三界戦線 其の五
浄化される猫屋敷まゆ、良いっすね
「リーダー、次で決めます。ちょっと時間がかかる技なんで防御お願いしていいですか?」
「任せて」
陸兵龍SOLの装甲の破壊、そして耐性の弱体化。ダメージを負った陸兵龍SOLに剣神の攻撃を防ぐすべはなく、今――――――
――――――剣神の奥義が 解き放たれようとしていた。
一方その頃、海岸際にて。
「なかなか決着がつきませんね」
先ほどから海兵龍SOLと撃ち合いを続けるプレイヤー達。プレイヤー達の魔力は無尽蔵ではない。少しずつだが、押され始めている。そんな中、海兵龍SOLの攻撃が突然止む。
「攻撃が止んだ……?」
コンを始め、多くのプレイヤーが攻撃の手を止める中、海中の様子を地平を見る眼で把握できているツバキはむしろ攻撃をより激しくしていく。
「コンちゃん、相手は攻撃を止めたのではなく……」
海中にいる海兵龍SOLは攻撃を受けてなお、反撃の素振りを見せない。なぜなら、反撃よりも優先することがあるからだ。それは――――――
「大技の準備をしてます」
一撃でプレイヤーを無力化するべく、全身を力ませる海兵龍SOL。その全身に青白い光のラインが走り出す。海中に浮かぶ光を見て、プレイヤー達も攻撃を再開するがそれでも海兵龍SOLは止まらない。光のラインが全身に広がり、海兵龍SOLの咆哮が戦場に響く。
次の瞬間、開戦時とはくらべものにならないほどの振動。そして――――――
巨大な波がプレイヤー達へ迫る。
「ツバキ……これはまずいんじゃない?」
「ええ。あれに飲み込まれたらひとたまりもありませんね」
「ど、どうする……?」
「まあ、なんとかしましょう。それよりも……」
背後から伝わってくる謎の迫力をツバキは感じ取る。
「みょーくんも大技を出そうとしているみたいですね。この感じは……、奥義ですかね?そうだ――――――」
「どうせなら一緒に斬ってもらいましょうか」
杖を構えたツバキが一言、魔法の名を口にする。
「【氷獄】」
その一言でツバキの眼前に広がる大波、そして大海が瞬く間に凍りつく。
「さて、次は……、【海神の巨腕】」
まだ凍っていない海水が巨大な腕の形を成し、海兵龍SOLの巨体を掴む。突然、全身を掴まれた海兵龍SOLはその腕を振り解こうと全身で抵抗するが、拘束はなかなか解けない。
「思っていたより大変ですね……。ふぅ……」
海神の巨腕の腕力は魔力の消費によって強化することができる。海兵龍SOLに抵抗するべく、最低限の魔力を残し、残りを全て海神の巨腕の強化へと魔力を回す。
魔力を受け取った巨腕は海兵龍SOLをさらに強力な力で掴み、ついに身動きを封じる。
「よし、それじゃあ後は任せましょう。よいしょっと」
そんな気の抜けた掛け声と共に、海神の巨腕は動き出し、海面の氷を砕きながら、地上へと海兵龍SOLを投げ飛ばす。
「え、何あれ……。一緒に斬れと?」
眼前で暴れる陸兵龍SOLを一撃で撃破するべく、あれこれと準備をするみょーの目の前に新たな巨大なモンスターが現れる。どこか陸兵龍に似たそのモンスターは、海中にいた他のSOLで間違いないだろうと結論付ける。
別に斬る対象が1体増えようと問題はない。それだけの技を準備しているのだから。
剣神の持つ「絶対切断」という名の全てを斬る権能。そして、その権能を最大限に生かすために与えられる剣神の奥義。みょーはまだ最初の奥義しか使うことができない。しかし、ここまで時間をかけて重ねてきたバフと「絶対切断」の権能を以てすれば、SOLを真っ二つにするには十分だ。
「我が一太刀は神域に至れど、高みには至らず。我が研鑽、永遠に続けど、今ここに我が神話、その開闢を刻む」
詠唱を以て、剣神の始まりの奥義がSOLに襲い掛かる。
「神斬開闢」
技の名を告げると共に真っすぐ振り下ろされた一太刀が、空中から落下してくる海兵龍SOL、地上でプレイヤーと交戦している陸兵龍SOLの2体の体を2つに斬り分ける。
それでもなお、攻撃を止める様子はない2体のSOLに追い打ちをかけるように魔法による攻撃が降り注ぐ。
「其は天を駆け、闇を払う雷の舞。【ライトニング・ボルテックス】」
それは最初、第一形態のSOLを襲ったツバキの魔法による雷。詠唱によってさらに強力になったそれがSOL達を襲う。
そして、二人のプレイヤーの攻撃に続くように放たれた無数の攻撃が瀕死の2体を襲い――――――
――――――海兵龍SOL、陸兵龍SOLの攻撃が止む。
『陸兵龍SOLが沈黙しました』
『海兵龍SOLが沈黙しました』
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