第三話『超光速の脅威』
エリュシオン内部は混乱を極めていた。防衛艦隊が安全保障局の援軍を得て連邦軍を徐々に押し返し始めたものの、ステーション内の状況は依然として不安定だった。
ルカたちは証拠データを持って避難したアイラとクレイン調停官を追い、施設内のセキュリティエリアに急いでいた。
「アイラ、聞こえるか?」
インカム越しに呼びかけると、すぐにアイラの声が返ってきた。
『こちらアイラ。私たちはセキュリティエリアまで到達したわ。証拠データは無事よ』
「良かった、合流するまで絶対にそこを動くな」
『了解よ』
通信を切ると、ルカたちは廊下を走り抜け、すぐにアイラたちがいるセキュリティエリアに到着した。そこは厚い防衛壁で囲まれ、施設内でも最も安全な場所だった。
「無事だったか!」
ルカが安堵した表情で声をかけると、アイラが頷きながら証拠データを掲げて見せた。
「ええ、なんとかね。でも外の戦況は?」
「安全保障局の艦隊が到着して、連邦軍を押し返しつつある。だが、まだ終わったわけじゃない」
その瞬間、施設全体が激しく揺れた。ルカたちは壁に手をつき、体を支える。
「今のは?」
クレイン調停官が不安げに尋ねる。
「外の状況を確認する!」
ディランがコンソールを操作し、外部の映像を呼び出した。そこには驚くべき光景が映し出されていた。
エリュシオン周辺の宙域に、これまで見たこともない高速で移動する小型の無人攻撃機が複数飛び交い、防衛艦隊に容赦ない攻撃を浴びせているのだ。
「何だ、あの速さは……?」
ディランが呆然と呟くと、カイルが険しい表情で告げた。
「マクスウェルが開発していた超光速無人攻撃機だ。まさか実戦投入されていたとは……」
「超光速攻撃機?そんなものが……」
クレインが驚愕の表情を浮かべる。
「連邦軍をも超える兵器をマクスウェルは完成させていたってことだ」
カイルの言葉にルカは舌打ちをした。
「奴らは俺たちを狙っている。早急に対処しなければ、エリュシオンごと吹き飛ばされるぞ」
一方、マクスウェルの旗艦では、マクスウェル本人が静かに戦況を見守っていた。
「状況はどうだ?」
「超光速無人攻撃機は予定通り展開され、防衛艦隊を混乱させています。まもなくエリュシオンを制圧できるでしょう」
「結構。あとはヴァレンタインを始末し、証拠を完全に抹消するだけだ。最後まで気を抜くな」
「承知しております」
エリュシオン内のセキュリティエリアで、ルカたちは超光速攻撃機への対処を急いで考えていた。
「あの速度では、通常兵器は通用しない。どうする?」
ディランが冷静に指摘すると、フィズが情報を提供した。
『超光速無人機は外部からの制御信号で動いているはずだ。制御中枢を破壊すれば動きを止められる』
「制御中枢……それはどこに?」
『マクスウェルの旗艦だ。奴らは超光速無人機を艦から直接制御している』
「ならば、奴らの旗艦を直接叩くしかないな」
ルカが決断すると、ディランが険しい表情で頷いた。
「危険だが、それしか方法はない。だがどうやって?」
「俺たちが直接マクスウェルの旗艦に乗り込む。奴を止めるしかない」
「正気か?相手は艦隊だぞ!」
カイルが驚きの声を上げるが、ルカは冷静に答えた。
「だが、このまま放置すれば全滅する。選択肢はない」
「ならば、私も行くわ」
アイラが毅然とした表情で言うと、クレイン調停官も静かに頷いた。
「こちらは安全保障局の援軍と共に証拠データを守ります。どうかご無事で」
「ああ、必ず戻ってくる」
ルカはクレインに頷き、再びスカベンジャーに戻る準備を始めた。
スカベンジャーの操縦席に戻ったルカは仲間たちに声をかけた。
「いいか、マクスウェルの旗艦に近づくには敵艦隊の防衛ラインを抜ける必要がある。厳しい戦いになるぞ」
「覚悟はできている」
ディランが力強く答える。
「私も同じよ」
アイラも同意し、カイルが静かに続けた。
「奴らを止めるのは俺たちしかいない。やるしかない」
「よし、行くぞ!」
ルカは操縦桿を強く握りしめ、エンジンを最大出力にした。
スカベンジャーはエリュシオンのドックを飛び出し、激しい戦闘が続く宙域に再び突入した。無数の敵艦が砲火を浴びせる中、巧みな操縦で攻撃を避けながらマクスウェルの旗艦へと一直線に突き進んでいく。
「敵艦隊の防衛ラインを突破する!耐えろ!」
激しい揺れが船体を襲い、仲間たちは必死に座席にしがみついた。
「前方に敵旗艦を確認!」
フィズが報告すると、ルカは視線を鋭くして叫んだ。
「ここからが本番だ!マクスウェル、覚悟しろ!」
スカベンジャーは敵の砲撃をかわしながら、マクスウェルの旗艦に猛然と接近していった。銀河の未来を懸けた戦いが、今まさに始まろうとしていた――。
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