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「ルナーミア王城」侵入作戦

協心競技楽しい。

 バーディアン・フルフェイスはちょっとした暗視効果を備えていた。おかげで今、俺は屋根から屋根を伝って守谷が閉じ込められている王城へと向かうことができている。


 王城はルナ―ミアの中心部に堂々と建っている。どこからでも見えるという点ではアヴァロニカ王国と同じだが、装飾がとにかく派手だ。あっちも素材は高価らしいがデザインは普通のきれいな城って感じだったが……。こっちの城は権力、というよりも力を誇示したいという意思を感じるデザインだ。


「見えたな……」


 城下町から城壁の内部へと続く唯一の門が見える。夜が近づいているが未だに多くの人が行き来する門。その門を抜け、城へ向かう通路の途中に地下への入り口があるらしい。そこを下っていって守谷に教わった通りのルートで進めば、あいつが軟禁されている牢にたどり着く。


 城の中に向かうことができるのは基本的に衛兵や商人、後は役人とからしい。つまり、今の俺みたいなやつが普通に中に入ろうとすれば、間違いなく追い返される。じゃあ不法侵入する以外に方法はないんだが、城壁は高く、登って入ろうにも時間がかかり、衛兵に見つかるのも時間の問題だ。


 手持ちのスキルの中には風雷朧脚、以前は風魔朧脚だったスキルのように姿を完全に隠すことができるものもあるが、効果時間はそれほど長くない。それに見つかっている状態でこの手のスキルを発動すれば、むしろ突然姿を消したことで相手の警戒を強めるだけだ。


 じゃあどうするか。こうするんだよ――――――






「おい、そこのお前。少し止まれ」


「は、はい」


「少し荷物を見せてもらおうか」


「わ、わかりました……」
















 さて、侵入成功。さっきの商人の人、無事に通過できてるといいけど。え?どうやって侵入したか?()()()()()()だよ。




 城内への侵入方法に悩んでいた俺を救ったのは、ここまで数々の戦いを共に乗り越えてきた幻霧刀「朧」()




 残っていたオボロの素材と新たに手にした素材を組み合わせることによって強化された朧、それが幻霧刀「朧」改。攻撃力が上昇し、朧影、幻霧に必要なMPも多少減り、かなり使いやすくなったんだが、それ以上に今この状況にうってつけの進化を果たしたのだ。その能力の名は――――――




 幻霧「(まとい)




 霧を生み出し、相手から俺の存在を隠すための力である幻霧から派生したこの能力は、霧の範囲と持続時間を変化させることによって、霧を一面に広げずとも俺自身の姿を他人から隠すことができるそうになった。常にMPを消費し続ければほぼ完全に他人からは感知されなくなる。朧隠れの龍鱗の幻霧中での認識阻害効果も合わさり、城兵程度なら気づかれることなく侵入することができてしまった。こんなにうまくいくとはな……。


 さて、どんどん進もう。当然、他人とぶつかるなんてことがあれば一瞬でバレるだろうからそこには気をつけながらだが。











 さて、ここが牢屋か。何事も無く無事に牢屋に辿りついたが、雰囲気があるな。ザ・牢屋って感じだ。とはいえ、素直にははしゃげない。囚人も入っているんだろうが、たぶん普通の人もここに閉じ込められているはずだからな……。その人達も助けられるなら助けたいところだが、最悪のパターンを想定したらはっきり言ってそんな余裕がない。


 なるべく他の牢屋の中を見ないようにしながら教わったルートをただひたすら進んでいく。やがて、看守二人が守る他の牢とは趣が異なる部屋が見えてくる。部屋の中にいる人影にはプレイヤーであることを証明するタグが浮かんでいる。






 モリモリ・ベクトル






 それが守谷のこっちでの名前。なんでこんな名前にしたんだよ……。ま、まあ目的地には着いた。鍵は看守が持ってるって話だし、あの二人を気絶させたら脱出作戦開始だ。


 では看守をどう気絶させるか。スタンインパクトは合併されて消えてしまった。破剣朧月という名のスキルに取り込まれたスタンインパクト。斬首忍刀、首を攻撃した時にダメージ補正、敵の死角からだとさらに補正というスキルと合わさった結果、部位破壊とスタンに特化スキルへと変化を遂げた。


 破剣朧月は、スキルの効果を発動している間の攻撃は相手の部位をより破壊しやすくするというスキルだが、首や顎といった部位への攻撃時さらにスタンさせやすくするという効果が乗っかる。そして、剣による攻撃時はさらに補正が乗るというスキルなんだが、ここでいう剣による攻撃とはどこまでが対象なのか。


 答えは手刀も剣であると判定される、だ。ソースはみょーさん。手「刀」での攻撃に絶対切断の効果は乗るのか聞いてみたところ、木材ぐらいなら()()()との事。折るのではなく、斬るのである。


 じゃあ、実践して見せよう。これが俺がたどり着いた境地。強化系スキルを全乗せした手刀が看守の首に触れる。その瞬間、二人の看守が意識を失い倒れる。


 この二人が格下で良かった。格上だったり実力が近ければ「トン」は通じなかっただろう。何はともあれ、鍵は手にした。


「迎えに来たぞ」


「ほんとに来てくれるとはな……。正直驚いてるよ」


「モリモリ・ベクトルって名前言いにくくない?」


「まあ言いにくいね。ここの人たちにはモリベって言われてたぜ」


「じゃあ俺もそれで」


「さて、夜火さんや。こっからどうするんだい?」


「まあ、騒ぎに乗じて脱出かな」


「騒ぎ?」


「ああ、今から()()()


 俺一人で脱出するなら幻霧「纏」があるから問題ないが、モリベと一緒となるとこの能力は使えない。というわけで、外で騒ぎを起こすことにした。


「まあ見てろ。【見掛け倒し(サプライズ)()小火(フレア)】」


 これはただの小さな火を起こすだけの()()()()()()()()()だ。大層な魔法陣を展開しながら発動されたこの魔法。しかし、俺の周りには一切火は付いてない。


「何したんだ?」


「よし、走る準備してくれ。後これつけて。俺から離れるなよ、絶対に」


「わ、分かった」











 突如、地面が大きく揺れる。その揺れは何かが爆発したかのような揺れであった。


「行くぞ!」


「え!?了解!」

ネタ晴らしは次のお話で。想定していた通りに一切進んでいない……。でも書くの楽しい。


アークナイツ5周年イベント当選!今年も楽しみですね。


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