三界戦線 其の六
「えーっと?ツバキが海で、みょーが陸……ってことは?空の相手は私がやれってことか……」
迫りくるミサイルを迎撃しながら、滞空する空兵龍SOLを撃破する方法を考えるリオン。
「飛んで接近……。できなくはないが……」
リオンだけが持つ力である「獣魔王」の力。とある条件を満たした獣魔の力をその身に宿すことができるリオンの変化できる形態の中には飛行能力を持つ形態も存在している。しかし、飛行能力を持つプレイヤーは他にも存在している。彼女と同じように飛行して接近するというアイデアを実行したプレイヤーの末路は悲惨なものだった。
「あんだけ集中砲火されたら流石に私も死ぬだろうな」
接近してきたプレイヤーを感知した空兵龍SOLは攻撃対象を接近してきた外敵にのみ絞る。地上を荒らしに荒らしたレーザーとミサイルの向かう先は全て外敵へと変わり、生半可な防御力ではあっという間にハチの巣にされてしまう。
「とりあえず雑に遠距離攻撃で攻めるか」
「空兵龍、落とさない?」
うちのメンバーは強力な遠距離攻撃手段を持ち合わせていない。戦いやすいのは間違いなく陸兵龍なんだろうが、正直空兵龍の攻撃が鬱陶しい。あれをどうにかするだけで戦いやすさは大きく変わるだろう。そして、「落とす」というのはそのまんまだ。あいつの飛行能力を無効化する。
「あの胸で光ってるやつ。あれ壊せたら落とせそうじゃない?」
空兵龍の飛行能力。背についている羽の力で飛んでいるようで、実際は何かを噴射して飛んでいるんじゃないかと踏んでいる。陸兵龍と空兵龍、2体を見ればなんとなくこいつらのモチーフは現代兵器っぽい感じがする。だったら、あの胸部で光ってるあれはエネルギー源か何かで間違いないだろう。さっきから飛んで行っては爆撃されている人達もそれが狙いなんじゃないか?
「壊せたらって言うけど、何か方法はあるのかい?」
「あるにはある、かな?」
遠距離攻撃がない以上接近するしか俺たちが取れる手段はない。だが、接近すれば一斉に攻撃が飛んできてあっという間にゲームオーバーだ。あの攻撃をかいくぐる。それができる可能性は、今の装備なら多分ある。
「この前みんなで倒した極光来鳥グロリアス。あれの装備の能力にMPを任意分消費してプレイヤーを撃ち出すっていうのがあるから、それで接近できないかと」
「それってあのナイフみたいな要領で?」
「そんな感じ。撃ち出されるのは俺だけど、速度は多分あれと同じぐらい出せるし、朧の分身も合わせればなんとかできそうじゃない?」
「面白そうだし、僕はそれでもいいよ。二人は?」
「私もそれで大丈夫だよ」
「いいんじゃない?ただ、それなら――――――」
「よし、やるか」
「作戦通りに頼むよ、夜火」
「了解」
さて、やりますか。グロリアス・ウイングの持つ能力はいくつかある。まず、衝撃、風・雷属性への耐性。これは多分素材が持つ性質によるもの。そして、「グローリー・エンハンス」と「光来撃」、この2つの能力だ。
「グローリー・エンハンス」はシンプルにMP消費で一定時間STRとAGIが上がる。効果時間中はHPが減るデメリットはあるが、シンプルかつ強力なバフ効果。
そして「光来撃」。MPを任意の分消費してプレイヤーを撃ち出す必殺技みたいな能力。撃ち出される方向を決めることはできるが、走って加速するって感じではない。投げられるボールみたいな感じだろうか。まあ、そんな感じでスピードこそあれど、なかなか制御が大変な能力ではあるが、少なからず空兵龍のところまでだったら一瞬で辿りつけるはずだ。ウォーグのところで何度か練習したから間違いない。
というわけでチャージ開始。能力の使用を頭の中で思い描くと同時に全身を魔力が流れ、体の所々から雷が発生し始める。そして、目を惹くのは背中から生えた雷の大きな羽だろう。この羽が俺を撃ち出す役割を担う。視線の先に空兵龍の姿を据え、羽の角度を調整していく。
「それじゃあ、行ってくる。「光来撃」」
光来撃の一言をトリガーに、背中の羽がリングを形成した次の瞬間――――――
リングに大量の雷が流れ込むと同時に俺の体が射出される。
「ん?なんだあれ」
リオンが見たのはすさまじい速度で空兵龍へと飛び立つ謎のシルエット。
わかってはいたが、衝撃がやばい。衝撃耐性が無かったら間違いなく死んでるレベルかもしれない。とはいえ、作戦は順調だ。これまで接近を試みたプレイヤー達とは比べ物にならないほどの速度で接近したことで空兵龍SOLの反応が遅れている。安全性を度外視しているからこその速度ではあるが。気づかれずに接近出来ればそれが一番だったがそうはいかないか。
空兵龍SOLの攻撃の矛先が夜火に向き、一斉にミサイルが迫る。ミサイル同士がぶつかり合い、空中で大爆発を引き起こす。
「危なかった……」
爆風をかき分け、夜火が姿を現す。
空気抵抗のおかげである程度速度が落ちたことで、朧の分身を足場にしてジャンプして何とか避けられた。一瞬油断して、攻撃の手が緩んでくれたおかげで何とか作戦通りになったな。
分身を足場にして跳躍した俺は今、空兵龍SOLの頭上にいる。ここまで散々俺たちプレイヤーを見下してたんだ。
「見下ろされる気分はどうだ?」
後は胸のエネルギー炉みたいなやつを壊して、そのうえであいつを地面に落とす。
「やるぞ、メイ」
ようやく主人公視点ですね。
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