自己紹介とイカズチ
「つまらない部屋だけどくつろいでくれると嬉しいな」
彼女を僕の部屋に連れてきた。学校には、休む連絡をした。何せ直前に言ったもんだから担任教師の呆れた声を聞く羽目になったが、この少女を守れるなら安いものだ。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
モジモジとしながら彼女は言う
「イカヅチ」
それはさみしそうに響く。
「イカヅチか、とてもいい名前じゃないか!名は体を表すと言うが、まさにそうだ。」
僕は言った。彼女はバツが悪そうにしていた。
まずったか?少し心が高揚しすぎたのかよからぬ事を口走ったのかもしれない。
「イカヅチは周りを傷つけると教わりました。だから少し複雑です。」
僕は彼女の表情の理由を理解した。そしてふつふつと怒りが湧く、そんなことを教えたやつとそんなことを言ってしまった自分に、
それらを宥めながら僕は言った。
「なかなかにデリカシーのないことを言ってしまった。ごめん、でもね、本当にイカヅチというのはいい名なんだよ。」
少女は、不思議そうな顔をする。
そんな彼女に僕は続ける。
「古代のギリシャと言う国ではね一番偉い神様はカミナリの神様つまりイカヅチだったんだよ。その神様は自分の兄妹を命をかけて守ったんだ。だから誇っていい雷やイカヅチはすごいんだよ!」
大変美化してしまったがギリシャ神話の神ゼウスの話をしてみた。なんせ雷の神様だ。彼女を肯定するのに最適だろう。
彼女は虚ろな瞳の中に明らかに光をともした。英雄譚を聞かせただからだろうか、見た目相応の反応が来て僕は嬉しくなった。
「そうなんですね、私は触れた人々を傷つけてしまうと言われ隔離され続けましたがそんなことも有り得るんですね!」
なかなかに闇の深い発言にこころがじくりと痛むが顔に出さないように彼女に言う。
「例え誰かを傷つけようと、痛む心さえ持っていればそれでいいんだよ。僕はそれでいいと思ってる。」
「痛む心ですか?」
「心が痛み悼めるんなら君は人間だ。人間ならともに助け合うべきだ。少なくとも僕はそう思っているよ。」
「私は人間になりたい、とってもなりたいです!」
目をキラキラさせていた。あの太陽や周りを歩く人々と違い、その光は僕の心にすっと入り、暖かさを感じさせる。
彼女を人間だと認める人間を一人でも多く増やそうと、この熱心でいて可愛らしいまなざしを見た瞬間決意した。




