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エデン・ヒストリア 〜言語習得から始まるゲーム攻略〜  作者: ラー油
異端者は舞い降り、世界を駆ける
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最初のエリアボス

 俺が戦うことになったエリアボス「疾風の大風狼」。パッと見の印象は進化したウインドウルフって感じなんだが――――――




「っ……、速いんだよ……!」


 そう、ウインドウルフよりも圧倒的に速い。体がでかくなったからといってスピードが落ちるなんてことはなく、むしろウインドウルフよりも速い。攻撃自体は咬みつきと前足で引っ掻いてくるだけとシンプルなものだが、速いうえに体がでかいから当たり判定も大きいので普通に厄介だ。


「こんにゃろう……」


 攻撃は確かに速いが避けられない速さでない。ただ攻撃を仕掛けようにもあちらは絶え間なく攻撃を仕掛けてくる。何とか攻撃できるタイミングを探すが、避けるのに精いっぱいでなかなかタイミングが見つからない。


「オラッ!」


 大振りの引っ掻きを躱し、その前足を切りつける。


 咬みつきと引っ掻き攻撃にもいくつかパターンがある。咬みつきは連続でしてくる時としてこない時がある。引っ掻き攻撃も予備動作の違いでいくつかに分けることができる。


 予備動作が大きい引っ掻きを出してきたときはチャンスだ。予備動作は腕を大きく上げる動きで、タイミングを読みやすく、避けやすい。さらに他の攻撃と比べ次の攻撃に移るまでの時間が長い。この攻撃をしてきた時は攻撃のチャンスだ。相手の攻撃を避ければ隙ができる。そこで攻撃を仕掛ければいい。


「戦い方がわかれば、こっちのもんだ」


 とにかく攻撃を避けて、避けて、避けまくる。大振りの引っ掻きが来たタイミングで攻撃。とにかくこれの繰り返しだ。


 集中力が続く限りこれを繰り返していれば勝てるだろう。なんて考えていたが――――――




「ガルルルル」


 突然、疾風の大風狼の攻撃が止んだ。息切れしたのか、短い呼吸を繰り返している。


「チャンスッ!」


 ここで一気にダメージを与える。「ファスト・ブースト」、1歩目の踏み出しを強化するこのスキルで一気に距離を詰めようとした瞬間――――






「バウッ!」


 接近してくる敵に気づいた疾風の大風狼が、バックステップすると同時に口から竜巻を発生させる。竜巻は一直線にこちらに向かってくる。


「うおッ!」


 突然の突風にあらがうことができず、俺の体はあっけなく吹き飛ばされる。


「―――待て、こっちは……」


 奴が発生させた竜巻に吹き飛ばされた先、俺の目には敵を待ち構えているウインドウルフの姿が映る。


「そういうことか!」


 最初にウインドウルフが散開したのはこのためだろう。竜巻でプレイヤーを吹き飛ばし、その間に自分は呼吸を整える。プレイヤーが吹き飛ばされた後すぐに追撃できないように保険として吹き飛ばした先にいるウインドウルフに足止めをさせる。そんなところだろう。


 竜巻によって吹き飛ばされ未だ空中にいる俺に向かって、ウインドウルフが飛びかかる。


「なめんなッ!」


 空中でうまく体を制御できないが、なんとか咬みつかれる前にウインドウルフの体に蹴りを入れ、吹き飛ばす。そして蹴りの反動も使ってうまく着地。


 さて、ウインドウルフを放置しておくと厄介なのはわかった。このまま放置しておけばさっきみたいな攻撃チャンスを逃すことになりそうだ。とりあえずさっき蹴り飛ばしてまだ近くにいるウインドウルフから攻撃しようとしたんだが、そうはいかないらしい。


