これからのこと
翌日、大学の講義を終えた俺は親友である群道秀我と話していた。
「ようやく言葉を覚えたんだっけ?」
「ああ。やっとまともにプレイできるよ。今日中にはエリアボスだっけ?そいつを倒して次の街に行きたいな」
「順調そうで何よりだ」
「秀我はどこまで進んだんだ?」
「結構先まで行ったと思うよ。先に始めてた美夜さんとも合流してどんどん先に進んでる」
秀我は、ゲーム仲間の神無月美夜、糸導冥とパーティを組んで先に進んでいる。3人とは高校からの付き合いで、よく一緒にゲームをする仲だ。
「了解。すぐ追いつくから待ってろよ」
「気長に待ってるよ。あ、突然なんだけどさ、これ興味ない?」
そういって見せられたのは、「PVP大会開催!優勝者には豪華景品!」との案内。
「へー、PVPもあるんだな」
「プレイヤー同士の戦いも盛り上がるからね。それでどう?出てみない?」
「俺みたいな始めたばっかのやつが勝てるような大会でもないだろ」
「そこは問題ないと思うよ。アカウントの情報をもとにグループを、始めたばかりのプレイヤー、やりこんでるプレイヤー、みたいな要領でいくつかに分けて各グループの優勝者に景品を配るらしいからね」
「それならプレイ期間の差で有利不利が生まれる、なんてことはないか」
「そうだね。それで、出てみない?初心者と中級者のグループの優勝景品は豪華報酬に加えて、闘技場最強のプレイヤー『獣魔王』に挑戦できるらしいよ」
「最強のプレイヤーに挑戦ねぇ……。まあ、楽しそうだし参加するよ」
「開催地は今いる街から3つほど先の街だからあんまりのんびりしてると出場できないからね」
「わかってるよ。秀我達も出るのか?」
「僕はいいよ。燈夜に勝てるわけないだろ。冥さんは出るって言ってたかな?美夜さんは……どうだろうね」
「了解。あっちで会うのが楽しみだ」
「僕もだよ。さて、そろそろ帰ろうか」
帰宅して、課題や家事を片付けて早速ログイン。依頼してたものはもうできてるだろうし、今日中にエリアボスを倒して次の街に行こう。
「いらっしゃい!お、来たな。頼まれてた装備、できてるぜ」
「楽しみです」
完成した装備を受け取り、今の装備はこんな感じ。
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右手:初心の剣(ATK:10)
左手:なし
頭:なし
胴:風狼の外套(DEF:15)
手:石猪の手袋(DEF:3)
腰:初心のベルト(DEF:5)
足:岩風猪狼のブーツ(DEF:10)
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
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「どうだ、気に入ったか?」
「はい、いい感じです。ありがとうございました」
「もう行くのか。気をつけてな」
そうして鍛冶屋を後にし、エリアボスのいる場所を目指して街を出る。道中で何回かモンスターと戦闘したが、防具があるだけでだいぶ楽だな。特に何事もなく、エリアボスのところまで着いた。
「ここのエリアボスは何が出るかはランダムらしいけど、何が出てくるかな~」
早速エリアボスとの戦闘フィールドに足を踏み入れる。
「お、出られなくなったな。ボスを倒すか俺が死ぬまで抜けられない、と。相手はどんな奴かな?」
俺を待ち構えていたのは「疾風の大風狼」。ウインドウルフの上位個体なのだろう。ウインドウルフが進化したような見た目をしていているし、ウインドウルフを何体か従えている。
「ウインドウルフ系統だとして、連携してきたら厄介だが……」
「ワオーーーーーーン!」
疾風の大風狼の遠吠えに反応してウインドウルフが散開する。
「やっぱ連携してくる感じか!?」
ウインドウルフの連携の厄介さについてはよく知っている。連携を警戒してウインドウルフの動きを注視するが――――――
「散開して、終わり?」
連携して攻撃を仕掛ける、なんてことはしてこない。ただエリア全域を囲うように散開しただけで、攻撃はしてこない。ウインドウルフたちが散開を終えた時、疾風の大風狼がゆっくりこちらに近づいてくる。
なるほど、そういうことか。
「タイマンがお望みってか?」