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この世界の王になる

「うげぇ入団式緊張するなぁ………だってきっと小中学校みたいなことがあるんでしょ?テレビで見たことあるもん………」とシャドウに一方的に話しかけ不安を吐露する。


僕が緊張しているのは入団式に参列することじゃあない。テレビで見たことのある名前を呼ばれて返事をするやつが怖いのだ。


返事をしたときに声が裏返ると一生バカにされて過ごしていかないといけないらしい。テレビの中でそう言われていたからきっとそうだ。


『そんなこと言ってもなにも始まらん。とっとと行くぞ。』シャドウは僕の気持ちなんか微塵もわからんというように吐き捨てた。


「はぁ〜い………」

そんな言葉に導かれ、喉の調子を気にしながらもシャドウと共に家を後にした。

―――――――――――――――――――――

防衛団本部に着き辺りを見渡す。試験会場では三十人以上もいた入団希望者も今ここにいるのは僕を含めても十人もいない。


(試験合格率めちゃくちゃ低いのは知ってたけどここまでとは。)と驚きながらも(こんな少数精鋭の中僕みたいな奴がやっていけるのか?)と不安も感じる。


「あっ、実くんじゃん!」と後方から聞いたことのある声がする。槍さんだ。


「あっ、槍さん。槍さんも受かってたんだね。」と自然に受け答えをする。


「そうそう!しかもちゃんと念願の三班だよ!同期だしこれからもよろしくね!」と元気よく言い放たれる。そんな元気に気圧されながらも「うん、よろしく。」とだけいうことができた。


「これから入団式を始めますので自分の名前の書いてある椅子にお座りください。」とアナウンスが入った。

「じゃあまた後で」と静かな声で言われた。

緊張はするけどやらなきゃいけないときは必ず訪れると腹を括った。

―――――――――――――――――――――

本当に緊張して損をした。あんなに緊張していた入団式は名前を呼ばれることも立ち上がることもなく、何も動きがないまま終わった。


「これから各班の棟へ案内を開始します。」と説明されると前の方に背中に1、2、3という数字の書かれた紙が貼ってある人たちが出てきた。


「自分の所属する班の番号が貼ってあるひとについて行ってください。」という指示に従い3の紙が貼られている人のところへ行く。3の紙が貼られている人の側には僕含め3人しかいない。


僕と槍さん、そして背の高いメガネをかけた人が集まった。これが僕の同期か。どっちも僕より身長高いのずるい、分けてほしい。


「よし、これで全員だな!それじゃ、棟までちゃんと着いてきてね〜後輩たち!」と紙の貼られたお兄さんは言い、僕らは後ろに着いていった。

―――――――――――――――――――――

そこから5分ほどだろうか。お兄さんに着いて歩いていると大きな建物が見えてきた。


「ここが僕ら三班の棟だよ!」とお兄さんは手を差し自慢げに言った。

棟というか一つの学校のような大きさの建物だ。


「あっ班長帰ってきたよー!」と元気のいい女の人の声が棟のほうからする。

どうやら案内をしてくれていたのは僕らの班長だったらしい。


「はぁい。班長のお帰りですよ。」と班長が返事をし「あっ、さっき話しかけてきてたのが僕の同期の花山翼(はなやまつばさ)だよ。あいつは___」すると突然棟のすぐ側にあった花壇から植物が伸び、班長の足を引っ掛け思いっきり顔からずっこけた。


僕ら三人が大丈夫かと駆け寄っている中棟の方では花山さんが大爆笑している。

「まぁた引っかかった〜。」


バカにされた班長は鼻血を出しながらは起き上がり「……あいつは悪戯をするのが好きなんダッ。気をつけてネッ。」と少し怒りを露わにして言った。


「あいつは後でシバくとして棟に入ろうか!」と楽しみで仕方がないといった笑顔で班長はいった。


「きゃあーーこぉわぁいぃぃ♪」とバカにしたような態度でいう。

この二人のちょっとしたこのやりとりを見ただけで凄い仲が良いことがよくわかる。


僕たちは班長に導かれるよう棟の中へと入った。

玄関を抜け、廊下の先の部屋の前で止まる。


「ここが、僕たちがよく話し合いとか依頼とかの整理を行う場所。社会人風に言うなら"会議室"ってとこかな。」と班長が言うと後ろから一緒に来ている花山さんが「ダサッ」と一番心にクるチクチク言葉を発した。


