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少女

あらすじ

退院明けで疾風、翼に尋問された実。

過去に関する収穫はなかったものの憑依に関する情報を共有。

尋問は終わり、部屋に帰り休憩をし始めた。


実「...うわぁ、これ美味しい.....」


(病院のご飯生活のあとだから余計かな)


一人寂しい部屋にはズルズルとカップ麺を啜る音が響いていた。


実「ねぇ、シャドー?」


シャドー『ん?』


実「これ食べ終わったらちょっと相手してよ」


シャドー『ダルい、一人で素振ってろ』


実「え〜?」


暇つぶしの手合わせすら断られてベットに寝転んだ。


コンコン


部屋の扉がなる


翼「暇人さ〜ん?」


はーい、と返事して扉を開ける。


実「どうしました?」


翼「君の初依頼が舞い込んできました!!」


実「へ?」


____

半ば強引に応接室まで連れてこられてしまった。中には見知らぬ男性がおり、足と足の間で手を絡ませており、気が気でない様子だった。その男性の隣に翼さんは座り、僕は対面に座った。


翼「はい、こちらは依頼主さんの比和村英治(ひわむらえいじ)さん。」


(プライベートのときとは全く違う雰囲気...)


いつものような二マニマした雰囲気が全く感じさせない所作は別人かのように思わせるほどだ


翼「で、依頼内容は娘さんの捜索ですよね?」


英治「はい、そうです。」


翼「では、ゆっくりでもよろしいので現状を教えていただけますか?」


英治さんはひどく震えた声で何とか話し出す


英治「娘の名前は(えい)といいます。特徴なのは妻の死から脱色しきってしまった白髪で身長は130ほどです。」


英治さんはカバンからまだ髪色が黒色である女の子の写真を取り出し見せてくれる。


英治「娘は朝、友達と夏休みの宿題をすると言って場所も、友達の名前すら言わずに飛び出していきました。今から少し前、私でもよく知る娘の友達から家の固定電話に電話がかかって来たんです。”娘と山ではぐれてしまいました”と。」


涙を流し、ぐちゃぐちゃになりながら話す英治さんを見ているだけで心がキツく縛られる

その横でハッとなっている翼さんが目に入る


翼「まさかその山って__」


英治「はい、人死山(ひとしにやま)です。」


翼「なるほど......それはご自身での捜索を始めるよりも我々に話をしておいて大正解です。」


病院のテレビでよく見た場所だ。

行方不明になった人々は、大体この山の中で遺体となって発見される。そんな危険な山らしい。そして、その事件の全てが未解決事件となっており、呪がはびこっているという噂もちらほらあるほどだ。


英治「お願いします......危険なのは承知です......でも、妻が残してくれた唯一の宝物なんです......もう手遅れでも構いません、せめて妻と一緒にいられるようにしてやりたい......」


下を見ている英治さんからボツボツと大粒の涙が流れ出る。


実「......僕なんかでよければ手伝わせて下さい」


そんな言葉に英治さんはゆっくりと顔を上げ、驚いたように、希望を見たかのような表情を見せた。その様子に少し戸惑いつつも答えた。


実「あっ、えっと、僕も色々あって一人だったところを大人に助けられたことがあるんです。だから、今度は僕の番かなって......」


英治「ほ、本当に、ありがとうございます......」


肩をガシッと掴まれ感謝される。こうして、僕の初依頼は幕を開けた。

_______

英治「ここが人死山です。」


実「あっ、ここまでありがとうございます。ここからは僕一人で大丈夫なのでまた後で...」


英治さんの車で人死山まで送ってもらい、僕は少女の写真と懐中電灯を握りしめ車から降りた。


英治「では、また後ほど無線でお知らせ下さい。どのような結果でも受け止めますから......」


実「......はい、では」


そう言って僕は山の中に入り込んだ。


(日が落ちるまでがタイムリミットだとしてあと3時間以内には見つけたいな......)


