アニメ
終わった。そう一言、小さくつぶやいた。
部屋は暗い。テレビの青白い光だけが、静かに顔を照らしている。
さっきまで流れていたバラード調のエンディング曲はもう止まり、画面は黒く沈んでいた。
──最終回。
愛の言葉も、涙も、別れも、そして2度目の出会いも、全部見届けた。
好き同士だったふたりが、結ばれて、未来を誓って、画面のフェードアウトと共に消えていく。
綺麗なハッピーエンドだった。
それなのに。
――寂しい
楽しかった文化祭の後の教室にひとり残されたような気持ち。最後の花火が夜空に消えたあとのような気持ち。
ついさっきまでそこにいた彼女。
主人公の隣で、ぎこちなくもはにかんだ笑顔を見せていたあのヒロイン。
可愛くて、まっすぐで、でもどこか不器用で。
──どこかあの子が、自分の好きだった人に似ていた。
立ち上がり、カーテンを少しだけ開けた。
夜の街には、幾多もの光が瞬いていた。
見慣れた景色なのに、少しだけ色が薄く見える。
アニメは終わった。
でもこの感情は終わらない、いや終わらせてはくれない
恋をして、傷ついて、救われて。
それを見ていた心は、今もまだ、彼らと一緒にいたかったと叫んでいる。
――なんでこんな気持ちなんだろう
答えはない。
けれど、その想いはきっと宝物だ。
震える手でスマホを手に取り、そっとつぶやいた。
――ありがとう
たとえそれが、画面の中だとしても
本気で心が動いたなら、それは確かに“愛”だったのだから。