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心臓がバックンドックン

ピピピピピピ――――――

僕は朝がくるのが嫌いだ。なぜなら幸せな夢の世界から追放されてしまうからだ。

特に今日は起きたくない。


2度寝すれば良いだけだと思うかもしれないがそううまくはいかない。

今日は防衛団の入団試験の日だからだ。

それに二度寝なんてしようもんなら僕の()()に叩き起こされてしまうだろう。


僕の能力はそう――――――


『起きろよ実。』


「うぅぅ わかったよ...」


僕の能力は影の精霊(?)を好きに使えることだ。

お節介な影の精霊の名前はシャドウ。


こいつ経由で自分自身の影、自分の所有物の影を自由自在使うことが出来る。


僕が5歳のときにはすでに能力が発現していたらしい。


『もうそろそろ時間だ。とっとと支度済まして試験会場いく』


「えっ!? まだ1時間前でしょ?もう少しゆっくりさせてよぉ、」


そう、昨晩アラームを試験の1時間前に設定しておいたのだ。

ここから試験会場までは10分あれば着くはず...


『念の為だ。それに早めに行ったら好印象かもしれないだろ?』


…...なんだそんな理由かよ。


僕は試験時間を間違えたのかと思って心臓バックバクだったんだぞ。

驚かせやがって。


ただでさえ試験前だから心臓バックバクだってのに。

これ以上の心臓への負荷は致命傷になりかねん。

落ち着くためにもゆっくりしよう。


――――――30分後


『おい。まだ行かないのか?』

リビングで朝ごはんを食べ切り、大人ぶってコーヒーを飲んでいる僕にシャドウはいった。


たしかにありえないぐらいバックバクだった僕の心臓はいまではドックンドックンだ。


コーヒーを飲み干し決意が漲った。

「よし。じゃあそろそろ行こうか。」

そう言って僕は立ち上がり家を出た。


―――――――――――――――――――――


出るときはあんなに穏やかだった心臓が会場を目の前にした途端ありえないぐらい騒ぎだした。


入団試験は戦闘試験しかない。

筆記とかは特にいらない試験なのだ。


別に筋力もない、体力もない、速くもない、特別に何かが優れている訳でもない。


(そんな僕がこの試験で採用されるような要素がどこにあるのだろうか。勝ち抜くことはできるのだろうか。)そんなことを思いながら試験会場の受付へ歩いていた。


『落ち着け。別にお前がメインで戦うわけじゃないんだ。身体能力云々なんかほぼ関係ないだろ。負けたらちゃんと動けなかった俺のせいだ。だから気にすんな。お前はお前らしくいろ。』こんな言葉をかけられて肩の荷が下りない人なんていない。


僕の能力は僕のことをよく理解してくれている。

それにメンタルケアまでしてくれる最高の相棒だ。


「ありがとう。おかげでもう大丈夫。行こうか。」

そう言って僕は受付の扉を開いた。


―――――――――――――――――――――


「おはようございます。お名前と受験番号をお願いします。」淡々と受付の人はそう言った。


「あっ...えーっと、名前は影村実(かげむらみのる)で受験番号は...」ヤベワスレチャッタヨ


そう困っているときに『…1021』と僕に聞こえるように呟いてくれた。

こういうときに覚えておいてくれるのめちゃくちゃありがたい。なんだか不甲斐ないな...