山の中は、野生動物の鳴き声やら植物を揺らす音やらで以外にも賑やかだった。こんなにキレイな自然を見るのは初めてで感動するのと同時に、犯罪者のせいで普通の山でさえひどい名前がつけられている現状に怒りが込み上げてきた。


シャドー『はぁ、ここは影が多くて動きやすいな。』


実「あっ!」


僕は閃いた。シャドーと二手に分かれて探せば早く見つけられるのではないかと


シャドー『二手に別れるのは絶対に駄目だぞ。』


実「な、なんでだよ!手遅れになる前に早く見つけないといけないんだよ?それなのになぜ......」


シャドー『嫌な予感がする。それに、不意打ちにお前じゃ気づけんだろ。それで死なれて困るのは俺だ。』


事実そうだからなんとも言えない。最悪の手段を使うとしてもシャドーがいないと使えない。今の時点では、僕一人じゃ何にもできない。僕はカス同然だ。


実「......そうだね、ごめん。冷静じゃなかったよ。」


シャドー『あやまんな、分かりゃいいんだよ。それに俺とお前が一緒にいることでお前の見落としにすぐ気付けるっていう利点もあるしな。』


実「こんな重要な場面で見落とすわけ無いでしょ......」


そんなやり取りをしつつも、着実に山の中を探索して回った。名前を叫びながら所々のポイントにチビシャドーをおいて回りながら探索をしていて、1時間ちょっと経過してときだった。


シャドー『おい実、あれじゃねぇか?』


シャドーが指さした先には教えてもらった特徴そのままの少女が横たわっていた。僕は急いで駆け寄ると外傷ないことを確認し、脈を取る。


(脈はある、この子は生きてる。よく聞いたら寝息を立ててる)


生きていることを確認した僕は、栄ちゃんをシャドーに運ばせようとすると、栄ちゃんは飛び起きた。


実「大丈夫!安心して。君のお父さんの比和村英治さんからの依頼で助けにきた人だから。君の名前は栄ちゃんだよね?」


少し乱れた髪の毛を直しつつコクリと頷く少女の顔には怯えているような表情がある。


実「ここは危ないから僕と一緒に下山しよう。お父さんが待ってる。」


そう少女に手を差し出すも断られる。そんなに怖がるのもおかしくはないだろう。突然の出来事をすぐに信用しろなんて見知らぬ人に言われたらそりゃあ怖いだろう。


実「それじゃ、後ろを付いてきて?」


そう優しく微笑んだと思う。下山し始めるとちゃんと少女は後ろを付いてきてくれた。


(一先ずは安心だ___)


カキーンッと金属音が鳴り響いた。僕は咄嗟に栄ちゃんを抱きかかえてその場を離れる。


実「大丈夫!?」


栄ちゃんに語りかけても、栄ちゃんは壊れたようにごめんなさいと連呼していた。外傷は見た感じ見当たらない。


(何があった?今の一瞬で何かしらが起きたはずなのに何が起きたか何もわからない)


シャドー『おい実、そいつから早く離れろ。』


実「え?うん、わかった?」


栄ちゃんから離れると栄ちゃんは両手で顔を抑えてはごめんなさいと連呼するばかり。隙間から見える表情は恐怖によって歪められていた。


シャドー『さっきの金属音は、そこのガキが原因だ。』


実「え?それってどういう____」


シャドー『ナイフで襲おうとしたところを俺が弾いただけだ。』


シャドーはこんなくだらない嘘は吐かない。今言っていることは紛れもなく真実だろう。だとしたらこの子はなぜ僕を襲おうと?


実「え、栄ちゃんはきっと怖くて、て、テンパっちゃっただけだよきっと。も、もう武器は持ってないんでしょ?」


シャドー『実、現実を見ろ。山の中、友達と夏休みの宿題をしに来たやつがナイフ一本だけなんてことあるわけないだろ。このことから考えるに多分あのオッサンが____』


??「はぁ〜〜、変な正義感ぶら下げた馬鹿だと思ったのに......相方がこんな優秀だなんて聞いてねぇわ。」


後ろから聞いたことのある声が聞こえてくる。


英治「ほんと使えねぇなA?お前は今日飯抜きだ。他の奴らからの施しも受けるなよ。」


英治さんは栄ちゃんに”こっちに来い”と手招きするが栄ちゃんは怖がって動かない。


シャドー『もうわかっただろ?』


(シャドーの言いたいことはわかってる。でも、まだ一片の可能性にすがりたい。)


