翼は焼かれど夢は朽ちず、再び空を翔ける 其のニ
「よし、次行くか」
回復は済ませたし、次の階層へ進もう。3階以降も影とのバトルがメインになるのか?だとしたらだいぶハードだな……。
「次はなんだ?」
階段を登れば、そこには海のような空間が広がっていた。床には水が張られ、底は見えないが沈む様子は無く、夜火の体は水面の上に立っている。
そして、スティアの時と同じように中央に影が一つ。名はーーー
ーーー「神影 セポドン」
瞬間、階段は消え、ウィンドウが現れる。
『己が肉体を示せ』
「内容は……、『セポドンの猛攻を凌げ』ね」
明確な時間制限は無いようだが、ウィンドウには回数欄があり『0/1』と表示されている。
どこまでが一回なのかはまだわからないが、セポドンの攻撃を一回凌ぎきればこの階層はクリアらしい。
1階層目のスティアのように言葉は無く、戦いは突然始まる。
セポドンの右手には三叉槍が握られており、それを横一線に振るう。細く引き締まった肉体によって振るわれた槍の勢いで水面が揺れ、風が起こる。
「すごいパワーだな……」
俺が刀を振ってもあんなことは多分起きない。あれだけのパワーがあるなら、まともに打ち合えばこっちは不利だろう。
水面の揺れは収まることなく、さらに激しさを増している。その中央にはセポドンがおり、石突を地面に打ちつけた瞬間、大きな波が夜火を襲う。
「こんなフィールドなんだ、当然水は操ってくるよな」
にしても、この塔にいる神の傾向というか、特徴がなんとなくわかってきた。
ゼウラウス、スティアの名前を見た時点でなんとなくそんな気はしてたが、セポドンの名前と技を見てほぼ確信になった。
「ギリシャ神話がモチーフって所だろうな」
どこまで本家本元の能力をベースにしてるかはわからないが、それでもモチーフの神を思い出せばある程度能力の推察ができそうだ。
三叉槍、水の操作、モチーフはポセイドンだろうな。ギリシャ神話にはそこまで詳しいわけじゃ無いが、これぐらいはわかる。
「さて、やりますか」
目の前には波が迫っているが、高さは天井に届くほどではない。であれば----
「----問題なし」
イカロスの力を使い、複数回空を蹴って波を乗り越える。波を乗り越えは先ではすでにセポドンが次の攻撃の準備をしている。
再び石突を地面に打ち付ければ、今度は水面から槍のように水が飛んでくる。
体を前に倒し、床の方へ狙いを定める。そして、スキル「ヴァリアブル・ジャンパー」で加速しながら一直線にセポドンの元へと向かう。
ヴァリアブル・ジャンパーによる加速。飛んできた水の槍が触れることはなく、空中で槍同士がぶつかり合い、ただの水へと戻る。
「猛攻を凌げって言われてるけど、攻撃するなとは言われてないよな……!」
スティアは撃破できた。であればセポドンも倒せるだろう。セポドンを倒してしまえば、そもそも凌ぐべき猛攻は無くなる。
セポドンの懐へと着地し、腰の刀を抜き放つ。朧の刃は確かにセポドンの体へと触れた。しかし、その体には一切の傷はなく、手応えもない。
「硬い……」
頭上に迫る三叉槍を避けるためにバックステップで距離を取る。つい先程までいた位置には三叉槍が振り下ろされ、水面に大きな波紋を生み出す。
「水で防いだのか?」
回避の直前、刃が当たった位置見れば深い青色になっていた。その色は迫ってきた波や水槍と同じような色だった。
「水の操作以外にもなんかありそうだが……」
槍を構え直したセポドンが床を蹴り、こちらへ迫り素早い突きを繰り出す。それに対して、刀で受け、そして左へ受け流す。
「ッ……!」
受け流しはしたものの、それでもかなりの衝撃が襲う。セポドンは石突で地面を押しながら、バックステップで距離をとっている。
「やばい……!」
スキルによる加速で即座にその場を離れると、さっきまでいた位置には大きな水柱が上がる。
石突が地面に触れるのが水の操作のはつどうとりがーか?ブラフの可能性はあるが、とりあえず警戒。槍振ってる途中にさりげなく触れられたりしたら気づかないぞ……。
「刀よりこっちの方が良さそうだ」
朧を鞘に納め、両手に二振りの刃を構える。鍾鴉双刃、振動を蓄え、切れ味を増すこの双剣なら相手の攻撃をこちらの攻撃力にもできる。
両者が一斉に駆け出す。連続で繰り出されるセポドンの突きを回避し、背後へ回り込む。
振り向き、こちらを確認したセポドンは石突でこちらへ攻撃を仕掛ける。
足元狙ってくるか……!地面に触れるのを防ぐのは厳しい。だが、地面に触れたら間違いなく水の攻撃がくる。一か八かだ。
「ほっ」
左手の鍾鴉双刃を手放し、石突と地面の間に滑り込ませる。たまたまとはいえ、上手く間に挟まれたことで地面に石突が触れるのを防いだ。
これにより一瞬とはいえ、隙が生まれた。石突を少し持ち上げ、地面に当てるよりも速く相手の背中へ向けて、鍾鴉双刃を振るう。
それに対し、高速で180度回転し三叉槍の柄で攻撃を受けるセポドン。
「クソッ!」
恐ろしい判断力と反応速度だ。もうすでに防御から攻撃へと転じようとしている。バックステップと同時に踵で落ちてるいる鍾鴉双刃を蹴り飛ばし、距離を取る。
「セポドンを倒せだったらだいぶ厳しい戦いになってたかもな……」
鍾鴉双刃の片割れを拾い上げつつ、息を整え再接近。スキルを駆使しながら、連続で攻撃を仕掛ける。
相手も反撃はするが、それでもこちらのペースに持ち込めたのか防御に回る時が増えてきた。しかし、鍾鴉双刃の攻撃も相手には通じていないのか手応えがない。
隙をみつけたセポドンが石突を地面に当てる。水柱がセポドンを包み込み、距離を取らざるを得なくなるが距離を取ると同時に水柱に攻撃を仕掛けてみる。その手応えはまるで鉄を殴ったかのようだった。
試練はまだ続く。
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話思いつかなくて全然投稿できずすいませんでした。ある程度構想はできたので、読み返しつつのんびり続きを書いていきます。
竜胆祭良かったです。




