亜人について
「ライシオンとよく戦えたな?夜火」
「まあ、切り札を切って負けたけどな」
現状使える手札を全て使って何とか喰らい付いていたものの、まだまだ実力差は大きいだろう。まあ、成長の余地があって考えれば今回の戦いは無駄じゃなかった。
「最後に出してたあの剣がなきゃ勝ててかもしれないけどなぁ……」
「へぇ……。王剣を出させたのか」
「王剣?」
「ああ。全ての国には建国と共に生まれる剣がある。それが王剣だ。王剣が生まれなきゃ、それは国じゃないし、王剣が認めなきゃそいつは王じゃない」
「結構大事なアイテムってことか」
「ああ。あれには王族の全ての潜在能力を引き出す特性がある。今のお前さんが負けても仕方がない」
「とはいえなぁ……」
負けは負けである。勝つ気でたたかったからこそ、負けたのは悔しい。いつかリベンジしよう。
「そういえば、空兵炉心の能力を使ったら様子が変だったんだが、あれは何でだ?」
よく思い出してみると、ライシオン以外の獣人もどこか怯えるような表情をしていたような気がする。
「そうだな……。まあ俺の知ってる範囲でなら教えてやるよ」
「な、なあ?これって俺も聞いていいやつ?」
「いいんじゃないか?お前、捕まってた訳だし。獣人のこと知りたくない?」
「まあ、気になるな〜」
「別に大した話じゃない。聞きたいなら聞いてけ」
そうして、ウォーグが話したのは「亜人の成り立ち」であった。
「そもそも亜人ってどうやって生まれたか知ってるか?」
「亜人……。獣人とかウォーグみたいなドワーフとかのことか?」
「まあ、そんなところだな。他にはエルフとか魚人なんかもいるんだが……。まあ、端的に言うとだな――――――」
「――――――亜人っていうのは人間が進化したのと、モンスターが進化した2種類いる。獣人は後者だな」
「へぇ……。モンスターが進化して、か」
「生物は環境に適応するために進化する。モンスターもまたこの世界に適応するために進化を続けた結果、俺たち亜人が生まれたってわけだ」
亜人はモンスターが進化した姿か。なら、獣人の――――――
「――――――弱肉強食。それの原因もそこにあるのか?」
「鋭いな。モンスターの特徴を残している種族ほど、モンスターだった時の絶対の掟。『弱肉強食』の考えが強い」
「てことは、怯えてたのは……」
「厄災に怯えてたんだろうよ」
「なるほどな……」
「獣人にそんな歴史が……。それを聞くと色々納得がいくなぁ……」
「そうなのか?」
「アイツら、何か決める時は絶対に勝負してたんだよ。それに俺が戦えるようになると扱いが心なしか良くなっていったし」
「まあ、俺が知ってるのはそんなところだ」
「ありがとう。そういや、また装備の修理頼んでいいか?」
「任せとけ」
「俺もせっかく自由になったし、チュートリアルやって装備とか整えなきゃだ」
「お前さんのも俺が作ってやるよ」
「え!?ありがとうございます!」
「何、気にすんな。料金はきちんと貰うさ」
「それでも、ありがとうございます」
「それにお前さんたちはこれから大変だろうからな。これぐらいは手伝うさ」
これから大変?どういうことだ……?
翌日の昼休み。シューガたちに呼び出された。何でも聞きたいことがあるとか。なんかしたか?
「やあ、燈夜。早速なんだけど――――――」
「――――――どうして指名手配されてるんだい?」
「え?」
「え?じゃないわよ。あなたとモリモリ・ベクトル?そんな名前のプレイヤーが指名手配されてるのよ」
「まあ賞金の受け取りができるのは獣人に限るって書いてあって、どのプレイヤーも2人を捕まえようとはしてないけれど」
「何かしたの?燈夜くん」
「えっと、ですね……。とりあえずもう1人呼んでいい?」
とりあえず、経緯を説明するならこいつも呼ばなきゃだよなぁ?
「守谷?今からちょっと来てくれない?」
『ん?わかった』
そうして守谷を呼び出し、3人にことの経緯を説明する。
「「「はあ……」」」
全員に呆れられた。なんで?
「国に喧嘩売るとか何考えてるんだい?」
「馬鹿なんでしょうね、彼ら」
「流石にちょっとやりすぎだと思うよ、うん」
「そんなことないよな?守谷」
「うーん。まあこんなことになるとは……思ってたな、うん。確かにやり過ぎたかもしれない」
「おい」
「運営に相談してたらこんなことになんなかったかもしれないだろ?」
「確かに……」
楽しそうだからといって、無茶しすぎたかな……?
「まあとりあえず経緯はわかった。次からは相談して欲しいかな?」
「了解、了解。きちんと報告します」
「いやぁ、まさか大変なことになったな!」
「ほんとだよ……。これからアイツらに狙われるのか……」
「まあ、何とかなるでしょ。それで報酬の話なんだけどさ」
「そういや、そうだったな。お前が言ってたダンジョンの話、聞かせてくれよ」
「ああ――――――」
「ここか……」
モリベに教えられ、たどり着いたのは古びた塔。その名も――――――
「――――――神域の塔、ね」
新作のことをのんびり考えています。
バトルもいいけどラブコメとか百合も書いてみたい。
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