実「英治さんは誰かに脅されてたりするんだよね?」


シャドー『!!お前ッ........!!』


力のこもった声でシャドーは僕の言葉に反応する。


英治「......」


一瞬の静寂が訪れる。

すると、ポロポロと涙を流し始めた


英治「私だって、こんなことがやりたいわけじゃない。君たちも知っているあの”カラス”に脅されてやっているんだ。そうだろ?栄」


僕は直感的に発せられる言葉、流している涙の全てが嘘であるように感じた。流れる涙、一粒一粒からは今までで感じたことのない感覚を感じる。喜んでいるというよりも楽しんでいるように感じる。


(これが奏さんの言ってた____)


英治「栄、早くこっちへおいで......?」


ひどく怯えた彼女からは恐怖に揺らぐ弱々しいものを感じる。僕はジリジリと歩みだす少女の行く手を阻んだ。


実「こんな小さな子が進んで殺生をするはずがない。それも見知らぬ人なら尚更だ。」


英治「は〜い、そうで〜す。カラスの指示通りに動いてるに過ぎないんで〜す。」


もう隠す気すらないようだ。


英治「お前の考えてることなんざ嫌でもわかるんだよ、高給取りの金食い虫が」


実「......」


彼からは常にこの状況を楽しんでいるように感じる。正体がバレても全くぶれていない。


英治「これからどれだけ抵抗したってお前に勝利は訪れない!!もうこの時点で俺は依頼を達成しているのだからな!!」


正の感情を強く感じるのはそのためなのだろう。安全が保証されているのか何なのかはわからないが、確実な勝利は約束されているんだろう。


英治「ほんと、バカだよなぁ〜三班って、どう考えても小学生のガキの夏休みの宿題で山に行くなんてあるわけねぇだろ〜?」


なんだろうこの感情......胸から込み上げてくるもんじゃなく頭からくるこの熱い感情は


英治「ま、無理もねぇか〜?だって、義務教育すら受けてねぇような”カス”の溜まり場だもんな〜?」


抑えられないような何かが込み上げてくる。そのとき既に刀を抜き臨戦態勢に入っていた。


英治「おいおい、せめてその商品に傷をつけるのはやめてくれよ〜?傷物にならないようにここまで育てきったんだからさ〜?」


その時初めて、殺意というものを味わった。脳が発信する。コイツは世にいちゃいけない人だと。僕はヤツを視界から外し、少女の肩を掴み目を見て話しかける。


実「僕と一緒に逃げよう?君の人生、まだやり直せる。」


そう言うと少女は首を横に振り答えた。


少女「家族がまだ残ってる......」


震えた声で少女は答えた。その声に感化されて僕は英治に斬りかかる。英治はひらりと躱す。


英治「だから言ったろ〜?考えてることがわかるっってぇ!!」


軽めの片手斧を振り回す英治、荒っぽい動きに反応して全て躱す。なぜだろうか、こんな奴が強いとは到底思えない。多分、ずっとこういうふうな騙し討ちで勝負を決めてきたとかそんなところだろう。明らかに対人が得意そうな感じではない。今回こんなにも調子に乗っているのは後ろ盾があるからだろう。


シャドー『いいから死ねよゴミ野郎_____』


今度は重い金属音が鳴り響いた。少女のもとに駆け寄り、抱き寄せる。英治の前には女の人が立っていた。


英治「お得意さん、アイツらちゃっちゃかやっちゃって下さいよ〜」


??「喋らないでもらえます?あなたのような醜いものの声など聞いてしまったら耳がお腐れしてしまうかもしれないじゃないですか。そんなんじゃ王に顔向けすることができません」


女の人は忍者のような格好をしている。


(スピード勝負系の能力だろうか。)


すかさず警戒体制を取る。


??「那須波くんが一目置く理由がわかるわ〜。確かに似てるかも!」


ジリジリとよってくる女の人から感じるのは正の感情のみ。だが、それは英治とは違う喜びに近いものだ。


??「ちょっと失礼するわね〜」


気がついたときにはもう遅い。眼と眼があい、何かされているという感覚だけが感じられた。女の人はクラっとよろけると、正の感情がより一層強くなった。ボソボソとなにか呟いているようだったが何も聞き取れなかった。