「受験番号は1021です。」

シャドウだけに見える位置でグッドサインを出した。

「……はい。お名前、受験番号確認いたしました。受験者の待機部屋はこちらの順路に従ってお進みください。」と待機部屋への順路が書かれた紙を渡された。


(待機部屋にはどんな人が居るんだろうか。怖い人ばかりじゃないと良いけど………)と不安がりながらも順路通りに通路を歩く。


『もう落ちるなんていう不安は無くなったのか?』

シャドウは少しイタズラっぽくいった。


「まぁ落ちても死ななければまたチャンスはあるから良いかななんて思ったりして平気んなった。」と余裕のある感じで言えたかはわからない。

正直少し不安だ。

だけど不安になったってどうにもならないことぐらいバカな僕でもよくわかる。


そんな話をしているうちに待機部屋の扉の前に着いた。


「シャドウ。僕の影に隠れといて。あんまし僕の能力についての情報は与えないほうが有利でしょ。」

とシャドウにだけ聞こえるように静かに言った。


少し不満げな表情を浮かべて僕の影に隠れる。

僕の影の中は狭くて嫌らしい。


そんなやりとりをした後深呼吸を一度して待機部屋の扉を開けた。


待機部屋の中では他の受験者が話していたりしている。

待機部屋には前に大きなホワイトボードがあり、手前側には長机に椅子が置いてある。

ホワイトボードには"自由席、試験説明者の入室までお待ちください"と書かれている。


自由席と言われても小中と学校に行けていない僕に友達なんているはずもなく、割と最後らへんで部屋に入ってきたもんだから席なんざほぼ空いてない。


端の方の席が空いているが隣に本を読んでいる人が居る。


中らへんの席で両隣に人が居るより状況よりかはまだいいかなと思いながら空いていた端の席についた。


読書の邪魔にならないようにと気をつけて呼吸の音すらも最小限に、気配も殺して座っていた。


パタン

突然隣の人が本を閉じた。

読書の邪魔になってしまっていたのではと思い、席を変えようかとしていたとき「初めまして。同じ受験者同士頑張ろうね。」と隣の人が話しかけてきた。


「うっうん頑張ろうね。」

同年代との会話経験がゼロな自分にはこれが精一杯だった。


「えっとその、名前はなんていうの?」と少し遠慮しているように聞かれた。なんとか会話を続けないと。


「あぁ、えっと、僕の名前は影村実。君の名前は?」多分自然に受け答えできたはずだ。


「私の名前は槍夢華(うつぎゆめか)よろしくね。」と優しく元気に発した。なんだか光が当たってるのかと思うぐらい眩しかった。


「君は防衛団の何班に入りたいの?」と聞かれた。


防衛団にはパトロールや敵組織である"カラス"に攻め込まれたときの防衛を主に担当する一班、住民の安全地帯への誘導や治療、戦闘機器の研究や発明などを主に担当する二班、そして"カラス"によって奪われた領土の奪還のため、敵領土に拉致、迷い込んだひとの救出を主に担当する三班に分かれている。


「僕は三班を第一志望にしたよ。」といったものの、これは師匠に三班に入れって言われたから入るだけで自ら土地の奪還のために戦いたいのではない。


「えっ、私も三班が第一志望なんだ。どうして三班に入ろうと思ったの?」正直いって三班を第一志望にしている人はほぼいない。毎年5人いればいいぐらいの志望人数の少なさらしい。

それに去年土地の奪還に出かけた3年が誰一人帰ってこなかったというニュースもあってさらに今年は減るだろう。


「僕は育ての親が僕を鍛えてくれて、三班に入れって言われたからかな。君は?」さっきまでと同じように聞き返してしまった。

僕みたいな人に言われて三班に入るひとはほぼいない。三班を志望している人の大半はカラスに対して恨みをもっている人だ。


「嫌だったら別に…」という言葉を遮って槍さんは「私には憧れの人がいるの。襲撃された私を助けてくれた人が三班の人だったの。私はあの人みたいになりたい。あの人みたいに人を助けたいって思ったから三班に入りたいの。」と言った。


それを聞いてなんだか申し訳なくなった。僕みたいに人に言われるがまま人を助けるような仕事についていいのだろうかと。


「ねぇねぇ、答えたくないんだったら答えなくていいんだけど、影村君の能力ってなに?」と聞いてきた。

突然の苗字呼びにびっくりしたが平静を保ちつつ、快く答えた。


「僕の能力は自分の影を操ることができる。こんなふうに。」と自分の影から手を生やし槍さんの読んでいた本を持ち上げてみせた。

「おぉ、凄い!!」と言われた。お世辞でもそんなこと言われちゃあ調子に乗っちゃうよ。


「あとこんなふうに影を武器にしたりできるんだ。」と自分自身の影を双剣にしてみせた。


「凄い便利だねぇ。私の影とかは使えないの?」と疑問が投げかけられた。多分できなくはないが条件がだいぶ厳しい。

僕の能力で扱える影は僕に影の使用を完全に許してくれる、つまり僕を信頼してくれないとダメなのだ。


「多分使えないんじゃないかな。」と簡潔に答えた。「えっと、槍さんの能力はどんな能力なの?」

と真っ直ぐに聞いてみた。


「えっとね、多分口で言うよりやってみせた方が分かりやすいと思うからさっき影で作った剣貸して。」と言われた。少し不思議に思いながらもどんな能力なんだと思いながら双剣を渡した。


渡すと槍さんは双剣を一度触り指で指した。

指した指を上に上げると双剣が浮き指を動かすと指の動きに合わせて双剣が動いていた。


「なにこれ?君の能力はポルターガイスト?」

いい点をついたのでは?と自分でも思っていたが

「う〜ん、そんな大層なもんではないかな武器系統しか動かすことはできないし。」と言われてしまった。

「武器を好きに操るなんてかっこいいね。」とあまり上手くはないが感想を述べた。あまりに会話が下手なもんだからすごい恥ずかしい。


「あはは、ありがとう。」と笑ってくれた。

と、そのとき前の扉が開いた。

前の扉から試験の説明者が入ってきたのだ。


「これより試験内容について説明させていただきます。説明者の一班所属恵比寿知茅(えびすちかや)ですどうぞよろしく。」眼鏡をかけた知的な男性がそういった。


「試験内容は戦闘試験です。現実世界で戦闘試験なんかやってしまうと死んでしまう可能性があるため、デジタル世界で戦闘してもらう。この説明の後試験会場に行くが自分の受験番号が書かれた機体の側にあるヘルメットをかぶって機体に横たわってくれ。それだけでデジタル世界に飛べる。」

防衛団のこういう技術は最先端の中でも最先端だ。

意識や能力を全てデジタル世界に飛ばすこともできるほどだ。


「ルールは特にない。好きにやってくれ。お前たちの動きを映像で見ながらどこの班に入るのか、そして合否を話し合って決める。」

つまり僕たちの行動や立ち回りによって今後の運命が変わるのか。


「説明は以上だ。これから試験会場に向かう。ついてこい。」

これからこの部屋にいる人たち全員と戦うことになる。

僕よりも力の強い人なんて腐るほどいるだろう。

すぐに死んでしまってはアピールもクソもない。

絶対生き残って師匠からの試練を通り越してみせる。


――――――――――――――――――――

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