第二話『エリュシオンの攻防』
エリュシオン宙域は、激しい砲火と爆発の閃光に包まれていた。
連邦軍特務艦隊が怒涛の攻勢を続ける一方、星間調停機構の防衛艦隊も懸命な抵抗を続けている。無数の宇宙船が入り乱れ、混乱の極みとなっていた。
その激戦の最中、スカベンジャーはエリュシオンのドックへ向かって高速で突入していた。
「ドックまであと少しだ!」
ルカが叫び、砲火を巧みにかわしながら操縦桿を操作する。後方では連邦軍の攻撃艇が執拗に追いかけてくる。
「後方に敵機!接近速度が速い!」
フィズが警告を発すると同時に、スカベンジャーの後方シールドが敵のレーザー砲撃を浴び、激しく揺れた。
「くそ、シールド出力低下!あと一撃受ければ突破される!」
ディランが素早く操作パネルを叩くが、追尾してくる敵機は離れない。
「このままじゃやられる!」
カイルが鋭く叫ぶ。
「援護するわ!」
アイラが即座に席を立ち、後方砲塔のコントロール席へ滑り込んだ。彼女は迷いなく照準を敵機に合わせ、レーザー砲を連射した。
敵の攻撃艇が被弾し、炎を噴きながら逸れていく。
「やったわ!」
アイラの喜びの声が船内に響くが、安心する間もなく、新たな敵艦が接近してきた。
「敵旗艦アルテミスが直接こっちに向かってきてる!」
フィズが緊迫した声で報告する。
「避けるぞ!」
ルカは即座に回避機動を取り、スカベンジャーは鋭く旋回した。だが、アルテミスは逃げ道を塞ぐように回り込み、通信を開いた。
『ヴァレンタイン、抵抗は無駄だ。大人しく投降しろ!』
「レイラ中佐、悪いがそれはできない!」
『ならば沈んでもらう!』
アルテミスの砲撃がスカベンジャーを襲い、船体が激しく揺さぶられる。
「このままじゃシールドが持たない!」
ディランが叫んだ瞬間、エリュシオンから防衛艦隊の援護射撃が始まった。強力なレーザー砲がアルテミスを狙い、その隙にスカベンジャーは何とかドックへの着艦態勢を整える。
「よし、着艦だ!」
スカベンジャーはドック内へ滑り込み、急制動をかけて停止した。船体からは煙が上がり、機体各所には無数の傷跡が残っていた。
スカベンジャーを降りたルカたちを、クレイン調停官とその護衛隊が待ち構えていた。
「間に合いましたね、ヴァレンタイン船長」
「ああ、ギリギリだがな。状況は?」
「厳しいです。だが、あなた方が到着したことで士気が高まっています。安全保障局の艦隊もまもなく到着するでしょう」
「それまで耐えられるか?」
「耐えるしかありません」
クレインが固く言うと、エリュシオン全体が再び激しく揺れた。
「敵が施設内部まで侵入しています!」
護衛隊の兵士が報告する。
「急いで司令室へ!証拠のデータを安全な場所に移動させなければ!」
クレインが叫ぶと、ルカたちは即座に施設内部へと走り出した。
司令室に到着すると、オペレーターが次々と侵入した敵兵の位置を報告していた。
「セクター5と8が突破されました!」
「司令室までの距離は?」
「あと数分です!」
「急いで証拠データを回収し、安全な場所へ移動させろ!」
クレインの指示で職員たちが慌ただしく動く中、司令室の入口から銃声が響き渡った。
「敵だ!」
ルカとディランは即座に遮蔽物に隠れ、入口から侵入してきた敵兵に向けて応戦した。激しい銃撃戦が司令室内で繰り広げられる。
「アイラ、証拠データを回収して安全な場所へ!」
ルカが叫ぶと、アイラは迷わずターミナルに駆け寄り、素早くデータを回収した。
「回収したわ!」
「よし、クレイン調停官と共に脱出しろ!」
「あなたたちは?」
「ここを守る。すぐに追う!」
アイラはクレインと共に司令室の裏口から脱出し、ルカたちは敵兵との激しい銃撃戦を続けた。
「多すぎる!持ち堪えられない!」
ディランが焦りながら叫んだその瞬間、新たな通信が入った。
『こちら安全保障局艦隊。エリュシオン宙域に到着した。これより連邦軍を攻撃する』
「援軍だ!」
カイルが安堵の声を上げると、敵兵の攻撃が一瞬止まった。司令室内に再び通信が響く。
『連邦軍艦隊、直ちに攻撃を中止し、投降せよ。抵抗は無駄だ』
安全保障局艦隊の警告に、連邦軍兵士たちは動揺し、一部は後退を始める。
「チャンスだ、押し返すぞ!」
ルカが叫ぶと、仲間たちもそれに続き、激しい反撃を開始した。敵兵は次第に劣勢となり、司令室内から撤退していった。
「何とか持ち堪えたな……」
ディランが息を切らしながら呟く。
「だが、まだ終わりじゃない。マクスウェルの動きもある」
カイルが鋭く指摘する。
「アイラたちと合流し、証拠データを守らなければ」
ルカは立ち上がり、仲間たちと共に司令室を出て、エリュシオン内部を駆け抜けた。
彼らを追い詰める最後の敵、マクスウェルの恐るべき兵器が、すぐそこまで迫っていることを知らずに――。
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