??「......私は帰らせてもらうわね〜」


考え込んだ末に突然口を開いていった。女の人はとても満足そうな顔をしていた。


英治「ちょ、ちょっと待ってくださいよお得意様。契約と違うじゃないですか。」


??「あら?先に契約を破ったのはあなたではなくて?”私達の組織との関わりを決して口外しない”というのを破られたではありませんか。」


英治「確かにおっしゃいましたけども......守ってもらわないと困ります。」


??「? あなたのようなゴミが困ってなにか問題でも?」


英治の感情が変わり始める。余裕そうだった表情もどこか儚く消えてしまって、絶望混じりの表情が色濃くなる。


??「それでは、またいつかお会いしましょう。影村実様。」


現れたときが一瞬だったように去るときも一瞬であった。


英治「クソがッッッ!!」


地面に握りこぶしを叩きつけるその姿には、正の感情なんて微塵もそんざいしておらず、可哀想な姿だった


英治「はぁ、余罪がバレるとまた面倒だな......」


そう言い、ポケットに手を突っ込みだす。


(マズイ!!あの娘の傍についたときに距離が......!!)


右前方方向から大きな爆発音が鳴り響く。


英治の手足の自由を奪うもののもう遅い。英治は不敵な笑みを浮かべていた。英治の胸ぐらを掴み問いただす。


実「お前ッ......!!何をしやがったッ!!」


英治「な〜に、証拠を抹殺したまでだ。」


爆発の方向を見つめ嫌な表情で少女が駆け出す。


実「!?」


僕は迷わず少女を追いかけた。案の定爆風によって吹き飛ばされてきた木片やらが少女を襲いかけていた。

そんな少女をシャドーで包んで少女の進行方向に進みながら会話を始める。


実「どうしたの?!」


少女「アイツが......私の家族ごと......」


(アイツ......)


爆心地はそこまで遠くではなくすぐにつく距離だったが跡形も無く消し飛んだ姿を見て、少女は絶望した。少女は僕の服の裾を掴んだまま話さない。静かに流れる涙。そんな彼女を見て思わず抱きしめてしまった。


ふと、地面に目を向けると、不自然に草がポツンポツンと生えていることに気がついた。その先に目をやると小さく広がる花畑があった。


実「......」


花畑にある花を何輪か取ろうと思い足を運ぶ。裾を掴んだままの少女は僕の動き連動するように動く。

花畑に近づいくと何かが見える。


(あれは___)


その正体に気づくと少女は走り出す。駆け寄った先には少女がもう6人いた。


?「あー!!A!!って、なんでそんなぐちゃぐちゃ顔してんの?!」


A「だってぇ、みんな爆発で___」


静かにではなく感情を剥き出しにして泣き出す彼女に少しばかり自分も釣られて泣いてしまう。

泣き止み落ち着いてきたときに少女が質問を投げかける。


??「ところでA、それは誰?」


A「あっ、えっと、こ、この人は安全な人なので安心しても大丈夫です......!!」


実「えっと、僕は影村実です。みんなを助けに来たのでもう大丈夫です。」


以外にもみんなは助けに来たことをすんなりと理解してくれた。それからは現状の説明を簡潔に済ませ、少女が最も気になっているであろうことについて問いただした。


A「なぜ、皆はあの小屋から逃げ出せたの?外から南京錠で締められてるから私達の力じゃ開けれないと思うんだけど......」


?「いや、それがね?突然女の人が部屋の扉を蹴破って”時間がない”って言って私達を出してちょっと離れたらボカ〜んってわけ。」


??「その女の人はお兄さんと同じ服の黒髪ロングの人だったよ。」


(そんな人いたっけな......てか、オーダーメイドの服だからそんなはずはないんだけどな......)


僕はまあいっかと考えるのをやめた。それからは班長が僕らの救助に来てくれた。なんとも、花山さんが怖いからとすぐに向かわせてくれたらしい。


罪人含め、死者は0名。人死山の殺人事件の大半は英字による犯行だったらしい。こうして、僕の初任務は無事(?)幕を閉じたのだった。

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