案の定傷ついたのかそれからの部屋紹介は端的に紹介された。


「あそこはトイレねっ!」

「あっこはトレーニングルーム!」

「ここは互いに戦ったりしてもいいグラウンド!」

「ここにもトイレがあって、その隣の部屋が能力を鍛えたりすることができる用の機械があるとこ!」

と簡単に施設の場所と内容を教えてくれた。


「そしてここの廊下に繋がってる部屋が各々の自室。好きに使ってもらって構わないからね!」と一本の廊下を指差して班長は言った。


「一通り部屋の説明は終わったし、三班の名誉あるメンバーを紹介しよう!!」と班長は目を輝かせて言った。


「というか僕の自己紹介がまだだったね。」と少し真面目そうに口を開く。「改めまして、僕は三班班長杠葉疾風(ゆずりははやて)だ。」と簡単に自己紹介をした。


「あの、班長の能力ってなんなんですか?」と槍さんが聞いた。


「あっ、言うの忘れてた、昨日から自己紹介のテンプレを見て作ってきたんだけどな……」と少し悲しげに言うとコホンと咳払いをして口を開いた。


「僕の能力は自分が払った風の切れ味をあげても良い能力、名付けて疾風刀(かまいたち)だ。」とかっこいい(?)二つ名と共に教えてくれた。


「僕のことはこれぐらいにして、すぐそこにいる僕のストレスの原因である彼女に自己紹介してもらおうかな。」と花山さんを見る。花山さんはなんだか上機嫌のようで意気揚々と自己紹介を始めた。


「ご紹介あずかりました!私の名前はぁ、花山翼とっ、もぉします!三班の癒し枠!趣味は悪戯で皆さんでこれから遊ばせていただきたいと思いまーす!よろしくね〜♪」元気がいいようなふざけてるようなユニークな自己紹介をしてもらった。


「ちなみに彼女の能力は元からある植物を使う能力だよ。名付けて___」と二つ名を言おうとしていたら横から怒り拳が班長の頭の上から降り注いだ。

「変なダサい名前付けないで。」割とマジなトーンで言われたからかひどく落ち込んでしまった。


「じゃあ多分部屋の中に今日ここにいる最後の一人がいると思うから早速行こうか。」と廊下の先にある部屋の前で止まった。

コンコンコン

部屋の扉をノックすると扉が開き、背の高い女の人が部屋の中から顔を出し、「何か御用でしょうか?」と丁寧な口調で聞いてきた。


するとすかさず班長が「はい!こちらがウチでめちゃくちゃ頼りになる女性班員の椿葵(つばきあおい)さんでーす!」と言い出す。

椿さんは驚きの余りによろけてしまった。


「やめなよ疾風、葵ちゃんこういうの苦手だって知ってるでしょ?私だって悪戯我慢してんだからかさ♪」と花山さんはいうと「大丈夫?」と椿さんに手を差し伸べていた。


「………はっはいっ。大丈夫です。少し、驚いただけなので……」と花山さんの手を取りながらいった。


「そして彼女の能力は妖精を使って治療とか情報伝達ができるんだ。名付けて"妖精使役者(フェアリーテイマー)"」と決まった!と言わんばかりの腕組みを見せた。


「えっと、新しく来た人達ですよね。私も去年来たばかりの未熟ものですけど精一杯あなたたちのサポートをできるよう頑張るので、その、よろしくお願いします、」と僕たちのような後輩にも丁寧に接してくれた。


「よぉし、今施設内にいる人の自己紹介は全部済んだし、次は新班員の自己紹介だ。じゃあ左から順番で自己紹介しようか。」とメガネの人から自己紹介をすることになった。


一歩前に出て、後ろで腕を組み「俺の名前は渡希望(わたりのぞむ)。能力は見ただけで人のコンディションや行動の癖などがわかる能力で、目標はいち早く三班で仕事ができるようになることです。よろしくお願いします。」と大きく声を張った。


