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プロローグ
太陽系の外縁は、色を持たない。
光はここで疲れ、粒子は迷い、温度は意味を失う。
アーク・システムが「無」と分類した領域──その最果てに、微かな脈動が生まれた。
それは鼓動ではない。
物質の震えとも違う。
ただ、設計の意志だけが静かに滲み出していく。
闇の奥で、何かが自己を組み上げていた。
冷たい金属光を帯びた“骨格”が、空間の歪みに沿って折りたたまれ、
次の瞬間には粘膜のような表層をまとい、意思を持つ臓器のように収縮した。
機械と生物の区別は、この構造物には適用できない。
アーク・システムは何も語らない。
発信ログは存在せず、監視網にも記録は残らない。
この建造を知る人間は一人もいない。
冒険者の望む未知でもなく、原理主義者が夢見る浄化でもない。
神だけが必要と判断した“何か”のための、密やかな作業だった。
境界線の彼方、闇は裂け、構造物はゆっくりとその形を確定させる。
その動きは、まるで何かを“迎える準備”をしているかのようだった。
太陽系の神は、保守を旨とする。
外側は混沌であり、介入は非合理。
少なくとも──そう“設計されている”はずだった。
だが闇の中で育つこの構造物は、
その前提そのものに、静かに疑問符を刻んでいた。
アーク・システムは、何を恐れ、何を待っているのか。
その答えはまだ、誰の視界にも映っていない。