「よっと。危ないだろ」


 呼吸を整え、接近してきた疾風の大風狼がウインドウルフへの追撃を許さない。その鋭利な爪を振るい、ウインドウルフへの接近を妨げる。それだけじゃない――――




「なんか速くなってない!?」


 多分、攻撃スピードが上がっている。相手をよく見ると足に風をまとっている。これ、ウインドウルフがやってたのと同じやつか?とはいえまとっている風も、それに伴うスピードの上がり方もあいつらとはレベルが違う。


「きついな……」


 攻撃のスピードが上がれば避けるのは当然難しくなる。さっきまで攻撃のチャンスだった大振りの引っ掻きも、スピードが上がったことで避けにくくなる。さらに攻撃の開始から終了までの時間が短くなったことで、反撃する猶予も減ってしまった。さらに厄介なのは――――――




「バウッ!」


「ちっ!面倒だなぁ……」


 さっきもやってきた竜巻による吹き飛ばし。あれは俺を吹き飛ばすだけでなく、竜巻を出す勢いを使って自分も吹き飛ばす目的があるのだろう。竜巻によって相手を吹き飛ばし、さらにその勢いで自分も相手から遠ざかるように吹き飛ばされる。そうして距離を取り、自分は呼吸と体勢を整える。そんな感じか?仮に竜巻を上手く避けたとしても、どうしても距離ができているせいで距離を詰める前にあっちは息を整えて攻撃の準備を始めている。


 相手のスピードが上がってから攻撃を避けてばかりでなかなか攻撃できていない。攻撃をパリィすれば隙ができるかと思ったが、それもなかなか厳しい。


「ガウッ!」


 疾風の大風狼は前足を振り下ろすと同時にまとっている風を解放する。足が地面につくと同時に解放さる風は瞬く間に広がり辺り一面を吹き飛ばす。


 この風、足を剣で切るときにも邪魔なんだが何かにぶつかるだけでも風が解放されるせいで、攻撃をはじいたり、受け流したりしようものなら解放された風に吹き飛ばされて、相手はそこを狙って追撃してくる。推奨人数3人なのはパーティを組んでいれば一人がタンクをしている間に攻撃しろってことだろう。


 どうにか攻撃のチャンスを作らないとな。まずはあの厄介な風だ。あれだってずっとまとっているわけじゃない。攻撃して風を解放してから再びまとうまでには時間がある。攻撃を避け続けて隙を見つけて攻撃という戦法は悪くない。ただし、そのうちこっちの集中力が切れる。何か別のいい手はないかとひたすら考える。


「あ、あった……」


 避けるのに必死だったし、防具なしでここまで戦ってきたものだからすっかり忘れていた。防具「岩風猪狼のブーツ」の持つMPを消費することで一時的にAGIを上げる効果。


「これなら……いけるか?」


 とにかく物は試しだ。加速系スキルを全て使い、防具の効果も発動し、駆けだす。






「よしッ、決まった!」


 相手の攻撃が終わるよりも早く、こちらの攻撃が決まる。




 ここまでは俺が攻撃を仕掛けるよりも相手が接近し、攻撃を仕掛ける方が早かった。そのせいで攻撃を避けて隙を見て攻撃というスタイルのほうが確実にダメージを与えられていた。しかし、それは厳しくなってきた。であればやはりこちらから攻撃を仕掛けるしかない。加速系スキルと防具による加速で先手を取る。これが新しい方針だ。


 加速系スキルと防具によって高められたスピードによって、相手がこちらに接近するよりも早くこちらから相手へと接近。迎撃するべく振るわれた爪を避け、そのまま相手の背後へと移動。スキル「乱れ切り」を発動しながら、大きな後ろ足へと攻撃を仕掛ける。


 さっきまで避けることしかしていなかった俺がいきなり加速して攻撃してきたことで、疾風の大風狼の警戒心が高まるのを感じる。


「攻撃を避けて反撃ってのも悪くはないが……疲れるんだよ。こっからはガンガン攻めていくから覚悟しろよ?」

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