘弁しておくれよ。」
「そうか、またお礼をしないと」
僕は起き上がりながら、雷をうけたであろうところを見る。
「傷跡は残ってないね。ただ少し痺れるかもしれない。」
痺れるといっても、数分後には治る軽い痺れだ。
「施設で、そういう改造を受けたんです。カミナリが放電する改造を受けました。そのカミナリは普通のカミナリとは違い人には後遺症が残らず電気が流れるようにと改造、開発されました。
なので、あざは残らないんです。」
創ったのが人間であれば、保険をかけるのは、おかしくない。ただ醜いだけで
「改造は一年かけて行われました。
春は両手足、ギプスのようなものをはめさせられ、電流を流されました。
夏は胴体、台に裸で寝させられ、針をいたるところに刺され、それを繋ぐように電流を流されました。
秋は頭部、椅子に縛られ、頭に鉄の帽子を被せられ、電気を流されました。
冬は、脳、脳に何かを埋め込まれました。そのころには完全にカミナリは能力になってました。
そこから攻撃性を排除するために、ただ、そこで失敗したんです。カミナリを制御するための異物を脳に埋め込む直前私は能力が暴れだしました。幸い、なのか異物は完全に埋め込まれたんですが埋め込まれる前の最後の落雷で施設は大損壊、私は悪魔として、路地裏に捨てられました。」
「そこに僕が現れて現在に至るということだね、話してくれてありがとう。」
許せない、がどうにもできない。無力感、それは今からではどうしようもないから、今の彼女をどうにかしよう。あの少年は性根が悪いが、こちらに非がないわけでもない。イカズチは確かに雷を放った。放ったというより暴走したが近い。だが、さっき僕が大人気もなく彼に殴りかかってしまいそうになった時は、自分の意思で雷を仕えていたかのように思える。
「イカズチ、カミナリ今出せるか?」
「え?いえ、今は出せないです。カミナリが出るときは、ビリビリと体中に広がる電流が感じられるはずなので。」
「そうか、わかったイカズチ、雷を操れるようになろう!」
「え⁉えっと?どういうことですか」
「かなめ君は腹が立って殴ってしまいかけたけど、彼の言っていることはいくつかは正しかった。
イカズチは今感情や防衛反応で、カミナリが出てしまうことがあるだろう。だからそれを制御できるようになりたいんだ。」
「そ、それは、もちろん操れるようになりたいですけど。」
「できるんじゃないかい。雷なら、私は、そう思うね
なんせ、怒りに身を任せ気味な我が弟を止めてくれたんだ。よっぽど理性的だ。暇ができたら。修行私も手伝うよ。」
「それで、怒りに身を任せがちな我が弟よ。説教だ。よく聞きな、まず!言葉の暴力を振るってきたかなめが悪いのはある、あるが、もっと悪くなってどうする。暴力というのは言葉の一歩先だ誰も幸せにならない、唯一あるすっきり感もその後の雷の顔を見てすぐになくなる。
いいかい暴力はだめだ。
わかったね。」
「う、はいお姉さま。」
確かに何かと感情が前に動きだすのは僕の悪い癖だ。
うつむいた僕を励ますように姉は言葉をつづけた。
「なにも復讐をするなとは言ってない。
やり方を選べと言ってるんだ。何明日には方法を考えてやる
お姉さまに任せとけ。」
二人は顔を見合わせる。
やっぱり姉さんはすごい、と
彼も
彼女も
そう言っているように感じた。