拍手が鳴り止むと「能力は、またの名で"診断者(ドクター)"かな?」決まったと言わんばかりのキメ顔で班長は花山さんたちのことをみる。

当たり前のように正義の鉄槌が下され班長はしょぼくれた。


「じゃあ次は今年唯一の女の子!自己紹介をどうぞ〜」と花山さんは槍さんを指差した。


「はい!私の名前は槍夢華です。能力は武器を操れること、目標は人の命を救えるようになることです!よろしくお願いします!」と槍さんは自己紹介を終えた。


拍手が鳴り止むと流石に懲りたと思われた班長は

「う〜ん、良いのが見つからないがある程度決まったぞ!君の能力のまたの名を"舞武操(まぶそう)"!」と聞いたことのない単語を言い出した。


先輩方含め全員が理解できておらず、ポカンとしていると「僕の造語さ、我ながら惚れ惚れするセンスだ。」と天を仰いでいた。その涙の意味は知らない方がいいだろう。


「コホン。じゃあ最後に君だよ〜。自己紹介をよろしく!」終末の音はじわじわと自分のもとへと歩みを進める。心臓は張り裂けそうなほどの速さで打っている。

しなければ終わらないのなら早く済ませて潔く死のう。


「はっはい、僕の名前は、影村実です。えっと、、能力は、、その、自分の影と、えっと、自分の物の影を使えます。えーっと、目標は、えっと、子供が安心して暮らせるようにすることです。よっよろしくお願いします。」

.........死んだ。


拍手が鳴り止むと「よし。これで新班員の自己紹介は済んだし、今日はお開きにしようか。」花山さんはそういった。


突然元気のなかった班長が起き上がった。

「まだ一人自己紹介終わってないじゃん。」

班長はそういうと僕含め周りの人たちはみんなキョトンとしていた。

「何言ってんの、馬鹿みたいにイキって頭おかしくなったんじゃない?」花山さんは心配をしながらも辛辣な言葉を返した。


「だって、君の影の中にいる子、自己紹介してないでしょ?」

!?

別に隠すつもりは無かった。完全シャドウの存在を緊張で忘れてしまっていたのだ。


影の中に完全に隠れていたシャドウが外からみて認知できるなんて、、、


「忘れてました、シャドウ出ておいで。」

影の中からドス黒いナニカが顔を顕にする。


『どうも。俺の名前はシャドウ。コイツの影の中に住んでる。能力はコイツに俺を経由して影を操れる能力を使えるようにすること。俺の目標はこの世界の王になることだ。どうぞよろしく。』と影から腕を出し腕を組みながら簡単に自己紹介を済ませた。


知っていた三人を除き全員がポカンとなっていると「じゃあ君たちの能力はまたの名を"運命共同体(ベストフレンド)"だね。一人じゃ生きていけないものと一人じゃ能力を活かしきれないもの。それに運命共同体という言葉はめちゃくちゃあう。」とポカンとなっている人たちを置き去りに自分の世界を展開していた。


「かっ、可愛い!」突然椿さんが口を開いた。


「これって妖精の一種なんでしょうか?それとも精霊の類?それともそれとも死者の霊的なやつなのでしょうか?どちらにせよ謎が多い存在ですねぇ!」

さっきまでの大人しい雰囲気からは考えられないほどの豹変っぷり。


さっきとは打って変わって口数が増える。まるでマスコミに囲われているかのようだった。


「はぁ、こっちも忘れてた、、、この子オカルトチックな話が大好きでね、だから妖精たちに愛されてるんだけどね。気にしないで。君には何も被害はないはずだから。」そういって花山さんは椿さんを引っ張って、僕から離した。


「よし!これでやっと自己紹介が終わったかな?コイツも葵ちゃんもこんなんだからさ、今日はもうお開きにしようか。」と椿さんを抑え、班長を引きずりながら花山さんはいった。

一番この中で根が真面目なのは花山さんかもしれない。


「ちなみに明日から基礎的なことやるからしっかり疲れをとってね♪コイツらといるの疲れたでしょ。じゃあごゆっくり♪」

そのまま花山さんは二人を部屋に戻して自分の部屋へと帰っていった。


「それじゃあみんなまた明日!」と槍さんがいうと各自、自室へと帰っていった。


なんとも内容の濃ゆい1日だった。

変人ばかりだが、出会っただけですぐわかった。

明らかに僕の格上しかいない。今のままじゃ通用しないことはわかっているが、今は休むことしかできない。

明日に備えてもうゆっくり寝よう。

そのまま深く深く夢の世界へと入国した。

班長はなんかサングラス掛けてるイメージなんですよ

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