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サシで一杯

キンキンに冷え、水滴の滴るジョッキでビールを飲む。


現代において、アルコールによる悪影響を防ぐため、酒はリアルではなくVR上で飲むことが国から推奨されている。


今飲んでいるのはビールだが、この世界なら設定を変えればすぐに日本酒にでも、ウィスキーにでも変えられるってのがいい。


ちなみに、これはVRゴーグルを使用したAR的なものであり、その理由は…


「おっ!来た来た!」


部屋の外からドローンが飛んできて、枝豆と塩辛。そして焼き鳥二本を机の上に置いてくれる。


そして改めて手を合わせ、


「「いただきます」」


言い終わってから俺は違和感を覚える。


「あ、どうも。ご相伴にあずかりますね!」


「…ハ?なんで鎧お前ここにいる?」


そこにいたのはゲームの産物であるはずの欲望という相棒(デザイア)たるかなりデカいあの鎧。から配慮なのか二回りほど小さくなった人型鎧。


「あれ?私って、あの世界以外にもついてこれるんですよ?読んでないんですか?」


言われた瞬間酔いから醒めてしまっている俺は公式ページのウィンドウを空中に出し、その情報を検索する。


「…マジかぁ…」


それは、利用規約の8項目目である《ゲーム外情報》の欄に書かれていた。


6.このゲーム内で生み出される欲望という相棒(デザイア)はVR上のどこにでも、本人の要請。もしくは欲望という相棒(デザイア)自身の判断によって現れることができます。ですが、あらわれることができるのはプレイヤーと同一の空間内のみです。


「ということで、私も飲んでいいですか?」


「ああもう…いいよ。ってか鎧でどっから飲むんだよ…」


「ありがとうございます!」


問いかけには返答がなかったため、少し観察していると鎧の口部にある空気孔に上手いこと流し込んでいっているのに心の中で少し凄さを感じる。


「ッてゆーか、お前は飲みに来ただけなのか?」


「?何言ってるんですか?蜂に対抗するための作戦会議ですよ作戦会議!」


「…ヘェ。真面目なんだな。お前って」


「真面目…かどうかは分かりませんが、そうしないと勝てない気がするんですよね」


いい考えだ模範的なな…だが俺には合わない。


「どうやら、俺とお前とじゃ徹底的に会わないみたいだ…帰れ。酒一人でしか飲まない主義なんでな」


「うーん…そしたら、私は飲まないで話しましょうか!」


「そういうことじゃねぇが⁉」


「えーっと…とりあえず蜂の行動パターンですが、多くの脆弱固体によって攻撃特化個体の攻撃。つまりは致命毒個体の攻撃を通すっていう感じみたいですね」


…ちょっと待てよ?


「ってことは俺はむざむざその戦法に嵌ったっつーことか?」


「そうですね」


「オイオイオイオイオイオイオイオイ!俺が嵌ったってのは信じるとしても、その脆弱固体云々ってのはどうやって分かったんだよ!」


「ああ。私のスタイル的にダメージは食らいやすいですからね…結構刺されてたんですよね」


「…毒耐性が高いとかはないのか?」


「毒耐性は通常毒のダメージ減衰だけなので致命がただの毒になることはないんですよね」


「致命毒は受けなかったのか?」


「それは私の初期アビリティである《即死拒否》ってのがあるんですよね!」


鎧は自慢するように胸を張ってそう言う。


戦闘中にその情報くれよ!


「お前さぁ…」


鎧は褒められると思っているのか微塵もおびえる様子はない。


「もっと早く教えるようにしてくれ。戦闘中が望ましいし、俺は反応して敵を見失うとかないから言え。いいな?」


ワクワクした顔が一気に悲しそうな顔に、例えるなら夕飯が大好物だと思ってたら全く知らない意味の分からないアフリカの民族料理を出された時ってくらいの落差ある表情になる。


と言っても、鎧だから表情は変わらないんだからすべて雰囲気から察する感じのものだが。


「じゃ、話すこと終わったな。さっさと帰ってくれたまえ」


「ハァーイ…」


意気消沈した声色で鎧はわざわざドアの方に行って出ていこうとする。


だがまぁ、こんなしょんぼりした空気感は苦手だね。


「今度来るときは酒飲んでないときにしてくれ。あと、明日はそっちに行く」


その言葉で雰囲気を一気に明るくして嬉しそうな感じで鎧は部屋から出ていくのだった。

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